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社員のお客様無視は社長の責任である

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社員のお客様無視は社長の責任である

いままであげてきた例は、本当のところ、氷山の一角にしかすぎないのである。 毎日毎日、たくさんの会社で恐ろしいほどのお客様無視の行動が繰り返されてい る。そして、これが会社の信用を落とし、知らない間に売上げ不振を招いている のだ。 これは、社員が悪いのではない。管理職に叱言をいっても、叱言をいわれた ことだけ、その当座よくなるだけである。そして、それは管理職の責任ではな いのだ。

すべては社長の責任である。社長の姿勢それ自体がクお客様第一クになってい ないからなのである。私が会社にお伺いして、徹頭徹尾言い通すのが「社長の正 しい姿勢」なのである。 正しい姿勢とは、いうまでもなくクお客様第一″である。 そして、社長が姿勢を正すと、その瞬間から、会社の業績が上がりだすのを、 私が直接お手伝いした五〇〇〇社にも及ぶ会社で見てきているのである。 では、社長の正しい姿勢のもとに、どうしたらいいのだろうか。 この解答は、いままでのマネジメントの思想の中にはない。 もし、あるとするならば、こんなにも多くの会社で、お客様無視が行われてい るはずがない。 それどころか、マネジメントの思想を導入すればする程、会社はますます邪道 に陥ってしまうのである。マネジメントを説いた本に″お客様クなる思想どころ か、言葉さえないではないか。 もっともいけないのが、「自主性を尊重する」「任せる」「コスト、能率、効率、 生産性、回転率」という思想である。というよりは、これらの思想をお客様の要求に優先させてしまうことである。 「自主性を尊重する」というきれい事を言ってみても、事業というものを正し く理解し、自らの正しい行動はどうあらねばならぬか、ということが分かるよう な人間は、まずは例外中の例外にしか存在しないのである。ほとんど大部分の人 間が、お客様無視の行動をとるにきまっているのだ。 「任せる」という言葉ほど、その中身の分からぬ言葉は世の中にない。いったい、 任せるというのはどういうことなのか、何を任せるのか、ということについての 正しい考え方などマネジメントのどこにもないことは、本書で度々ふれてきたと おりであるc なぜ「任せる」のかといえば「任せなければやる気を起さない」とか、「会社 が大きくなると社長ひとりでは手が回らないから、それぞれ責任者を決めて任せ なさい」とかいうことらしい。 とんでもない間違いである。前にも述べたが、日本の場合に、「任せる」とい うことは「任されたものが勝手にやっていい」というニュアンスがある。だから、 「任せるといっておきながら、あれこれうるさく言う」というような反発が起きる。いったん「任せる」といってしまうと、社長はもうこのことについては何も言え なくなる。 こんなことをしたら、それこそ任された人間の個人的な考え方で事を行い、会 社の中はバラバラになってしまうのである。 コストや効率や回転率などを強調すると、どういうことになってゆくかの実例 を、私はたくさん見ている。それは必ずといっていいほど、お客様の要求を無視 する行動となってゆくのである。 では、自主性などいっさい認めず、任せることをやめて、ワンマンコントロー ルすればいいのか、コストや生産性はいっさい無視せよというのか、ということ になる。 そんなことはできない。社長はただ一人しかいないのだし、コストや生産性を 無視したら会社は競争に負けてしまうのである。 では、どうしろというのか、ということになる。それを、これから述べてみ よう。まず第一には、社長が自ら姿勢を正すことである。いうまでもなく、お客様第 一の姿勢である。そして、自らこれを実践するのだ。その実践とはどんなものか は、本書から汲みとっていただきたい。 また、明けても暮れても、あらゆる機会をとらえて「お客様第一」を言い通す ことである。 第二には、お客様第一の思想と、これを具体的にどう行えばよいかについて、 方針書をつくるのである。例えば、 一  お客様サービスは面倒くさく、能率が悪く、時間がかかるものであること 一 一を肝に銘じてお客様のためにつくす。                  一 というのは思想であり、設計変更、材質変更、購入先、外注先の変更、仕入れ銘柄や品番の変更は すべて事前に社長の決裁を要す。 在庫品はすべて先入れ先出しとする。 などといえば、仕事に対する具体的な方針である。分かりきったことと思われる ものであっても、必ず明文化しておかなければならない。 この方針書は、必要と思えば、その方針の実行に関する具体的なマニュアルま でに細かく明文化しなければならない。その明文化は、何かお客様からクレーム が発生したら、そのつどこのクレームが発生しないようなやり方を追加するので ある。こうすれば、だんだん完全なものに近くなってゆく。 例えば、製造活動において、作業者は不良品または不良らしいものを発見した場合には「不良品投入箱」 に投入する。 検査員は検査中に異常不良が起っていることを発見した場合には、直ちに 加工部門の責任者××係長に通報するとともに、直属上司に口頭で報告する。 という要領である。 右にあげた幾つかの方針書や指導書の例が励行されたなら、本節であげた事例 の幾つかは起らないことを知っていただきたい。 そんな細かいことまでいちいち社長がああこう言わなければならないのか、と いうことになるが、そうなのである。これは大切なことなのである。 事はお客様のサービスに関することなのだ。どんな細かいことでも、大切であ る。お客様サービスに関することは、たとえ、どんなに細かいことでも、小さな ことでも、グレードは最高なのであることを忘れたら、それはお客様第一になっ ていないことである。とても、体が幾つあっても足りないと思われるかもしれないが、これは、いっ たん決めたら、永久に使えるマニュアルになるのである。それに、社長がああこ う言うのは、クレームが発生したことだけでよい。しまいにはクレームがほとん どなくなってしまうし、そうなれば、社長がああこう言うこともなくなってしま うからである。 第二には、方針書やマニュアルは、よくよく管理者に説明して徹底を計る。そ して定期的な抜取り監査をやり、試験をして、これを昇進昇給の査定に使うので ある。マニュアルについて大切なことは、「マニュアルはやらなければならない 最低基本であって、マニュアルに決めていないことでも、お客様サービスに必要 なことがあったらやらなければならない」ということを、よくよく徹底させてお くことである。これをやらないと、「マニュアルにないから」といって、やらな くなる恐れがあることを知らなければならない。 右のことを励行したら、お客様サービスは格段に向上し、売上げは自然に上昇 するのである。

電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である

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