法人という言葉がありますが、企業も人も、生きていく原則に大きな違いはありませ ん。人は1人では生きていけません。企業も同じです。
本来、ビジネスは相手がいなければ成り立たないもの。取引先がなければビジネスは 成立しない。
この当たり前のことをしっかり理解している経営者は、なぜかあまり多く はありません。取引先と混同じやすいのが得意先です。
取引先と得意先、この2つは広い意味では同 じですが、 一般的には得意先は顧客をさし、収益のもとになる大事な存在です。
得意先を失うことはその企業にとっては致命的なダメージになるため、どの経営者も得意先は非常に大事にしています。
一方、取引先は仕入れ先、製造の依頼先などビジネス・パートナーというべき存在をさしています。販売業なら、取引先からものを仕入れなければ売るべき商品がなく、ビ ジネスができません。
製造業や飲食業では、材料の仕入れ先との関係がうまくいかなく なれば、その日から仕事にさしさわりが生じてしまいます。
取引先との関係性を良好に保つことも、経営にとっては営業活動と同じく、非常に大 事なことだと認識していなければなりません。
少し前まで、取引先は下請けと呼ばれたりして、発注企業から高圧的な態度をとられ ることも少なくなかったものです。
そのマイナスイメージを嫌うためか、最近は協力企業というところも増えています。しかし、関係性はあまり変わっていないようです。
協力企業は親会社(発注企業)から、たとえば機械部品などの製作を依頼され、 一定 数を納期までに納入する。
発注企業はそうした部品を使って完成品にして市場で販売し たり、より最終工程の企業に納品したりします。
仕事を発注する← 仕事をもらつて製品をつくるなどして納品する、それでお金をもらうという関係からか、往々にして、発注企業が上、取引先は下という力関係だと考え がちなのでしょう。
発注企業が強い態度をとり、一方的に契約条件の改変をもちかけ、 強引により厳しい条件を飲ませる。いまも、取引先とそんなつき合い方をする企業があるのです。
私が顧間を引き受けている企業のなかにも、大手企業と取引ルートがやっと開けたと 喜んでいたところ、1年ほどたったころから大幅な値引きを要求され、その取引は赤字 に転じてしまった例があります。
それでも、従業員の雇用を守るために、仕事はあるほうがいい、また、次は採算のと れる新規の発注があるかもしれないと期待をもち、下請け企業はその要望を飲み、仕事 を続けていくのです。
しかし、こうした取引を続けていると、下請け企業はやむなく、安い素材を使ったり、 職人を減らしたりするようになり、製品のクオリティは落ち、発注企業の完成品のクオ リティにも影響が出てきます。
下請け企業も適正な利潤が得られる範囲を守つてつき合っていかなければ、結果的に 発注企業も、自らの顧客の信用を失うことになり、共倒れになる。
こういうケースはけっして少なくないことを肝に銘じておくべきです。
私は父の興した会社の経営を手伝うようになり、ビジネス社会に足を踏み入れたので、 初めは父の命令に従って仕事をするしかありませんでした。
父は戦後の混乱期にビジネスを興し、 一代で地域ナンバー1に成り上がったこともあり、ものすごいワンマンでした。
自分にも厳しい人でしたが、息子の私にも、さらには取引相手にも厳しく、強引に値引きをさせることなどよくあったものです。
それを見ていた私は、父を反面教師にして、取引先にも利益が出る、当然、こちらも 利益を得るというウイン・ウインの関係づくりを目指しました。
ウイン・ウインの関係からはお互いの信頼関係、親密な関係が生まれ、共に繁栄に向 かつていけるのです。真のビジネス・パートナーとは、共に喜びあえる関係、ウイン・ウインの関係でなければなりません。
▼取引先も自社もどちらも適正な利益が得られる関係性をつくる。
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