会社をつぶさずに、安定した経営ができる社長は クレームを経営資源だと認識している。
経営者は、クレームはお客からの大事な情報の1つであるということを見逃してはな りません。
その商品やサービスにまったく関心がない場合は、わざわざクレームなど寄せてきま せんし、クレーム内容をよく理解すれば、そこに商品やサービスをどう改善していけば いいかのヒントが潜んでいることに気づくはずです。
成功する経営者はクレームのなかに宝が隠れていることを知っていて、その宝を積極 的に生かしていこうとしています。
私のクライアントの1人に、長くコメの卸し業を営んでいる方がいます。
山形地方一帯でビジネス網を展開し、大きなビジネスをしていたのですが、近年、少しずつビジネスが縮小していて悩んでいました。
これは必ずしも、このクライアントの努力不足ではありません。日本人の主食はコメ だと思い込んでいるのは旧世代。
2011年に「家計調査」史上、初めて1世帯あたり のパンの支出がコメを逆転したのです。日本人の間にこれほどコメ離れが進んでいるな んて―。このクライアントにとっても大きな衝撃でした。
クライアントなりに、なぜコメよリパンのほうがいいのかを調査したところ、最大の 理由は、ご飯は面倒くさい、ということに集約されるのだとわかってきました。
ご飯だ とおかずやみそ汁をつくらなければなりませんが、パンなら、レトルトのシチューなど レンジでチンすればいいだけのおかずと合う。
朝食ならパンとバター、ジャムだけでも すむ。菓子パンならばバンだけでもいい……とたしかにバンのほうがご飯より手間がか かりません。
もちろん、ご飯でもおにぎりやどんぶりものなら手間はぐんと少なくてすみます。こうした結果から、このクライアントはコメの卸しのほかに、コメの調理品を販売す る部署を立ち上げたのです。
具体的にいえば、大手メlヵlがなかなかつくらない、地域独自の炊き込みご飯のおにぎりやレトルト品を製造し、地域のコンビニやキオスクな どに営業をかけ、販売するルートを開拓していったのです。
コメは面倒くさいという意見、つまり、コメに対するクレームから新商品開発のヒン トを得て、積極的に新ビジネスをつくり上げたわけです。
コメ卸しというビジネスにも将来的な不安要因がちらついていることも、新ビジネス に力を入れていこうという気持ちに拍車をかけています。
最近は大手商社がコメ卸しにも進出し、大型スーパーなどにコメを卸すようになっ ています。大手商社の取扱量はケタ違い。大量仕入れで徹底的にコストダウンを図る のです。
これまでにも書きましたが、中小企業は大企業と真っ向勝負をすることだけは避けな ければなりません。勝負は価格競争にもち込まれ、資金力に限界がある中小企業にはま ず、勝ち目はありません。
しかし、このクライアントは、地域の野菜や名産品を炊き込んだ郷土の味で勝負! という戦術にもち込みました。これには大企業も手も足も出ません。
ブランド米などをネットで消費者が生産者からダイレクトに買う動きも加速してい ます。
そこでこのクライアントは、1キログラムの少量パックをつくり、いくつかの有名ブ ランド米のパックを詰め合わせ、日替わりでいろんなコメを味わえるというアイデア商 品を発売。
ネットを中心に販売していますが、これも好評で順調に売上を伸ばしてい ます。
卸し業専門のときはBtOBだけのビジネススタイルでしたが、こうしてBtOCの販路 も開けると、消費者の生の声を知る機会も増えます。
その声から新たなヒントを得て、 近く、コメ粉製品の製造・販売にも乗り出そうと意欲満々です。
▼クレームは改善。改良、 さらに進んで新製品の成功のタネととらえる。
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