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リーダーが知っておきたい中期経営計画のツボ

中期経営計画とは、顧客満足の実行計画である中期経営計画は「ビジョン」と「戦略」を基本フレームに策定する。ビジョンとは「3〜5年後のなりたい姿」を描いたものであり、戦略とはビジョンの裏付けとなる「3〜5年間の重点実施事項」や「資源配分のあり方」を示したものである。ビジョンと戦略の具体的な内容は、各社各様で、これが正解だというものは存在しない。しかし、絶対外してはならない押さえどころが1つある。それは「売上」に関するビジョンと戦略である。売上がなければ、利益は出ず、給料も税金も払えないからだ。では、売上とは何なのか。「顧客満足の結果」である。どの企業も、何らかの満足を顧客に提供するから、売上という果実が手に入る。だから、顧客満足は徹底的に追求すべき経営の最重要テーマである。しかし、思いつきや場当たり的な顧客満足では、あまりにも効率が悪すぎる。組織能力としての蓄積もままならない。もっと、計画的、かつ組織的な顧客満足への取り組みが必要だ。そういう問題意識にもとづいて、顧客満足の「中長期(3〜5年)のあり方」と「実行計画のあらすじ」を描いたものが事業戦略である。その事業戦略を中心軸に、中期経営計画は組み立てられる。もちろん、中期経営計画には、適正利益の確保に向けたコストダウンや人材育成なども戦略として盛り込まれるが、それらは事業戦略と連動してこそ意味がある。職場のリーダーはこのような視点で、中期経営計画を捉えること。それは、営業や製造部門のみならず、経理や人事部門の人たちにも求められる基本的な態度であり、中期経営計画の共感的理解のスタートラインである。経営陣は、以下の3つの要素を総合的に検討し、事業戦略を決定する。環境変化の予測に注目する1番目が「環境予測」である。たとえば、平成24年1月の国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、日本では人口の高齢化が進行し、65歳以上の人口割合は「現在の約23%」から平成72(2060)年には「約40%」に上昇するという。そのような超高齢化社会は医療、介護、食生活などの分野に、膨大なビジネス・チャンスを作り出すであろう。半面、働き盛りの人たち向けのマーケットは縮小し、スケール・メリットが頼りの、規格品を大量生産するような事業は衰退するだろう。このように、経営陣は環境変化がもたらすビジネスチャンスや脅威を読み取って、将来のわが社の顧客の可能性を検討するのである。競争に負けないための「差別化的強み」はあるか?しかし、環境変化に対応するだけでは、戦略として不十分だ。もう1つ、「差別化」という要素が絡んでくる。平たく言えば、「わが社の強みは何か」に対する答えである。それも、競争相手が持っていないもの、あるいは彼らの持っている強みを凌駕する強みでなければならない。仮に今現在、差別化できるような強みがなくても悲観には及ばない。時間をかけて種まきをすればよい。将来、何を強みにできるのか、そこに焦点を合わせて検討するのが戦略策定である。筆者が関わりを持つある中小企業では、歴代社長が「ワンポスト・ひと技術」の発想で、強み探しに取り組んだ。同社は金属製品製造業であり、それゆえに技術力が勝負である。歴代社長は、「自分の在任期間中に、自分の責任において、次世代技術を最低1つは開発する」というミッションを自らに課して仕事をし、見事にそれをやり切った。現任社長も次世代技術の開発にチャレンジしたが、自社単独の強みがなかなか見つからない。人脈を頼りに、いろいろな人の意見に耳を傾けた。会社に戻っては、一人静かな時間を持ち、徹底的な「一人対話」も試みた。そうした苦悩の中から、「他社の強みと自社の強みを結合し、〝新たなわが社の強み〟を作り出す」という強みづくりの方法を発見し、現在、その実現に向け、さまざまな努力を払っている。努力が成果を生むためには、長い時間とさらなる努力とが必要だが、競争相手に負けないための方向性は見えてきた。あとは、全社員一丸の実行あるのみである。このように、わが社の強みを構築すること。それが差別化であり、戦略が具備すべき2つ目の要件である。ロマンを感じ取ろう戦略策定に際しては、環境変化と差別化は必須であるが、それでもまだ不足がある。さらにもう1つ、「働く人々のロマン」が必要だ。デパ地下で、惣菜を製造販売している会社がある。社長は女性であり、「忙しいお母さんの代わりに、温かいぬくもりが感じられる出来立て惣菜をお客様に提供したい!」という強い思いを抱いて、名古屋の地で商売を開始した。その切なる思いは、幹部社員や店長にも共有され、全国の百貨店に多店舗展開するに至った今日では、会社の存在理由そのものになっている。そういう「事業に対する思い入れ」がロマンであり、「ロマンの具現化」という切り口で戦略が策定されるのが望ましい。ロマンは、働く人々の意欲の源泉として機能するからである。

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