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一所懸命に話す・聴く

コミュニケーションの原点は話すことと聴くことであり、その善し悪しが職場の人間関係づくりにも影響する。とくにリーダーの話す態度や聴く姿勢は、リーダーとメンバーとの心の絆の決定要因になってしまうほどの重みを持っている。リーダーがメンバーに話すとき、いちばん大事にしてほしいのは「一所懸命さ」である。「オレはこうしたい」、「ココが問題だと思うのだが……」と自分の思いを一所懸命に話す。できれば上手に話してほしいが、人間関係の円滑化により効果が大きいのは一所懸命さの方である。話し方は訥々でも構わない。とにかく、一所懸命に語ることが肝要である。同時に一所懸命聴くことも大切だ。業績を上げている職場にインタビューに訪れると、職場のメンバーからは、「リーダーが聴く耳を持つようになってくれた。話を聴いてもらえると、なぜか元気が出る」と異口同音の答えが返ってくる。「感情まで含めて、聴いてもらっているような感じがする」と答える人もいる。どうも、リーダーの聴く姿勢がメンバーの元気のもとを刺激して、それが業績向上の原動力になっているようである。リーダーの聴く力とメンバーのモチベーションとの間には相関があるという研究結果もあるようだ。また、『モモ』(ミヒャエル・エンデ/岩波書店/1976年)では、聴くということの本質を次のように表現している。小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。なあんだ、そんなこと、とみなさんは言うでしょうね。話を聞くなんて、だれだってできるじゃないかって。でもそれはまちがいです。ほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです。そしてこの点でモモは、それこそほかには例のないすばらしい才能をもっていたのです。モモに話を聞いてもらっていると、ばかな人にもきゅうにまともな考えがうかんできます。モモがそういう考えを引き出すようなことを言ったり質問したりした、というわけではないのです。彼女はただじっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです。その大きな黒い目は、あいてをじっと見つめています。するとあいてには、じぶんのどこにそんなものがひそんでいたかとおどろくような考えが、すうっとうかびあがってくるのです。モモに話を聞いてもらっていると、どうしてよいかわからずに思いまよっていた人は、きゅうにじぶんの意志がはっきりしてきます。ひっこみ思案の人には、きゅうに目のまえがひらけ、勇気が出てきます。不幸な人、なやみのある人には、希望とあかるさがわいてきます。たとえば、こう考えている人がいたとします。おれの人生は失敗で、なんの意味もない、おれはなん千万もの人間の中のケチな一人で、死んだところでこわれたつぼとおんなじだ。べつのつぼがすぐにおれの場所をふさぐだけさ、生きていようと死んでしまおうと、どうってちがいはありゃしない。この人がモモのところへ出かけていって、その考えをうちあけたとします。するとしゃべっているうちに、ふしぎなことにじぶんがまちがっていたことがわかってくるのです。いや、おれはおれなんだ、世界じゅうの人間の中で、おれという人間はひとりしかいない、だからおれはおれなりに、この世の中でたいせつな存在なんだ。こういうふうにモモは人の話が聞けたのです!このような凄さを持つ聴く力は、リーダーが身につけるべき能力の1つである。しかし、多くの人間は生まれながらにして聴くことが苦手であり、その習得には話すことの数倍の努力が必要だ。努力とは意識と練習である。意識は寝る前に、「今日は人の話を積極的に聴いただろうか?」と自問自答する習慣であり、練習はコーチングなどのコミュニケーション研修の受講を意味している。

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