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資金繰りをつける

資金繰りにおける最大の課題は、支払決済の管理に尽きる。このため、いつ、どの銀行で、いくらの支払いが必要かを正確に把握することが重要だ。一見すると当たり前で簡単に思えるこの作業が、意外にも多くの場合で適切に行われていないのが現実だ。

特に、市販されている手形帳を使うと、この作業が一層難しくなる。例えば、最も普及している「コクヨ」の手形帳を例に挙げてみよう。この手形帳は、手形を発行した順に記録していく形式になっている。決済月の記入欄は見開きの右側にあり、12カ月ごとの区分が設けられていて、そこに決済月を記入する仕様だ。

ところで、手形というものは、通常サイト(支払期日)がバラバラに設定されて発行されるのが一般的だ。そのため、サイト別や銀行別に整理して管理する必要がある場合、この手形帳だけでは対応できず、結局別途専用の表を作り直す必要が生じる。

さらに、ページをあちこちめくりながら必要な情報を抜き出し、それを一つ一つ確認するという手間のかかる、煩雑で非効率な作業が求められる。この帳簿を設計した人物は、手形というものの実務をまったく理解していないと言わざるを得ない。

この帳簿は、手形用紙の控え(ヘタ)を書き写しただけのものに過ぎない。つまり、手形用紙の控えと手形帳は内容的に完全に一致しており、わざわざ同じものを二度手間で作成する行為は、完全に無駄と言っていいだろう。

手形管理において重要なのは振出日(発行日)ではなく、決済日だ。一度振り出された手形において、振出日自体はほとんど意味を持たない。唯一注目すべきなのは、実際に支払いが行われる決済日だけなのである。

だからこそ、手形帳は「決済日」を基準にして作成されるべきだ。その点で、「第51表」のような形式が最も実用的である。見れば一目瞭然だろうが、決済日が月に二回ある場合、それぞれの決済日ごとに手形をまとめて記録するのが基本だ。また、必ず余白を設けておき、後から追加の記入ができる柔軟性を確保することが重要である。

受取手形帳についても同様に、期日(支払期日)別に整理された「第52表」の形式が適している。この形式なら、支払期日ごとに手形をまとめて管理できるため、実務上の利便性が格段に向上する。期日別に整理されていれば、支払の流れを把握しやすくなり、効率的な資金管理が可能になる。

次に重要なのが「資金繰計画表綴」だ。資金繰りに関連するすべての必要情報を、一冊の綴りとしてまとめておくと非常に便利だ。この形式により、収支や決済予定、入金予測などを一元管理でき、全体の資金状況を瞬時に把握することが可能になる。

「第53表」がその基本的なフォーマット(ヒナ型)となる。この表を参考にしながら、自社の状況やニーズに合わせてカスタマイズしたものを作成するのが良い。ただし、特殊なケースを除けば、このヒナ型のままでも十分に実用的であり、資金繰りの管理に対応できるはずだ。

この綴りは、B4サイズを横向きで使用する形式が適している。表紙は、自色の厚手の表紙を採用すれば十分だろう。構造としては、上部を閉じた状態で、下部が見開きになるデザインが実用的だ。この形式なら、必要な情報をすぐに確認できる上、整理もしやすい。

見開きにすることで、必要な情報をほぼ漏れなく一覧形式で確認できるようになる。この形式は、迅速な意思決定や効率的な資金管理に非常に役立つ。さて、ここからが本題で、具体的にどのようにして資金繰りを確保するか、その方法について検討する段階に入る。

結論から言えば、「上手な資金繰りの方法」という万能の手段は存在しない。不足した資金を補うには、大きく分けて三つの選択肢しかない。割引手形を利用するか、借入金に頼るか、あるいは保有資産を処分するか、このいずれかだ。どの方法を選ぶかは状況次第であり、それぞれに利点とリスクが伴う。

すべては、事前の計画と徹底した管理にかかっている。不足する可能性をあらかじめ把握し、その段階で速やかに金融機関に相談し、必要な融資を確保する以外に道はない。事前対応こそが資金繰りの鍵であり、後手に回ると状況は一気に悪化する。

そのためには、経営計画の中で資金運用計画を明確に策定し、それを基盤とした運用管理を徹底する必要がある。資金の流れを計画的にコントロールし、予測と実績を照らし合わせながら、的確なタイミングで対応策を講じることが不可欠だ。

一方で、金融機関への対応としては、まずメインバンクを必ず選定することが重要だ。そのうえで、経営計画書(資金運用計画を含む)と資金繰計画書を事前に提出しておく必要がある。さらに、毎月の実績報告を欠かさず行い、金融機関との信頼関係を築くことが肝心だ。また、担当者との円滑な人間関係を維持することが、いざというときの柔軟な対応を引き出すカギとなる。

Y印刷は、従業員が20名にも満たない小規模な企業だが、専務(社長の奥様)はこう語る。「資金繰計画書を銀行に提出するようになってから、銀行の対応が一変し、本当に親身になってサポートしてくれるようになりました。そのおかげで、資金繰りに頭を悩ませることがなくなり、仕事に全力で打ち込めるようになりました」と。この実例は、計画的な資金管理と金融機関との関係構築が、いかに企業経営において効果的であるかを物語っている。

K工業もまた、従業員が20名にも満たない小規模企業だが、私のサポートのもとで経営計画書を作成していた。ある日、某都銀の経営指導員が来社し、その計画書を目にして「ぜひ貸してほしい」と頼まれた。計画書を貸し出したところ、返却の際に指導員はこう語った。「こんなに立派な経営計画書を持つ小さな会社を初めて見ました。ぜひ三千万円を無担保で融資させてください」。これには社長も驚き、この出来事を私に興奮気味に話してくれた。計画書の質が、信用力をいかに高めるかを実感した瞬間だった。

K製作所は従業員が約60名の企業だが、季節変動が大きいため、閑散期に製品を「つくりだめ」する必要がある。このため、季節単名の資金を確保することが課題だった。しかし、メインバンクに経営計画書を提出するようになってから、ほとんど条件をつけられることなく資金を貸してもらえるようになったという。このように、計画書の提出は、金融機関からの信頼を高め、資金調達を円滑にする効果をもたらしている。

特に、経営計画書に含まれる利益計画と資金運用計画が、銀行の評価に大きな影響を与えていることは、その対応ぶりからも明らかだ。それだけではなく、この経営計画書が評価され、メインバンクの経営指導室から「指導マニュアルに組み込みたい」との申し入れを受けたという。この出来事は、計画書の精度と実用性が高く評価された証拠であり、他の中小企業にとっても有益な指針となる。

資金繰りに「上手なやり方」や小手先のテクニックは通用しない。本質的に必要なのは、社長自身の正しい経営姿勢だ。その姿勢に基づいて、健全な経営を行い、利益をしっかり生み出し、それを計画的かつ適切に運用することで、資金繰りは自然と整っていくものだ。資金繰りの安定は、日々の正しい経営の積み重ねによってのみ実現される。

資金繰りを成功させるためには、事前の計画と管理が非常に重要です。特に、手形決済の準備と金融機関との関係を円滑に保つことが、資金不足を回避するための基本的なポイントです。

資金繰りの基本

資金繰りの最大の課題は、毎月の支手決済を確実に行うことです。手形の発行順やサイト(支払期限)はバラバラになるため、決済日別に記録する手形帳を用意し、すぐに支払い予定を確認できるようにしておくと効率的です。

資金繰計画の実施

資金不足が予測される場合、事前に金融機関に対策を相談し、割引手形や借入金を検討します。以下のような手順を踏むことで、資金繰りが円滑になります:

  1. 資金運用計画と資金繰計画を用意する
    資金運用計画を経営計画の一部として策定し、これに基づいた月次・日次の資金繰計画を作成します。
  2. メーン・バンクとの連携を強化する
    メーン・バンクを定め、経営計画書を提出することで、金融機関に対して会社の状況を常に把握してもらいます。月次の報告や定期的な面談を通じて関係を構築し、必要なときに支援が得られるよう備えましょう。
  3. 資金繰計画表を定期的に更新・確認する
    実績と計画を定期的に確認し、必要な箇所を修正することで、資金の流れをより正確に把握します。計画外の借入れや予期しない資金不足には速やかに対応し、計画を調整します。

まとめと重要ポイント

資金繰りを確保するための本質的なポイントは以下の通りです:

  • 資金の知識と運用の正確さ:社長を含めた経営陣が資金運用についての知識を持ち、正確に管理を行うことが求められます。
  • 固定資金と運転資金のバランス:固定資金不足が生じないようにし、運転資金の適正な目標を設定し、社員全体で効率化に努めます。
  • 資金運用と資金繰りの連携:資金運用計画に基づいた日標バランス・シートを毎月確認し、資金繰りを健全に保ちます。

正しい資金管理と健全な経営が、資金繰りを円滑に進める最善の方法であることを認識し、適切な準備と管理を行いましょう。

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