なぜ、ノルマ管理が起きるのか。本質的な理由が2つある。1つは、経営陣やリーダーの持つ、「働く人々は業績向上の手段である」という割り切った考え方であり、かなりの歪みを持った思想である。確かに、人間は経営資源の1つであり、業績を上げるための手段には違いない。しかし、人間は「掛け替えのない存在」であり、モノ・カネと同列に論じることのできない別格資源である。そう人間を位置づけて、会社と働く人々の「ともにハッピー」を追求する。それが会社と働く人々の望ましい関係であると、筆者は考える。現に、そのような関係づくりに向けて、ひたむきな努力をしている会社がある。たとえば、キリンビール(株)である。同社は、会社と社員との望ましい関係を「イコール・パートナー/仕事を介した対等な関係」と定義して、お互いが果たすべき役割を約束事として交わしている。会社は「〝自律した個〟を尊重し、支援すること」を社員に約束し、社員は「〝自律した個〟であること」を会社に約束する。そういう構図の中で、MBOSを展開し、人事諸施策の運用を行っている。筆者の見るところ、人によって濃淡はあるものの、「イコール・パートナー」はかなりのインパクトを持って浸透しているように思われる。
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