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鉄則01社長を超えるナンバー2が、会社を潰す。

はじめに──「社長」「ナンバー2」「後継者」次第で御社は潰れる。

◆誰も教えてくれない後継社長の「最初の仕事」会社を継続させるには「社長」「ナンバー2」「後継者」という三者の役割が重要です。

しかし、この三者がそれぞれ「どんな役割を担っているのか」「何をしなければならないのか」をきちんと理解している会社は案外少ないものです。

一例を挙げてみましょう。

後継者が会社を継いだ一年目、もっとも大事な役割とは何でしょうか。

それは「新しいことは何もしない」ことです。

先代社長とまったく同じことをして、同じ売上げ、利益を出し、同じ給料・ボーナスを社員に払う。

これが後継社長の一番大事な仕事です。

これができれば、一年目としては一〇〇点満点。

ところが、世の中のほとんどの後継者はその真実を知りません。

だから、つい「先代の悪いところは改善しよう」「もっと時代に合った新しい経営をやろう」と思っています。

それが大間違い。

実力も、実績も何もない後継者がいきなりそんなことをやっても、社員がついてくるわけがありません。

後継社長に「新しいこと」なんて誰も期待していないです。

一年間、先代とまったく同じことをして、同じ結果を出して初めて、後継社長は社内からも、社外からも信認される。

それが後継社長の役割です。

この話をしたとき、広島県にある「まるか食品株式会社」の川原一展社長は「小山さん、なんでもっと早く教えてくれなかったんですか……」と心の底から唸っていました。

今は川原社長も二代目として立派に会社を切り盛りしていますが、「一年目にはあれこれ新しいことをやって、相当無駄なお金を使いましたよ」と嘆いていました。

それも仕方ありません。

「一年目は新しいことを何もしないのが仕事」なんて、誰も教えてくれないからです。

「社長」「ナンバー2」の役割を理解しないと赤字になる

別のケースを取り上げてみましょう。

社長がナンバー2を選ぶ場合、「どんな人を選べばいいか」をけっこう悩みます。

それで多くの社長が次のように考えて、人選する。

自分の弱い部分をカバーしてくれる人自分が間違ったことをしたり、言ったときに、本音で訂正してくれる人こう見ると、なんとなく「ナンバー2らしい人」に感じられますが、じつはそれが大間違い。

中小企業で、こんなタイプをナンバー2に据えたら、組織はガタガタになり、間違いなく業績は赤字に転じます。

なぜなら、「社長の役割」と「ナンバー2の役割」が根本的にわかっていないからです。

ナンバー2は、自分(社長)と価値観が同じで、なんとなく好きな人を選ばなければダメに決まっています。

「補完関係」とか、「本音で意見してくれる」なんてもっともらしいことを言っても、まるで意味がありません。

第一に、社長とナンバー2の価値観がバラバラでは、その下の社員は混乱します。

「価値観が揃っている」は絶対条件です。

その上で「なんとなく好き」でなければ、うまくいくわけがないでしょう。

いくら能力があっても「コイツは気に入らない」「いちいち気に障る」なんて人がナンバー2だったら、社内の空気は最悪で、みんなが仕事をしにくくなります。

風通しもどんどん悪くなって、業績も落ち込みます。

それが人間の心理です。

人間の心理を無視して経営なんてできません。

また「社長が間違ったときに、本音で訂正してくれる」など、ナンバー2の仕事ではありません。

経営判断において「やる前から正解がわかっていること」など一つもありません。

何だって、やってみなければわからないです。

だから、社長が「やる」と言ったら、社内の誰よりも迅速に実行する。

これがナンバー2の役割です。

もし、ナンバー2が社長の決断に余計な意見を差し挟んだら、どうなると思いますか。

意思決定が遅れ、実行が遅れます。

すなわち、判断が正しかったのか、間違っていたかの判明も遅れる。

そうして「遅れる」ことで、マーケットの変化から取り残され、ライバルに敗れる。

これこそ中小企業にとって、もっとも避けるべき事態です。

だから、社長の役割は「正しい決断」ではなく、「早い決断」です。

そして、ナンバー2の役割は「社長の判断に意見すること」ではなく、「誰よりも迅速

に実行すること」です。

「三者」が役割を共有すれば必ず強い組織になる!このように「社長」「ナンバー2」「後継者」には、それぞれの局面において「担うべき役割」があります。

この三者が「自分の役割」をきちんと理解し、行動できれば、必ず会社はうまくいきます。

この本では「社長」「ナンバー2」「後継者」の役割について三一個のポイントを挙げ、具体的に解説しています。

「社長とナンバー2の関係」の話もあれば、「後継者と古参のナンバー2がどのようにコミュニケーションを取ればいいか」など、これまで誰も教えてくれなかった超実践的な内容が詰まっています。

さらには、経営サポート会員である社長による体験談、武蔵野のナンバー2である専務・矢島茂人のインタビューも併せて載せています。

後継者、ナンバー2自身から聞いたリアルな話です。

社長自身が読むのはもちろん、ナンバー2、後継者の三者が本書を読んで、役割を共有することができれば、それだけ強い組織になっていきます。

本書がそんな一助となることを願っています。

最後に、出版の機会を与えてくださった出版プロデューサーの岩下賢作さん、株式会社大和書房の高橋千春さん、執筆のお手伝いをしていただいたイイダテツヤさんに、心より御礼申し上げます。

二〇一八年一月株式会社武蔵野代表取締役社長小山昇

目次

はじめに「社長」「ナンバー2」「後継者」次第で御社は潰れる。

コラム「ナンバー2」の2大条件【株式会社武蔵野専務取締役矢島茂人】

古参のメンバーに辞めてもらい「地獄の苦しみ」を経験した【株式会社後藤組代表取締役後藤茂之氏】

一年目から無駄なお金をたくさん使ってしまった……【まるか食品株式会社代表取締役社長川原一展氏】

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◆9割の社長が間違える「ナンバー2の選び方」

会社は、ナンバー2の実力で決まる。よく「社長の実力で会社は決まる」と言われますが、じつはそれは大間違い。本当に大事なのはナンバー2の方です。

しかし、これを安易に捉えてはいけません。

「ナンバー2が大事」と聞くと、ほとんどの人が「それなら優秀な人をナンバー2に据えよう」とすぐに考えるが、これがまた、とんでもない間違いだからです。

ナンバー2を選ぶ際、大切なのは「社長とレベルに差がない」という点。社長がAランクの優秀者なら、ナンバー2もAランクかBランクの人を選ぶのは大いにけっこうです。

しかし、社長がCランクなのに、優秀なAランクをナンバー2に据えても絶対にうまくいきません。うまくいかないどころか、会社は赤字続きになります。

社長が五〇メートルを一五秒で走るのに、ナンバー2が九秒で走るようでは、その会社はダメになるに決まっています。

優秀なナンバー2に、肝心の社長がついていけないからです。反対もまた同様です。

これが「ナンバー2の実力で会社は決まる」という言葉の真意です。

こうしたことは実際よくある話で、株式会社オフィスダイナマイツの内山雅貴社長は夫婦で同じ会社で働いています。旦那が社長で、奥さんがナンバー2。

奥さんがとにかく優秀で、能力が高いです。この会社がどうなっていたかといえば、定石通り、損益分岐点をヨタヨタと越えていた。

あるとき私は実践幹部塾に参加している奥さんにこっそり言いました。

「会社が儲らないのは、奥さん、あなたのせいですよ。社長は能力が低いんだから、奥さんは社長のスピードに合わせて仕事をしなきゃいけない。

奥さんが実力通りのスピードで仕事をすると夫婦が〝フーフー〟になっちゃって、会社がうまくいかなくなるよ」

もちろん奥さんは驚いていました。

しかし賢い奥さんは、自分のレベルを下げて、社長に合わせて仕事をするようになり、その後、会社は三年間で売上げが二倍になり、インフラに投資して利益が向上してます。

会社とはそういう所です。人間の心理を考えれば、じつに当たり前の話です。

高校野球を思い浮かべてみてください。

地区大会でいつも出ると負けのチームに、全国大会で決勝に進む強豪校から選手が一人入ってきたら、チームは強くなるでしょうか。

何もわかっていない人ほど「戦力アップだ!」と無邪気に大喜びしますが、そんなもの、うまくいくわけがありません。

一流の選手から見れば、チームメイト全員が下手クソに見えるし、練習もぬるく感じられて仕方ありません。反対にチームメイトから見れば、一流選手は上手すぎて一緒にがんばろうという気持ちになれません。

一流選手の言うこと、やることに、いちいち反感を覚える選手も出てきます。それが人間の心理です。会社も同じで、人間の心理を無視して経営などできません。

ナンバー2は、社長に比べて優秀すぎても、無能すぎてもダメです。

◆「優秀すぎる人」は迷わず不採用

これはナンバー2に限らず、社員すべてに言えることです。だから武蔵野は「能力がこの範囲内の人」とレベルを決めて採用しています。優秀すぎる人間も、無能すぎる人間も、同じく不採用にする。

こう言うと「優秀すぎる人材も不採用にするんですか?」と驚かれますが、人間心理を理解していれば当たり前です。

高校野球の例でもわかる通り、ずば抜けて優秀な人が入ってきたら、本人も、周りもおもしろくない。

できる人はできない人の気持ちがわからないし、できない人はできる人をやっかむから、結果としてお互い居心地が悪い。

そんな状況で、いい仕事ができるはずはありません。経営で大事なのは人間心理に則ること。

それを無視して、「とにかく優秀な人材を採ろう!」「優秀な人材をナンバー2に据えよう!」と考えるから、会社がダメになる。

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