資金繰りの計画は、利益計画と資金運用計画を統合して構築されるものだ。このため、利益計画や資金運用計画に変更がない限り、資金繰り計画が変わらないのは当然の流れといえる。
計画通りに進まないからといって、むやみに資金繰り計画を変更してしまうのは問題だ。それでは資金繰り計画ではなく、ただの資金繰り予測になってしまう。結果として、経営計画から乖離し、資金繰り予測だけが独走する形になる。それでは、本来の意味での資金繰りとは到底呼べない。
利益計画と実績の差異に応じて、資金繰りがどのように変化するのかを正確に把握し、適切な対応を取ることが求められる。それこそが、本来あるべき姿だ。
利益計画と実績の差異が資金繰り計画に与える影響は、大きく三つに分類される。それは、収益(加工高または粗利益)、現金支出、そして不足金の充当だ。まず収益について考える。売上高が変動すれば、それに伴って収益も変化する。その変動額は、「売上高の差異 × 加工高(粗利益)比率」で求められる。
加工高比率が仮に40%と設定されている場合、売上高が100万円減少すれば、加工高は40万円減少する。この減少分の40万円が、その翌月以降の資金不足として現れることになる。
この影響は翌月から3~4カ月にわたり徐々に現れるものの、資金繰り計画を考える際には、その全額が翌月に反映されると想定しておけば問題ない。
その金額は、翌月の不足金充当欄にある短期借入金や割引手形の計画数値の枠内に追加記載すればよい。この差異の計算と、それに必要な基礎データを確保するために、資金繰り計画表の最上段に売上高を括弧付きで記入しておくのがポイントだ。
次に、現金支出の差異についてだ。この差異は、不足金充当と組み合わされて翌月繰越の差異として表れる。そのため、差異自体を特別に意識しなくても、翌月繰越の数値を確認すれば問題はない。実際には、不足金の充当によってその差異は吸収される仕組みとなっている。ここで重要なのは、二つ目の要素である不足金充当だ。
計画外の借入が発生した場合、その返済方法は借入時点で明確になるはずだ。そのため、支出欄の借入金返済金額の該当月枠に、返済計画として追加記入すればよい。また、その影響を反映させるために、過不足額や不足金充当欄の差異金額も追加記入する。この際、当初計画の数字を消さず、その上に新たな数値を並べて書き加えるのがポイントだ。こうすることで、どの部分がどのように変化し、どれだけ異なっているのかを視覚的に明確に把握できるようになる。
上述のような、わずかな追加記入で資金繰りの差異を把握することができる。この作業にかかる時間は、せいぜい5分から10分程度だ。それにもかかわらず、毎月資金繰り予測を丸ごと書き換える作業に何時間も費やし、さらに誤りを生むリスクを抱えるのは、非常に非効率で無駄な行為といえる。
資金繰り計画で資金繰りの差異を正確に把握できるのは、資金繰り計画が利益計画と資金運用計画の変形として成り立っているからだ。そのため、計画と実績が大きく乖離した場合でも、その影響を的確に読み取ることが可能となる。これが、資金繰り計画の本質的な強みである。
そもそも月次資金繰り計画の目的は、数か月先の資金状況を把握し、必要な対策を事前に講じることにある。予測と実績を完全に一致させることが目的ではない。この点を再確認することが重要だ。計画の本質は未来の資金管理にあり、過去の数字を帳尻合わせすることではないのだ。
当月資金繰計画は、資金収支を日単位で管理し、月次の流動性を確保するために非常に有効です。以下に、当月資金繰計画の具体的な作成と運用方法について説明します。
1. 当月資金繰計画の構造
- 表の構成:
- 日付欄を設け、1日、5日、10日などの区切りで表示(会社の資金収支サイクルに合わせる)。
- 各日付ごとに、収入、支出、繰越残高の項目を設定。
- 六区分法で収支の項目を表示し、計画欄と実績欄を上下に分ける。
- 科目の一致:月次試算表の収支項目と一致させると、月末の数字が月次資金繰計画表にそのまま使える。
2. 作成の手順
- 事前準備:
- 前月中に、支出項目はすべて埋め、売掛金の回収日や銀行振込日などの収入項目を予測して記入。
- 初日の朝に、当座預金の繰越残高を記入。
- 日ごとの記入:
- その日の収支をもとに実績を記入し、残高を更新。
- 機械的に計算しながら不足が出る日をチェック。
3. 管理と運用
- 経理担当者の役割:
- 計画書の実績部分を日々更新し、「当月支手決済一覧表」を付けて社長に報告。
- 社長の確認:
- 経理担当者と一緒に、日次の不足資金の補充方法を確認し、不足金充当の方法や調整策を最終決定。
- 三〜四カ月先の資金繰りも月次資金繰計画で事前に把握しているため、確認作業は駄目押し程度となる。
4. メリット
このプロセスにより、社長は日々の資金繰りに過度に時間を費やすことなく、経理担当者によって事前に組み立てられた計画でスムーズな資金管理を行うことが可能になります。
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