◆社長とナンバー2の差が広がる会社は続かない「頼りにしていたナンバー2が突然会社を辞めてしまう」これもよく聞く話ですが、原則として、これも社長の責任です。ナンバー2が会社を辞めるとき、表向きにはいろいろな理由を並べる。しかし、現実的にはキャパオーバーで潰れるケースがほとんどです。特に、創業時から一緒にがんばってきたナンバー2が辞めるのは、圧倒的にこのパターンです。端的に言えば、会社の成長についていけなくなる。会社が成長していくにつれて、当然仕事は増えます。年商一〇億円が二〇億円になれば、倍の仕事量になる。このように会社が成長していく中、社長自身はいろいろ勉強し、経験値もアップして、それなりに成長していきます。しかし、自らが勉強して成長するのと同じように、ナンバー2にも勉強させ、成長させる社長は案外少ないです。ここに大きな問題があります。それでいて会社はドンドン成長していく。社長はナンバー2に「あれも頼む」「これも頼む」とあらゆることを押しつけます。その結果、ナンバー2は完全にキャパオーバーになり、会社を辞めていきます。◆ナンバー2が潰れないためのルールを作るこの状況において、まず社長がやらなければならないのは、なんでもかんでもナンバー2に任せるのではなく、きちんと事業を分けることです。ナンバー2が担っている仕事量が一〇としたら、そのうちの三割を切り離すために組織を分割し、別の人に任せます。三割の仕事に従事している中から、リーダーになれる人を引き上げればいいです。人間には処理能力の限界があるから、それを超えて仕事をすることなど不可能ですし、そんな状況が続いたら潰れます。だから、ナンバー2がキャパオーバーにならないように、明確なルールを決める必要があります。武蔵野は、報告ツールとしてボイスメールを使用しています。毎日の業務報告をする。この受信メールが一五〇〇件以上になったら、組織を分割します。組織が上手に回らなくなった時、何か指標がないかと探したら、ボイスメールの受信数を毎月チェックしていたので気付いた。じつに明確なルールです。ボイスメールが二〇〇〇件、三〇〇〇件になったら、どんな優秀な人でも処理できない
ことがわかっています。だからルールの変更をした。これは社長として当然のことです。どの会社にも「これを超えたらキャパオーバー」の指標になるモノがある。それを見つけてルールを決めて、ナンバー2はもちろん、社員個人の仕事量を調整しなければなりません。その調整をせず、ナンバー2や社員にとって無茶な状況を続ければ、潰れるのは目に見えてます。過去九年間、課長職以上の退職者がゼロは、こうしたキャパオーバーにならないよう「きちんとルールを決めている」のも大きな要因の一つです。◆「私は大丈夫」という部下の言葉に騙されるなナンバー2や社員の中には、どんなに大変でも「私は大丈夫です」「任せてください」と言う人もいます。「社長から信頼されたい」「頼られたい」の気持ちがそう言わせている。しかし、その言葉に騙されて、キャパオーバーの仕事をさせていたら、結局、本人が潰れてしまい、本人のためにも、会社のためにもなりません。そこをコントロールするのは社長の責務であり、キャパオーバーにならないルールを作ることが社長の仕事です。だから、私はナンバー2をはじめ部下に仕事を振る場合、「これをオマエ一人でやっても給料は上げない。誰にさせるかはオマエが決めていいから、その人にやらせるように」と言います。上司が一人で仕事を抱え込まないことは大切で、「人を育てるのも上司の仕事」です。いずれにしても、ナンバー2が(その他の社員も同様)キャパオーバーにしないのは社長の仕事です。そこを忘れて、なんでもかんでもナンバー2に任せていると、いずれ大きな問題が浮上してきます。
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