私のところに相談にこられる経営者は、ほとんどが中小企業の経営者です。そして、 相談にこられる方のほぼすべてが、 「とにかく、うちぐらいの規模の会社には優秀な人材がこないのです。
ですから、いつ までたっても私が何もかもやらなければならない……。なかなか次のステツプには踏み 出せず、それが大きな悩みですね」と人材不足を嘆きます。
新規事業へ転進することなどをおすすめすると、人材不足から事業を育てられないと 弁解したり、愚痴るばかり。
はっきりいいましょう。
中小企業には社長以上に優秀な人は入ってきません。自分が就活をする場合を想像して考えてみましょう。
子どものころから優秀だと折り 紙つきで、有名校を卒業したり、留学経験があったりすれば、安定性があり、将来性も 豊かに広がる大組織、 一流企業を選ぶのではないでしょうか。
中小企業に優秀な人材がこないのはいわば宿命。当然のことだと受け止めなければい けません。
それでは、中小企業は永久に人材不足に悩まなければいけないのか、というとそんな ことはありません。人を育てていく、という道があるのです。
もちろん、大組織も人材育成にはかなり力を入れています。しかし、組織が大きいために、若いころから現場に出て、修羅場を踏む機会はそれほどありません。
その結果、 大企業で育てられた人材は、優等生でソツがなく、ケチのつけようがない人材であるこ とには間違いありませんが、ここ一番というときに頼りになる底力はない。
こうした人が多いのです。
一方、中小企業に必要なのは、優等生というより、実際の仕事の現場で力を発揮でき る人材です。
人材不足を嘆いてばかりいないで、中小企業には中小企業なりに必要な人材があるこ とを意識し、そうした人材育成をすればいいのです。
具体的には、最初からどんどん現 場に出して、現場で力を発揮できる人材を積極的に育てていきましょう。人を育てる経営者とそうでない経営者の決定的な違いは、社員の失敗を恐れるか、恐 れないか、です。多くの経営者は社員の失敗を恐れます。
そして失敗しないように、とマニュアルを作成して仕事を管理しようとし、自由な裁量を与えようとしません。その結果、社員の個 性はなくなり、自発的な努力もしようとしなくなります。
少数に過ぎませんが、社員にどんどん自由裁量権を与え、のびのびと自分のアイデア や力を発揮させようとする経営者もいます。
中小企業の社員のなかには、偏差値や学歴だけで評価されてきた学校秀才にはない、 ガッツと行動力にあふれた社員もいます。
ただし、こういう社員は時々、やる気にはやりすぎ、大コケすることがあります。できた社長は、こんなとき、内心ではむしろ喜んでいたりします。
人は失敗しなけれ ば成長がないことを知っているからです。
若いころ、尊敬するある経営者から、「人は失敗しないと成長はない。だから、お前 も若い間にいっぱい失敗しておくように」といわれたことがあります。
彼にはさらに、 「社員にも失敗させろ。それが地力をつける近道だ。社員が失敗したときに出ていって 対応するのが社長の仕事やろ」といわれたことがいまも頭に残っています。
会社がつぶれるような失敗でないかぎり、社員の失敗をむしろ喜んで受け入れる。そ のくらいの度量がある社長の下でこそ、社員は大きく成長します。
その結果が会社の大きな成長につながっていくのです。
▼ 「失敗は成功のもと」は至言。社員にはどんどん失敗させる。
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