上記からのリーダーとメンバーとのキャッチボールは、一対一の面談ではなく、職場全体のミーティング形式で行うのが効果の高いやり方である。職場のメンバー全員で「部門の中期経営計画にはどういう意図があるのだろうか?」「この職場は何を目標にすべきか?」、「どうやって達成するのか?」などをワイワイガヤガヤと話し合うのである。それは「真面目な雑談」と呼ばれるコミュニケーション(『なぜ会社は変われないのか』/柴田昌治/日本経済新聞社/1998年)であり、ホンネで、腑に落ちるまで語り合うのが特徴である。メンバー全員が納得して、その達成に責任を感じるようになればしめたものだ。みんなが「腑に落ちた!」と感じ、「目標達成に向けて役割をまっとうするぞ!」という前向きな思いで受け入れられるような目標を立てるためには、真面目な雑談スタイルのミーティングが不可欠なのである。多くの会社のMBO運用マニュアルには、「目標設定は個人面接で……」と書かれているかもしれない。しかしそれにとらわれることはない。確かに、個人面接にも利点はある。リーダーがメンバーに関心と愛情を持ち、真摯な態度で面談すれば、メンバーの責任感や意欲は刺激されるだろう。また、一対一でしか話せないこともある。節目のセレモニーとしても個人面接は有効だ。だから、個人面接は否定しない。しかし、個人面接は「閉ざされた世界」である。リーダーとメンバーとの二人で、メンバーの目標を囲い込む。一種のクローズド・システムであり、それだけでは、メンバーの職場目標に対する当事者意識が希薄になり、目標達成手段のアイデア出しも難航してしまう。職場のチームワークも育たない。やはり、みんなでワイワイガヤガヤという場がどうしても必要だ。お互いが情報を持ち寄り、知恵を出す。他者の目標にも前向きに干渉し、協力を約束する。適度なライバル意識も醸成する。そういう場をできる限りたくさん用意して、節目の押さえとして、個人面接を実施する。それが、本書が提唱する「MBOSのオープン展開」である。
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