経営と学校の勉強との最大の違いは「これが正解!」という、公式的な答えがあるわ けではないことです。正解のない問題に対し、試行錯誤しながら、答えを探っていく。
だから経営はむずかしいともいえるし、面白いともいえるのではないでしようか。しかも、課題に対する答えは1人ひとり、そして、1回1回違います。
経営に求められる答えは生きている答え。いまは正解であっても、それがずっと正解 であり続けるわけではなく、正解は刻一刻と変容します。経営者の仕事は休みなしでエンドレス。これでいいと安心し、考えることをやめたと たんに衰退が始まってしまうといっても過言ではありません。
プロの将棋では100手先まで読んで、次の一手を決める。そのくらい洞察と決断が ものをいう世界だと聞きます。
経営者にも、これと同じくらい考えて考えて考え抜き、 そのうえで、次の展開を決めるという問題解決能力が求められているのです。
お先真っ暗だと思えるような状況で、0・1%の可能性を見つけなければいけないの です。
誰でもちょっと考えれば思いつくようなありきたりの解決策や常識的な解決策で は、立ちはだかる高い壁を乗り越えることはできません。
さらにそのO。1%の可能性に関して精査を加えていきます。たゆまざる前進のため の努力。
そこで求められるのは、あらゆるリスクを想定して、1つひとつ排除していく きめの細かい考え方です。しかし、それを成し遂げたときには―フルーオーシャンが待っています。
競争の激しい既存市場は、血で血を洗うようなシビアさからレツドオーシヤンといわ れるのと反対に、誰も見つけられなかった未開拓市場は、競合相手はなく、しかも前途 は洋々と広がっていることから名付けられた呼称です。
本当の勝者は、問題をあらゆる角度から見、考え、0。
1%の可能性を見出した後もいくつものパターンを想定して精査に精査を重ねたすえにブルーオーシャンを見出し、 そこをぐいぐい進んでいく者をいうのです。
京都の呉服の老舗が業界の低迷傾向のなかでも安閑と経営してきて、いよいよ追い込 まれているという話をしました。それでも、老舗は蓄積資産があるので、なんとか今日 まで生きながらえてきています。
しかし、そうした資産をもたない呉服屋はもう後があ りません。
しかも長年、たとえば親の代から呉服屋をやっていたところなどは、他の業 界の情報もノウハウももっていません。ある相談者もまさにそういう方でした。
東日本地方ではちょっと名の知られた呉服屋 だったのですが、市場が最盛期の15 %近くまで縮小してしまったのですから、手も足も 出ません。
誕生時の祝い着に始まり、七五三、成人式、結婚……と女性の一生の折々を 和服で祝うという慣習もしだいになくなつてきてしまい、着物を着る機会や場がないの に、どうしたら着物を拡販できるのか。どんなに知恵を絞っても、活路を見出すヒントさえ得られません。
そこで、私は、「とにかく着物を着ない理由を徹底的に調査して今後の経営の柱を見 つけましよう」とアドバイスしました。
小まめにヒアリングして情報を集めた結果、いくつかの理由があがってきましたが、 たいていは想定範囲。なかで1つだけ、店側では気がつかなかった理由がありました。
「着物はどう手入れをしたらいいのかわからない」「手入れの仕方はだいたい知ってい るけれど面倒くさい……」。これが、その理由です。
そこで、その呉服屋は「着物のメンテナンスに特化した事業」の新しい仕組みを考案 し、業界の革命児になろうと必死にもがき苦しみながら、事業改革を進めて成長を続け ています。
絶体絶命、いくら考えても活路がない、というのは思い込みに過ぎなかったのです。発想を柔軟に広げていけば生き残る道は必ず見つかるということを教えてくれる、最 高の例だといえるでしよう。
▼360度全方位から考えてみたか? 活路のカギは意外なところに隠れている。
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