企業理念を1つずつ形にし、実績にして会社をどんどん大きく成長させていく。これ が経営者が見る夢でしょう。 この夢を自分1人のものにしないで、社員や取引先など、まわりの人とも共有してい く。
こういう経営者なら、成功は間違いないと太鼓判を押したくなります。
起業後2年ほどのある経営者から相談を受け、1度、会社を見てみたいと訪問したことがあります。 社員が忙しそうに仕事をしている一画をパーティションで区切ったところが社長のスペース。
その後ろに大きな日本地図が貼ってあり、地図上にはびっしり赤のピンが留めてあります。
よく見ると、ちらほら黄色いピンも交じっています。
アパレルショップの社長はこのショツプを全国展開したいという並々ならぬ熱い思い をもって起業したそうです。
そして、起業の日に、将来、出店したいところすべてに赤 ピンを打った例の地図を掲げたのです。黄色いピンは、実際に出店したところ。
もちろん、現状はまだ地図は赤のほうがずっと多い状態です。
この会社では赤いピン から黄色いピンに変えるときは、全社員が立ち会い、拍手のなかで社長がおもむろにピ ンを打ち換えます。
こうして、黄色いピンが1本、2本と増えていく……。 その地図を見るたびに、赤いピンから黄色いピンに変わる日の全社員の拍手喝采が耳 によみがえってくるそうです。
これほど社員を燃え上がらせることはないでしょう。
この話を聞いただけで、私はこの会社は「近い将来、大きく成長するだろう」と確信 しました。社長の夢を社員も共有・共感しているからです。
赤いピンが1本、また1本と黄色いピンに変わり、黄色いピンが少しずつ増えていく。
それを見て、社員のやる気はいやがうえにも高まります。
この経営者のすごいところは、まだ1店舗しかないときに、日本地図に赤いピンを刺 し、それを堂々と社内に掲げたことです。
人は不思議なもので、起業したばかり、まだ1店舗しかないのに、赤いピンがぎつしり刺さった日本地図を見ると、事情をわかっていても、この企業が全国制覇することはすでに実現したも同じ、その可能性はかぎりなく高いと感じてしまうのです。
1年後はここまで成長させたい、3年後は、5年後は、と夢を広げていく。それが経営計画です。もちろん、根拠のない夢ではなく、着実に歩を進めていき、確実に利益を生んでいく、実体のある夢でなければいけません。
経営者はその夢を機会あるごとに、社員や取引先、銀行などにどんどん語るのです。
語ることによって夢は現実味を帯びていき、何よりも経営者の熱い思いがまわりに浸透していきます。
こうして夢は、経営者1人のものから、皆のものになっていくのです。
皆で同じ思いをもっている。
その経営者を信じ、同じ夢を追いかけていることほど、 人を結東させることはありません。
どんなに優秀でも、経営者1人で仕事はできません。社員だけでなく、外注スタッフなどに助けられ、支えられて仕事をしているはずです。こ
うした人々の心までがっちり と結束させていく。
そのためには、皆で一緒に見る夢はどうしても必要なものなのです。 ある経営本に、なるほど― と深くうなずけることが書いてありました。
「儲」という字は「信じる者」を意味しているというのです。経営者の掲げるビジョンを信じる者が集まっている会社は、自然に儲かっていくとも書いてあります。
儲かる会社=長く続く会社にできるかどうかの分かれ目は、 「経営者の理念をいかに伝え、信じさせるか」。 この1点にあるといってよいでしよう。
▼経営者の夢は見える化などでわかりやすく伝え、皆で共有する。
コメント