◆銀行に預けたお金は死んでしまう会社の利益をどこに使うのか。これを決めるのも社長の大事な仕事です。大前提として、社長が考えなければならない点があります。多くの会社が経常利益から税金を払い、残りを銀行に入れます。それを当たり前のようにやっているが、銀行にお金を置いておいて、それが稼ぎになるでしょうか。このご時世、一〇〇〇万円を定期預金にしても、年間一万円しか稼いでくれません。これを多くの社長が正しい経営(お金の使い途)だと思っているが、武蔵野は違います。一〇〇〇万円の現金が残ったなら、八〇〇万円は使います。銀行に預けて「一万円稼ぐ」より、もっと稼げることに使う方が得だからです。とてもシンプルな発想です。さらに、ここで重要なのは、武蔵野はお金の使い途がはっきりと決まっている点です。一番お客様が増えること二番社員教育三番社内インフラお金の使い方を、最初から決めてある。まず、考え方が共通する。一番から三番は、どれも「会社の利益を伸ばす」ものです。銀行にお金を寝かしておくなら、「何にお金を使ったらお客様が増えるか」を考え、そこに投資した方がいい。これはもう、至極まっとうな話です。同様に、インフラを整えれば、それだけ仕事を効率化することができます。単純な話、古いパソコンより新しいパソコンの方が高性能で、仕事が早く終わるから、新しく買い換えた方がいいです。こうした金銭感覚は「家庭」と「会社」は真逆です。家庭なら「まだ使えるパソコン」を、わざわざ捨てて新しいものに買い換えしないでしょう。なぜなら「もったいない」からです。しかし、「もったいない」は家庭では美徳でも、会社では弊害です。「ものを大事にする」のは一般的にはよいことですが、経営者が「不要なものを捨てられない」「儲かっていない事業を捨てられない」では困ります。この感覚は男と女でもけっこう違います。例外はありますが、相対的に女性はものを大事にして、家庭では女性が主導権を握るとたいていうまくいきます。男が家庭の財布を握っても、ロクなことはありません。
しかし、会社は違います。経営サポート企業の中にも、旦那が社長で、奥さんが経理をしているところがありますが、奥さんが家庭の金銭感覚を会社に持ち込んでいるために、うまくいかないケースはよく起こります。お金の使い方では「家庭と会社は真逆」。これを理解し、「経営としての金銭感覚」を社長は身につけなければならないです。◆社員教育をしない会社は停滞し、消えていく二番目の、社員教育についても触れましょう。最近は社員教育にお金をかける企業は減ってます。中には「社員教育をして、その人に辞められたら損だ」と考えている社長もいます。しかし、その発想自体が大間違い。社員教育をすれば、社員のレベルが上がる。その社員が出世して職責が高くなり、辞めてしまうと、その時点で多くの社長が「せっかく育ててやったのに!」と恨みがましく思います。そこで、これからのことを、順を追って考えてみて下さい。まず、辞めた社員のポストが空きます。すると、次に誰かがそのポストに就くが、その社員も社員教育を受けているから、前任者が三年かけて身につけたスキルを、数ヶ月で身につけることができます。それだけレベルが上がっている。そして次に異動があり、新しい人がそのポストを引き継ぐときはどうでしょうか。前任者が数ヶ月でスキルを身につけたので、もはやそれが当たり前になっています。すると、後任者も必死で勉強して、早くスキルを身につけます。そのレベルでなければ、この組織にいられないからです。このようにして、社員全体のレベルが上がり、組織が活性化されていく。こうした全体的な価値に比べれば、教育した社員が辞める損失などたかが知れています。だから、組織では社員教育が必要で、社員教育をしない会社は全体的にレベルが下がり、停滞、衰退していきます。
◆嫌々だろうが、何だろうが、社員に勉強をさせる「優秀な人材を採用すること」より、今いる人材をしっかり育てるほうが、会社としてははるかに重要です。大学の同期二人が、一方は有名な会社に就職して、一方は武蔵野に就職するというケースがあります。優秀な人は有名な会社に就職して、そうでもない人が武蔵野に入ってくる。当然、最初は有名な会社の人のほうが高給取りです。しかし一〇年も経つと、武蔵野の社員の方が高給取りになっているケースがけっこうある。この一番の違いは教育です。どんなに優秀な人材でも、社会に出てからまともな教育を受けなければ、みっちり教育を受けてきた人間にはかないません。歳だけ上がって、スキルは全然上がってない人は世の中にゴロゴロいます。そのくらい教育は重要です。いくら教育が大事といって、武蔵野社員が喜んで教育を受けているかといえば、そんなことはあり得ません。社員はみんな勉強なんてしたくないです。社員は勉強会を、みんな、隙あらば逃げます。それが正しい社員というもの。だから、強制的に勉強するルールがあります。武蔵野は、半期(五〜一〇月、一一〜四月)に開催される勉強会に一五回出ることがルールです。その回数を満たさないと、賞与は少ないし、給料も多く上がりません。誰だって給料を多く貰いたい。そのためには課長、部長にならなければならないので、嫌々ながら勉強します。それが人間の心理です。嫌々だろうが、何だろうが、勉強して個人のスキルが上がれば、それだけ組織全体のスキルが上がる。どんなに優秀な人材を採用しても、社員教育をしていない会社は伸びません。会社が成長していくためには、社員教育は不可欠です。社長の仕事は「お客様に喜ばれ、ライバル企業には嫌われる」社員を育てることです。人の行動が変わらないことを教育しても無意味です。仕事を教材として、現場の第一線でお客様サービスができるようにする。
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