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会社をつぶさずに、安定した経営ができる社長は 地域密着型の経営の価値を よく知ってじる。

私が顧間をしている、あるホテル経営者の話をご紹介しましょう。

この経営者が運営 する「ホテル吉野」(仮名)は中部地方の中核都市にあるホテルで、この地では歴史と 伝統を誇る代表的なホテルです。

外国人観光客の急増を追い風に現在、ホテルはかなり不足ぎみ。ホテル市場はかつて ない好況ぶりです。実際、駅前には全国展開のホテルが何軒も立ち並び、客室稼働率は どこも80 %以上と絶好調。通常、ホテルは60 %埋まっていれば経営は安泰です。

しかし、どんなに業界に勢いがあっても、業界内部では勝ち組と負け組に分かれてい くものです。

「ホテル吉野」も私のところに相談にきたときは負け組に組み入れられそうな位置づけにあり、「知名度がある全国展開のホテルの攻勢が厳しくて、このままで は先行きが不安でたまりません」といいます。

そこで私は、前にお話しした「中小企業が大手に勝てる唯一の作戦はナンバー1にな ることだ」ということを伝え、「ホテル吉野」が大手には絶対負けないものは何なのか、 を尋ねました。

すると、言下に、「そりゃあ、地域に深く根を下ろしていることですわ。祖父母も両 親も結婚式は『ホテル吉野』だった、だから私も……とわざわざ帰郷して、うちで披露 宴をやりたいという若い世代もいるくらいです」という答えが返ってきました。

それを聞いて、私は「地縁。血縁という言葉もあるくらいで、それは御社の大きな強 みだと思います。それをもつと強化していきましょう」と助言しました。

それからの、この経営者の努力は私の想像をはるかに超えるものでした。

ホテルがカ バーするエリアにある家々について、家族構成やそれぞれの誕生日、年齢などを調べ、 それぞれの家族の生涯イベントをデータ化したのです。

この地域では、子どもの誕生会もホテルの小。中宴会場を借りて、親戚一同から友だ ちまで大勢招いて、大々的に祝う習慣が残っています。七五三や幼稚園入園、小学校新 入学などの機会にはいっそう盛大なパーティを開きます。

ほかにも成人式、婚約パー ティや結婚披露パーテイ、さらには還暦、古稀などのシニアのお祝いごとなど、人の一 生には数々のイベントがあります。

例のデータをフル活用した結果、「ホテル吉野」は地域の家々のイベントを一手に引 き受けるようになり、いまでは地域にとってなくてはならないホテルになっています。

ホテルの経営者もこの地域の出身なので、顧客の多くは幼なじみだったり小。中学校 の同窓生だったりします。ですから、家族の情報はふだんの会話から自然に耳に入って きます。

それを、この社長はまめにメモをとるのです。

出先で「○○さんとこにお孫さんが生 まれてなあ」などという話を聞くと、その場でちょこちょことメモし、会社に帰るとす ぐに顧客データに入力します。

こうしていつも最新のデータを把握しているので、街で 偶然に出会ったときなどにも、すぐに、「お孫さんの誕生、おめでとう。そうか、ついにおじいちやんか―」などと話しかけることができるのです。

「男の子?。女の子?。なんていう名前をつけたの?」。こうして聞いた名前などもす ぐにデータアップされます。

そして、次に出会ったときには、 「どう、おじいちゃんの心境は?・ツバサくん、かわいくてたまらんでしょう?」。

ちょっとした知り合い程度なのに初孫の名前まで覚えていてくれている……。こうし たきめ細かなアプローチがうれしくない人はいません。

「そうそう、再来月にはもうお誕生日なのよ。初誕生日祝いの集まりをしようと思うん だけど相談にのってくれる? 近くホテルに行くわ」 という具合に話は進み、いまや、地域のファミリーイベントを扱うシェアは60 〜70% とダントツー位。

ホテル事業は宿泊機能とイベント機能で成り立っていて、利益効率でいえば、イベン ト機能のほうがずっと高いのです。したがって、「ホテル吉野」の経営は正直なところ、 笑いが止まらないといいたいくらい、絶好調です。

▼地域密着型の経営で、大手を寄せつけない。

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