本書の内容は、一部上場会社の部長級の男が、万年赤字の子会社に社長として出向して、赴任後9ヶ月目から黒字に浮上させた物語である。赤字会社を再建する事例は必ずしも珍しいものではないが、本書の物語には、次のような特徴がある。この男(沢井正敏)が出向を命じられたときの、親会社社長からの条件は、(1)この子会社が黒字に浮上できるかどうかの最後の戦いをしてみること(2)戦ってみて黒字浮上不能の結論になったら、会社を整理すること(3)以上の結論を1年後に出すことというものである。1年後につぶす可能性が高いということは、(1)設備投資等、多額の金額を要する戦略、戦術はとれない(2)採用等による人員増加はできないということになる。つまり沢井は現有設備、現有人員によってその会社の黒字浮上をはからねばならないのである。したがって、いわゆる組織の活性化による業績向上だけが沢井に残された方策となる。赴任した沢井は、長年の赤字経営によって沈滞し、やる気を失って、暗くじめじめした雰囲気のなかで、逃避的で無責任、面従腹背、現状墨守……などなど、冷えきった人びとに直面する。そして、ここから彼の戦いがはじまる。沢井は、彼の哲学を基礎に、目標による管理の思想を中軸にして、さまざまな方策を打ち出していく。人びとは意欲づけられ、燃えて、組織が動きはじめる。生産性と品質が向上し、コストが下がる一方で、販売組織の活動も強くなっていく。その結果、赴任後わずか9ヶ月目から、この会社は黒字浮上に成功する。9ヶ月という短期間に、現有設備、現有人員で、組織をこれだけ変化させた沢井の打った手とは具体的にどんなものだったのか。またその背後にある沢井の哲学と目標による管理の思想とは、どのようなものなのか。これを一つの物語として具体化し、最後にこの物語を理論的に整理したのが本書である。(黒字浮上!最終指令新装版/まえがき)
目次
コメント