現代社会は急速に変化し、企業はその変化に対応するために常に新しいアプローチを模索しなければなりません。
そのためには、革新が不可欠です。革新は、組織が競争力を維持し、成長するための鍵です。
しかし、革新は単なる新しいアイデアを出すだけでは実現しません。それには戦略的な計画、リーダーシップ、そして組織全体の協力が必要です。
この記事では、革新の重要性、革新を推進するためのステップ、そして成功事例を探求していきます。どの産業においても、革新が成功すると、企業は新たな市場を開拓し、競争相手をリードすることができるでしょう。
したがって、革新を適切に取り入れ、組織全体が変革の文化を受け入れることは、現代のビジネスにおいて不可欠なスキルとなっています。
そのためには、リーダーシップの重要性や具体的な戦略、失敗から学ぶことなどについて考えていきます。革新が企業にもたらす利益は多大であり、そのポテンシャルを最大限に活用するための知識と洞察を提供します。
革新
合理化の限界
革新とは、経済的成果を高めることをねらいとした構造的な変革であって、合理化とは違うのである。合理化とは、いまあるものを能率化し、あるいは低原価化するものである。
合理化はそれ自体大切であって、経営の有力な武器であることは、筆者のかつての専門が生産技術(IE)であっただけに、よく知っている。
しかし、合理化は企業を発展させる「きめ手」ではない。
いな、あまり合理化に熱心になって能率病にかかると、逆に企業にとってマイナスになる。なるほど、能率化すれば工数は減って原価は下がる。
だが、特定製品についての能率化の効果は、しだいに小さくなってゆく、反対に能率化のための投下資本や経費は増大してゆく。
合理化には限界があり、しかもその限界はあまり高いところにはない。
一方、企業の内部費用は確実にふくれ上がってゆく。初めのうちは能率化によってその経費を吸収できる。しかし、しだいにそれがむずかしくなり、ついには経費を吸収できなくなってしまうのである。
しかも、製品の値下がりがこれに拍車をかける。こうした状態に追い込まれると、会社をあげてさらに能率化に取り組む。
しかし、限界に近づいているだけに効果は上がらず、低い業績に泣く会社を筆者はたくさん知っている。
合理化では斜陽化を食い止められない
もっと大きな問題がある。
それは、合理化・能率化には、商品の斜陽化を食いとめる力はないということである。斜陽化は、企業外の市場の変貌によって起こるものだからである。
企業内の合理化とは無関係な要因によって斜陽化が起こることを、意外なほど認識していないのは、いったいどういうわけなのであろうか。
いかなる製品も必ず斜陽化してゆく。ただ、その寿命に長短があるだけである。フラフープのように半年という短命もあれば、アスピリンのように七〇年の齢を保っているものもある。
斜陽化の前兆は競争の激化である。競争が激化すれば値下げしなければ売れなくなる。
こうして収益性の低下が始まり、斜陽化に一歩をふみ出す。さらに進むと、売上げの頭打ちから低下に転じ、それに加速度がついてゆく。
昭和四二年の春、世の好況をよそに、斜陽のオートバイ業界は大減産となり、某メーカーのごときは、三カ月間に生産が半分以下に落ちてしまった。
こうなると、もう能率も蜂の頭もないのだ。これが斜陽の現実である。
ところが、現在の経営学と称する(本当は大部分が、組織管理の理論と能率のテクニックであって、経営学ではない)ものは、客観情勢の変化にはぜんぜん関心を示さず、ひたすら内部の合理化に専念し、能率と低原価の実現にうつつをぬかしている。
そして、そうすることが、経営の正道であるかのような教え方をする偉い先生がたがあまりにも多い。
こうして企業体の人びとの考えを間違った方向に向けてしまう罪悪は、能率化の効果を相殺してしまうだけではなく、多くのマイナスをもたらしているのだ。
経営者が内部の能率にのみ目を向けて、外部情勢への注視を怠り、その変化に対応することができないならば、その企業は一巻の終わりである。
経営者としての正しい態度は、常に関心を外部におき、その変化に対処するために、内部態勢をどのようにするか、というのでなければならない。
経営者の仕事
斜陽化する製品にかわる収益性のよい新製品開発の目標をどのようにきめたらよいか、陳腐化してゆく販売チャネルにとってかわる効率的な新販売チャネルは、どのような目標のもとに選定したらいいか、という構造的な変革こそ革新なのである。
このように考えてくると、革新は攻撃的というよりは、むしろ防御的なものといえそうである。
経営者の仕事というのは、このように常に未来なのである。わが社の優秀な未来を築くために、現在何をしなければならないか、が経営者の正しい関心と態度なのである。
この未来を築く仕事は、とてつもない難事業なのである。これは経営者以外のものにはたやすく理解できるものではない。
企業の幹部の態度として最も大切なものの一つは、経営者の役割は未来事業にあることを理解するとともに、その難事に思いをいたし、経営者にいらざる内部の心配をかけないことである。
これが補佐のまず第一なのである。
従来のマネジメントの思想は、これとは逆に、経営者はもっと内部をよくみなければいけない、というまったく間違った哲学を吹きこんでいる。その罪は万死に値するといえる。
だから、管理者の中から、「もっと内部のめんどうをみてもらいたい」というような声がでてくる。どこへ行ってもきかれる声に、「トップの無理解」というのがある。
筆者にいわせたら、そういう声の大部分は、管理者がトップの立場を理解できないところから起こっているのである。
トップが内部のめんどうをよくみられないからこそ、部長や課長が必要なのだ。そこのところを間違えてはいけないのだ。
幹部の関心は、まずトップに向けるのが本当なのに、従来のマネジメントの思想は、「部下」一本ヤリである。まったくため息がでる。
革新で、とかく忘れられやすいのが、販売の革新である。どのように優れた製品でも、売れなければスクラップなのだ。企業の収益は売れてはじめて生ずる。売れないうちは費用が発生するだけなのだ。
つくりさえすれば、これを売価に換算して資産に計上するという会計理念は、税務署のためのものではあっても、断じて企業体のものではない。
販売力の弱い企業は斜陽会社になる
販売力の弱い企業は伸びないだけではなく、斜陽会社になり下がってしまうのだ。
「うちは下請加工だから営業活動に力を注ぐ必要はない」と考えるのは間違いである。
逆に、下請加工なればこそ、なおのこと営業活動を活発化し、有利な仕事をとり、引き合わない仕事は切ってゆかなければならないのである。
ある成長業界の中でいつも黒字と赤字の線を行ったり来たりしている斜陽会社がある。
その会社の人事方針は、優秀なものを生産部門と総務部門に配置し、成績の悪いものは営業部門に左遷するというのだ。
古いノレンと高い技術を誇りながら、当落線上をさまようこの会社が、もしも販売第一主義に変わったなら、たちまちのうちに、業績はまったく変わって、優秀会社の仲間入りをするであろう。
論より証拠、優秀企業は必ず営業に強い、そしてトップ層に販売の神様がいる会社は最高に強い。
松下電器は御大の松下幸之助会長、トヨタ自動車には自販の神谷正太郎社長、ソニーには盛田昭夫副社長、本田技研工業には藤沢武夫副社長がいるのである。
もしも、あなたの会社の業績が上がらないならば、「販売力は弱くないか」という疑問を必ず投げかけてみる必要があろう。
- 収益力の高い製品を開発できること
- これを有利に販売できること
優秀企業の条件は、収益力の高い製品を開発できることと、これを有利に販売できること、この二つに最終的にしぼられてしまうのである。
一口にいえば、製品と販売の革新力である。
だから、革新の目標は、重要なうちでも特に重要な目標であって、これを欠いた企業目標などは、気の抜けたビールみたいなものでしかないといえよう。
革新はごく徐々にしか進まないことを、われわれはよくよく心しておく必要がある。
現に優秀な企業というものは、過去において一〇年あるいは二〇年にもわたる、先輩の革新の努力の賜であって、現在はその遺産で食っているかもしれないのである。
もしも、その上にあぐらをかいて、将来に対する布石を怠れば、やがてその企業は没落してゆく。
現在において、たえ間ない革新の努力を続けるもののみが生き残り、業界の指導的地位につけるのだ。革新の道は遠くけわしい。
ローマは一日にして成らないのだ。常に三年先と一〇年先を考えて、革新の手を打ってゆく、という心構えこそ肝要なのである。
革新を推進する
革新を推進してゆくうえで、特に大切な留意点を三つあげよう。
- 第一は、革新業務は独立の部門として他と分離することである。
- 第二にはその責任者である。それは絶対に人材かつ適材でなければならないということである。
- 第三には、対象をしぼることである。最少数の対象に、資源と努力を集中することである。
第一は、革新業務は独立の部門として他と分離することである。
部門として分離するほどでない場合は、専任者をきめることである。
分離をしないとどうしてもむずかしく、革新がおろそかになり、手なれた仕事に向いてしまう。
そのうえ、革新が進まない理由として、「忙しくて革新業務に回らない」という責任のがれに使われるからである。
しかし、本当に大切なのは、トップの姿勢である。
独立させて専任させるという、そのこと自体にトップの決意を見せるのである。場合によったらトップの直属もよい。いや、そのくらいにするのがむしろ本当である。
第二にはその責任者である。
それは絶対に人材かつ適材でなければならないということである。
日常のくり返し仕事ならば、人材と凡材にそれほど大きな差がでない。しかし、革新に関しては人材と凡材では天地の差ができる。
というよりは、凡材に革新を命じたために、その狙いとは逆に、まったくの荷物になってしまっている企業をしばしばみかけるのである。
革新の成否は人によってきまる。こと革新に関しては、組織で仕事をするというわけにはいかない。あくまでも特定個人の能力にかかっているのだ。
革新部門を組織化することは大切である。
だが、組織化したから、それで革新が進むと思うと間違いである。その中心となる人材を得なければ、革新などできるものではない。
だから、革新部門の責任者は、企業内での最適と思われる人をあてなければならない。たとえ、その人が抜けることによって、その部門がどのような打撃をうけようと、あえて強行することが必要なのだ。
それは苦しい決定である。
その苦しい決定をあえて行わねばならないのがトップであり、その苦しい決定が会社の将来を左右するのだ。
間違った人間関係や温情を、断乎としてはらいのけなければならないのである。
第三には、対象をしぼることである。
最少数の対象に、資源と努力を集中することである。ある会社で、たった一五人ほどの研究員で、なんと八〇のテーマをもっている、という例にぶつかったことがある。
当然のこととして、どれもこれもかじりかけになっていて、成果はほとんど上がっていなかった。その中には、すでに四年前に完成していなければならないものまであった。
そんなものは、もう時期を失して意味がないのであるにもかかわらず、捨て去られていない。もう何をかいわんやである。
責任者がボンクラだとこういうことになる。いや、本当はトップがダメなのである。
この会社は大幅な実質赤字を、土地を売った売却益でカモフラージュしていたばかりか、配当まで行っていたのには、あきれ返るばかりであった。
むろん革新や研究の対象は、候補としてはたくさんなほどよい。しかしそれらを一度に手をつけたってダメにきまっている。
実際活動は、それらの候補からしぼりにしぼって、少数にしてしまうとともに、優先順位をきめるのである。
そして、明確にスケジュールを含めて推進するアメリカの宇宙計画は、スケジュール化の見本である。
いわゆる「スケジュール方式」か、全面責任をとる「プロジェクト・マネジャー方式」かのどちらかにきめるのがよい。特に、実用化の段階ではスケジュール化が大切である。
集中の原則を貫いて、大きな成功をおさめている好例はソニーである。
「二兎を追うものは一兎をもえず」ということわざは、近代的な企業の革新にも当てはまるのである。
新製品の開発はむずかしく、新販路の開拓もむずかしい。
捨てる革新
しかし、何といっても最大の難事は「捨て去るという革新」である。
費用ばかりかかってあまり収益のない製品、陳腐化した販売チャネル、少額の取引しかない得意先、赤信号の出ている親企業などを、思いきって切ってしまうむずかしさである。
これらは、製品に対する愛着、得意先とのクサレ縁、切ることによって失われる収益などがじゃまをして、なかなか切れないものである。
それをあえて切ってゆく決断がなければならない。
トップというものは、常にこのような「苦しい決定」をしなければならないのである。その苦しさをさけようとするトップは、経営者としての資格がないのだ。
幹部はトップを理解して補佐する
そしてまた、企業体の幹部はトップの苦しい立場を理解し、正しい決定を補佐しなければならない。
部下のほうばかり向いている幹部は、幹部の資格がないのだ。革新の目標は大企業には必要であるが、中小企業ではそんなことまでする必要はない、と考えるのは間違いである。
いや、中小企業なればこそなおのこと、革新の目標を明確にする必要がある。資本力、技術力、販売力、人材など、何をとっても劣勢に立つ中小企業の生きる道は、旺盛な企図心による革新である。
革新こそ、中小企業にとって大企業の圧力に対抗する有力な武器なのである。これによって、経営の自主性を保ち、好収益をあげて内容の充実をはかるよりほかに、生き残る道はないのだ。
ところで、革新に関して、中小企業はめんどうなことをせずに革新の企画や推進ができるという、大きな強味をもっている。
身軽で小回りのきく小規模経営の利点をフルに発揮することが大切なのである。市場の変化も要求も、いち早くとらえることができるのであるから、これに対応することも早くできるのである。
まとめ
革新は、経済的成果を高めるための構造的な変革であり、合理化とは異なります。
合理化は既存のプロセスを効率化し、原価を削減することを指し、重要ですが、革新とは異なるアプローチです。
革新は、市場での競争力を高め、新たな価値を創造することを目指します。
合理化は限界があり、投入資本や経費が増加すると効果が鈍化します。
しかし、革新は製品やサービス自体を変え、競争優位性を築くことができます。革新には市場の変化に適応し、新しい需要に対応する柔軟性が求められます。
革新は製品の斜陽化を防ぎ、競争の激化に対抗できる方法です。
競争が激化すれば価格競争も激しくなり、収益性が低下します。しかし、新製品や新しい販売チャネルの革新によって、市場での地位を強化し、収益を向上させることが可能です。
革新は内部のみならず、外部の市場変化にも注目することが重要です。
市場の変化に適応し、新しい機会を見つけ出すことが競争力の源です。革新は企業の生存と成長に不可欠であり、トップのリーダーシップと決断が必要です。
革新の成功には優れた人材と適切な資源の集中が必要であり、選定と組織化が大切です。
特定の目標に集中し、スケジュールを厳守することも成功の鍵です。
企業は捨て去る決断をする勇気も必要で、収益性の低い製品や陳腐化したチャネルを切り捨てることが肝要です。
革新は大企業だけでなく、中小企業にも有力な武器であり、小規模経営の柔軟性を生かすことができます。
市場変化に素早く対応し、競争力を維持・向上させるために、革新を推進することは中小企業にとっても重要です。
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