「内部管理の手法を経営学と思いこんではならない」
この言葉には、経営に取り組む者が陥りがちな本質的な問題が隠されている。特に、勉強熱心で真面目な人ほど、この落とし穴に引き込まれやすい。
それは、「管理手法の最適化=経営の成功」という誤解である。
過去の合理化・近代化の思想を全部捨てる。そんなものは、事業経営に害ではあっても益になることは決してない。
益になることは会社の外にしかない。
過剰な内部管理は、収益の悪化にダイレクトに結びついてしまう。
企業の経営とは、社内の人々の活動を管理することではなくて、お客様の要求を見つけだし、これを満たしてゆくことである。
会社経営の基本は、利益をあげて存続することである。つぶれてしまえば、何もかも終りである。
だから、安定的に利益をあげ続けることができるような「事業構造」を考えなければならない。
それを、「経営計画」という道具を使って探しだし、実現してゆく。経営計画の作り方については、別の項で記載している。
管理を捨て、経営を考えよ
経営において重要なのは、「いかに管理を効率化するか」ではなく、「いかに価値を創造するか」。
内部管理を経営の中心に据えてしまうと、企業の活力が削がれ、最終的には市場からの信頼も失われてしまう。
経営学は「生きた学問」であり、挑戦を生み出すことこそがその本質だ。過去の成功体験や合理化の思想は捨て去り、未来に向き合う経営を実現すべきである。
内部管理の例
内部管理の例には、組織の内部での業務効率向上や資源の管理に関わるものが多くある。以下、具体的な例をいくつか挙げる。内部管理は、不必要ということではなく、会社に必要なものである。ただ過剰な管理を行い、内部管理ばかりやっていても一生収益が上がらないということである。
1. 人員管理
- 勤務時間の管理:従業員の勤務時間や残業時間の管理。タイムシートや出勤・退勤記録の管理を通じて、労働時間を最適化する。
- 評価・報酬制度:人事評価や報酬制度の最適化によって、社員のパフォーマンス管理を強化する。
特に人に関することに時間が取られやすい。
- どのように教育したらいいか
- なぜできないか
- 仕組みが悪いのか
- 伝え方が悪いのか
- 採用が間違っていたのか等
負のスパイラルに陥ってしまう。
このスパイラルに入ってしまうと、内部管理は益を生み出さないことを理解していない場合、永遠に対応してしまうことになるので、要注意。
2. 在庫管理
- 原材料や製品在庫の適正化:必要な材料や製品の数量を適正に保つための管理。在庫の持ちすぎを防ぐための発注・管理方法の整備。
- 在庫回転率の向上:在庫が売れる速度を改善し、在庫コストを最小化するための管理。
3. 品質管理
- 品質チェックの工程管理:製造過程での不良品を減らすために、製品やサービスの品質チェックを実施。基準に基づいた検査やテストの実施。
- ISOや規格の維持管理:ISO9001やその他の業界標準を維持するための定期的な内部監査と記録管理。
4. コスト管理
- 経費の管理:出張費、交通費、消耗品費などの経費を削減するための支出管理。ルールや予算の枠組みの設定。
- コスト削減活動:エネルギーコストや資材コストなどを削減するための内部取り組み。たとえば、電気使用量の削減策や、廃材の再利用。
5. リスク管理
- コンプライアンス管理:法律や規制に違反しないように、内部ルールの整備や従業員への教育を実施する。
- 情報セキュリティの管理:データの保護とリスク軽減のためのアクセス制御や、セキュリティポリシーの整備と監視。
6. 業務プロセス管理
- ワークフローの最適化:作業フローやプロセスの標準化と簡略化を図り、業務効率を向上させる。
- ERPシステムの導入・運用:企業資源計画(ERP)システムを活用して、業務プロセスの一元管理と効率化を行う。
7. 設備・施設管理
- 設備のメンテナンス管理:工場やオフィスの機器や設備を適切に保守し、稼働率を上げて故障を未然に防ぐ。
- 清掃や整理整頓(5S活動):職場環境を整え、作業効率や安全性を向上させるための活動。
8. 財務管理
- 予算管理:年度ごとの予算の計画とモニタリング。各部門の支出を管理し、目標に沿った資金配分を行う。
- キャッシュフロー管理:現金の流れを管理し、資金の不足や無駄遣いを防ぐ。
これらの活動は、社内の効率や安定を図るうえで重要ですが、過剰になると「顧客価値の創出」から離れ、経営を硬直化させるリスクがあるとされています。
まとめ
経営においては、内部管理の効率化が成功の鍵になるという誤解に陥りがちだが、本当に重要なのは「価値を創造すること」にある。
企業の使命は、社内の管理に時間を費やすことではなく、顧客のニーズを発見し、それに応えること。内部管理は企業の基盤を支える要素ではあるが、あくまで経営の中心は顧客に向けられるべきだ。
内部管理は、人員や在庫、品質、コスト、リスク、業務プロセス、設備、財務といった多岐にわたる。これらの管理が過剰になれば、企業の活力が奪われるリスクも生まれる。
顧客、社会、未来に向き合う経営が必要であり、そのためには内部管理を効率化するだけでなく、積極的に新たな価値を創り出すことが不可欠だ。
教訓
- 「内部管理の手法を経営学と思いこんではならない」
- 陥りがちな罠は、「管理手法の最適化=経営の成功」という誤解である。
- 過去の合理化・近代化の思想を全部捨てる。事業経営に害ではあっても益になることは決してない。
- 益になることは会社の外にしかない。
- 過剰な内部管理は、収益の悪化にダイレクトに結びついてしまう。
- 企業の経営とは、社内の人々の活動を管理することではなくて、お客様の要求を見つけだし、これを満たしてゆくことである。
- 経営において重要なのは、「いかに管理を効率化するか」ではなく、「いかに価値を創造するか」。
- 内部管理を経営の中心に据えてしまうと、企業の活力が削がれ、最終的には市場からの信頼も失われてしまう。
- 経営学は「生きた学問」であり、挑戦を生み出すことこそがその本質だ。
- 内部管理は益を生み出さないことを理解していない場合、永遠に対応してしまうことになる。そして倒産する。
※経営の近代化、すなわち内部管理に異常なほど注力してしまったらそうなる。経営熱心な経営者が陥る罠。
※特にコンサルタントと呼ばれる人間のアドバイスには注意が必要。
※権限移譲とかない。
※コンピューターは経費を食うだけ。お金の無駄。
※内部管理は検討はずれの活動。会社経営の基本は利益を上げて存続すること。潰れたら全ておしまい。そのために安定的に利益を上げ続ける「事業構造」を考えて運営しなければならない。
※3点セットを作る。「売上年計」と、「得意先別売上高ABC分析」と「商品別売上高ABC分析」
※年計が徐々に下がっていたり、釘おれ状態になっている時は、何かが起きている時。
※特に釘折れ現象は普通の状態ではありえない。何かが起きたか、方針を変更した時に起こる。
※材料費率を売価の30%に抑えるべきという見当違いの施策を行なった。
※材料費を下げると商品の品質が下がる。
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