長期計画は、会社の未来を描き、方向性を示す重要なツールである。
しかし、多くの企業では作成された計画が形骸化し、更新されないまま放置されることが少なくない。その結果、計画が時代の変化に対応できず、組織の成長を阻む要因になる。
本記事では、長期計画に関するよくある失敗例と、それを克服するための適切な態度について考察する。
長期計画の必要性と課題
長期事業構想書は、情勢の変化や社長のビジョンの発展に応じて、常に見直し書き換えることが重要である。
しかし、多くの会社では、一度作られた長期計画が固定化され、更新されないまま放置されている。この結果、計画は時代にそぐわなくなり、本来の役割を果たせなくなるのだ。
棚上げ型
第一の型は、「棚上げ型」である。
「長期計画ができたから、これで我が社の将来は安泰だ」と思い込むわけではないようだが、計画書を作成した時点で満足し、その後は全く目を通さなくなるパターンだ。
この結果、計画書が形だけのものとなり、実行に移されることがなくなる。
会社に長期計画があると聞くと、私は「その計画を見せてください」と頼む。しかし、その際に「どこかに入っているはずだが……」と曖昧な返事をする会社が少なくない。
このような状態では、計画書の存在が無意味であり、むしろない方がましと言える。計画書は活用されて初めて価値を持つものだからだ。
実績による修正型
もう一つの型は、「実績による修正型」である。この型は、「実績が計画と違ってきたので、計画を実績に合わせて変更する」というものである。
これは、先に述べた「計画どおり病」と同じく、計画達成のための具体的な手が全く打たれていないのが特徴だ。そのため、計画が達成されるはずもない。
さらに、実績が計画から離れると、「この計画は非現実的だ。実現可能なものに変更しなければならない」と言い出す。
こうなると、計画とは名ばかりで、実態は成り行き任せの経営である。ただ格好をつけるために計画書を作るだけで、前向きな行動が伴わない。
本来、長期計画の変更とは、実績に引っ張られて後ろ向きに修正するものではない。情勢の変化や新たな可能性に対応して前向きに再構築されるべきものである。
我が社の未来を築くための長期計画は、前向きに修正していくものである。その修正は、たとえば六カ月に一度の頻度で行われるのが適切だろう。
少なくとも一年に一度は、計画を見直し、必要に応じて変更を加えるのが自然である。むしろ、一年間全く変更がない計画というのは、会社が変化に対応できていない証拠であり、問題があると言える。
計画は生きたものであり、会社の成長に伴い常に進化していくべきなのだ。
失敗する長期計画の型
私は短期計画のところで、「計画をやたらに変更してはいけない」と主張した。一方で、ここでは「長期計画は前向きに変更しなければならない」と述べている。この二つが矛盾するように聞こえるかもしれないが、実はそうではない。
短期計画は、現場で具体的な行動を支えるためのものであり、一貫性が重要だ。頻繁に変更すれば、実行力が損なわれ、目標達成が遠のいてしまう。
一方、長期計画は会社の方向性を示す羅針盤であり、情勢の変化や新たなチャンスに対応して柔軟に見直されるべきものだ。つまり、短期計画は安定性を、長期計画は適応性を重視する必要があるのだ。この違いを理解すれば、どちらも正しいことがわかるだろう。
これは、短期計画と長期計画の性格が異なるため、それに対する態度も異なるということだ。短期計画は「今日の行動」の基準となるものであり、計画と実績の差を把握することで初めて適切な行動がとれる。だからこそ、短期計画は頻繁に変更してはならない。
短期計画と長期計画の本質的な違い
一方、長期計画は「我社の未来像」を描くもので、そこには実績という概念は存在しない。
あるのは「将来に関する現在の決定」であり、その決定が適切かどうかを常に検討し、必要であれば変更を加えることが求められる。
これによって、我社の将来の方向性を誤りなく示し続けることができる。
短期計画は変更せず、長期計画は前向きに変更する。この区別を正しく理解し実行することこそが、経営における正しい態度である。
まとめ
長期計画は静的なものではなく、情勢の変化や新たなチャンスに応じて動的に修正されるべきものです。
一方、短期計画は安定性を重視し、頻繁な変更を避ける必要があります。このように、計画の性格に応じた対応を取ることが、組織の持続的な成長につながります。
棚上げ型や実績修正型といった失敗例を避けるためには、定期的な見直しと前向きな変更が欠かせません。長期計画は「将来に関する現在の決定」であり、それを適切に更新し続けることが、会社の未来を確かなものにする鍵となります。
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