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目標の領域②!市場における地位

現代社会は急速に変化し、ビジネス環境も激しく競争が激化しています。企業が成功し続けるためには、市場での地位を確立し、競争力を維持・向上させることが不可欠です。そのためには、占拠率という概念が重要な役割を果たします。

占拠率は、ある商品や企業が特定の市場でどれだけのシェアを持っているかを示す指標であり、競争環境を正確に理解し、戦略を立てる際の重要な情報源となります。占拠率を高めることは、売上げを増やし、企業の成長を支える要因と言えます。

一方で、占拠率が低下すると、競争力が低下し、経済的な困難に直面するリスクが高まります。限界生産者としての立場に追い込まれ、価格競争や市場の変動に対処する難しさが増します。したがって、占拠率を維持・向上させることは、企業の生存と成長にとって至上の課題となります。

この文書では、占拠率の重要性、占拠率の変動が企業に及ぼす影響、そして適切な戦略を展開するためのアプローチについて探求していきます。企業経営者や戦略立案者にとって、占拠率を的確に理解し、適切に対処する能力は、競争の激化した現代ビジネスにおいて不可欠です。

目次

市場における地位

占拠率と占有率

一口にいうと「占拠率」のことである。占拠率とは、ある商品が業界の総売上げに占める比率のことである。

似たような言葉に「占有率」というのがある。これは、ある会社の売上げが、その業界に占める比率である。

意味に多少の違いはあっても、考え方はまったく同じなので、以下は「占拠率」一本で筆を進めてゆくことにする厳密な意味では不備であるが、あらかじめご了承を願うこととする。

「わが社の売上げは伸びている。だからわが社は成長している」という考え方は間違っているのであることを、まずわれわれは知らなければならない。

というのは、売上げが伸びても、それが業界全体の伸びよりも低ければ、占拠率は下がっているのである。

それを、売上げの伸びに目がくらんで、占拠率の低下に気づかないのは危険である。というのは、占拠率こそ会社の死活問題だからである。

限界生産者について

占拠率が下がってくると、業界における地位がしだいに下がってくる。

ある割合以下の占拠率となった企業を、限界生産者(限界商品)という。

何パーセント以下になったら限界生産者というかはきまっていない。業種により、業態により、地域により違いがある。

しかし、いずれの場合でも、あるパーセンテージ以下は限界生産者なのである。筆者は一般的な基準として一〇パーセントを用いている。

限界生産者になると、まず第一に、商品価格の自主性を失って、優位にある同業者の価格政策にふりまわされるようになる。

つぎに、いろいろな変動に対する抵抗力が弱くなる。

たとえば不景気になると、販売業者は在庫品の切りつめをはじめる。まず買入れを中止するのは、限界生産者の商品である。こうなると限界生産者の売上げは、末端需要の減少以上に低下する。

当然のこととして、収益は極度に悪化し、市場活動さえ思うようにできなくなる。これが売上げをさらに低下させる、という悪循環をくり返すのである。

反対に景気が回復していっても、販売業者はまず大規模なメーカーの商品の仕入れを増加し、限界生産者は後回しになる。

このようにして、不景気を経験するたびに、優位の企業と限界生産者の格差は開いてゆく。そして、限界生産者の行く先は破綻なのである。

不景気以外の変動によっても、限界生産者はつぶれてゆく。

たとえば、マスター万年筆である。マスター万年筆倒産の原因は万年筆の自由化である。

万年筆の自由化によって、モンブランやシェーファーというような有名商品が続々と輸入された。しかし、デパートや文房具店の陳列ケースの大きさは変わらない。

そこで、販売業者はマスター万年筆などの限界生産者の商品を取り除いて場所をつくり、そこにモンブランやシェーファーをならべたのである。

こうして、マスター万年筆は売れなくなり、倒産してしまったのである。

ランチェスターの法則

この間の事情を法則化したのが、「ランチェスターの法則」である。いわく、「企業の危険度は、企業規模の二乗に逆比例する」。

つまり、企業規模が半分になると、危険度は四倍になるということなのだ。強者有利の法則なのだ。

戦後、どの業界でも業者が乱立した。それがしだいに淘汰され、寡占化が進んできたのはすでにご存じであろう。

これが、ランチェスターの法則の実証である。そして、いまもなお、寡占化は進んでいるのである。

中小企業の経営者は、占拠率についてあまり考えない人が多い。自社製品の場合には、業界全体の数字がつかみにくい、ということもある。

加工業であれば、それは自分の会社で売るのでなくて、親企業が買ってくれるということもある。

しかし、本当の理由は、経営者が占拠率に関する認識が低いところにある。ここに、中小企業の弱さの重大原因の一つがあるのだ。

占拠率への認識があれば、「マイペースでゆく」というようなのん気なことはいっておられるものではないし、「適正規模は何人ぐらいでしょうか」というような、ピントはずれの質問は出ないはずである。

加工業だからといって、安心しているわけにはいかないのである。加工業の場合に問題なのは、親企業なのである。

親企業が限界生産者か、そうでないまでも、業界のトップクラスでない場合には、遠からず限界生産者に転落するかもしれないことを考えたならば、ノホホンと構えているわけにはいかないのである。

親企業の運命が自分の会社の業績に重大な影響があるのだ。最悪の場合には、親企業とムリ心中させられるかもしれないのである。

だから、占拠率の認識をもてば、たとえ業界の正確な数字はつかめないまでも、なんとかして、大ざっぱな推定数字をつかむことに努力するはずである。またその努力は、かなり実るものでもあるのだ。

そして、そこからわが社の地位を知り、「このままでいいのか」ということを考えなければならないのである。

いかなる場合にも、占拠率が下がるということは倒産に通ずるのだ。大企業ほど、また優秀な経営者ほど占拠率を重視する。

昭和四〇年に起こった「住金問題」(不況対策として鉄鋼の生産調整を行ったときに、住友金属の日向方齊社長が横車を押した事件)の本質は、たんなる売上高というよりは、占拠率の争いなのである。

当時の業界の大勢は、「前年後期」の実績を基準とするというのに対して、日向氏は「今年の前期」の実績を基準にせよ、というのだ。

後発メーカーである住金は、占拠率向上のために、社運をかけて和歌山製鉄所の大拡張を行い、急速に占拠率を向上させていたその最中に行われた生産調整であったために、住金の占拠率は、「今年の前半期」のほうが相当高かったのである。

そこで、住金とそれ以外のメーカーとの占拠率争いが正面衝突したのである。

住金としたならば、業界の大勢の意見に従ったなら、せっかく手に入れた占拠率を半年も後退させるということは、だれが何といっても、承服するわけにはいかなかったのである。

日向氏は、どのような非難を八方から浴びようと、社長として、あれ以外の行動はとれなかったのである。

鉄鋼業界では、かつて、川崎製鉄の千葉製鉄所の建設にからんで、当時の社長西山弥太郎氏と一万田尚登日銀総裁の間に争いがあり、一万田総裁をして、「千葉にペンペン草を生やしてやる」とまで激怒させたことがあった。

これも後発メーカーの川鉄の必死の占拠率向上政策がその本質なのである。

鉄鋼業界のみならず、家庭電気業界でも、自動車業界でも、その他セメント、食品など、あらゆる業界の設備競争も、その本質は占拠率争いなのである。

この競争に負けた企業は、消え去るしかないのであるから、第三者がどのようにそのムダを批判しようと、経営者を非難しようと、それが占拠率争いであるかぎり、後へは引けないのである。死に物ぐるいの占拠率争い以外に、生き残る道はないからである。

例2

小売業界においてもまったく同じである。

デパートはデパート同士で占拠率を争い、ビッグストア(スーパーマーケッ卜の大きくなったもの)はビッグストア同士で、火の出るような占拠率争いをやっている。

それだけではない。デパートとビッグストアの間にも、そして一般の小売商店との間にも、三つどもえ、四つどもえの占拠率争いがくり広げられている。

そして、そこにも「ランチェスターの法則」が働いて、寡占化が進んでいるのである。製造業界も小売業界も、また問屋業界にも、世はまさに「大戦国時代」なのである。

占拠率が下がった場合

自分の会社の中のことにしか関心のない企業人は生きる資格に欠けているのである。

激烈な占拠率争いは、マーケッ卜の変貌、消費者の変化、技術革新などと合成されて成長企業と斜陽企業を生み(斜陽企業とは、占拠率の低下してゆく企業のことである)、さらに成長業界と斜陽業界を生む。

いかなる場合にも、斜陽化は破綻に向かってバク進している姿なのだ。

あなたの会社の占拠率はいくらか、それは上昇しているか下降しているのか。あなたの会社の得意先は成長企業か斜陽企業か。もしも、そこに斜陽の兆候がみえたら一大事である。そのような場合に打つ手は二つしかない。

  1. 占拠率向上策
  2. 斜陽業界または斜陽製品との訣別

一つは占拠率向上策

一つは占拠率向上策であり、もう一つは、斜陽業界または斜陽製品との訣別である。どちらの手が正しいかは、個々のケースによって異なる。

事態を判断し、どのような手を打つか、打たぬかが、あなたの会社の将来をきめるのである。

以上は占拠率低下の危険である。

ところが、「占拠率が高すぎる危険」があることを忘れてはならない。占拠率がある程度以上に高くなると、強敵がないために安心し、その上にあぐらをかいてしまう危険がある。

こうなると、革新的なことは喜ばれず、また顧客へのサービスを忘れてしまう。

かくて顧客の不満はつのってゆき、新しい供給者の出現を望むようになる。そして、いったん新規の競争者が出現したときには、顧客は待ってましたとばかり、これにとびついてしまう。

ある会社の販売部長は、「独占的な商品ほどこれを切りくずすのがやさしい」という意味のことを筆者に語ったのは、この間の事情を物語っているのである。

独占的な企業は、このように新しい競争者にたやすくつけこまれるし、経済変動に対処する能力が弱く、いったん下り坂になると、いっぺんにくずれ去る危険がある。

企業というものは、ある一定の市場地位以下に落ちてもいけないし、一定以上になってもいけないのである。

われわれは、常に市場地位に関心をはらい、市場地位確保のための目標をきめてゆかなければならない。

そこに斜陽の兆候を発見したならば、機を失せず対策をとる必要があるのだ。

つまり市場活動の目標であり、斜陽製品の廃棄の目標であり、あるいは斜陽業界そのものからの脱出の目標なのである。

まとめ

このまとめは、市場における企業の地位や競争に関する重要な概念を説明しています。

まず、市場での地位を評価するために「占拠率」と「占有率」の概念が紹介されています。占拠率は、ある商品の業界全体の売上に対する割合を表し、占有率はある企業の売上が業界全体の売上に占める比率を示します。

占拠率が下がると、企業の地位が低下し、一定の割合以下になると「限界生産者」と呼ばれ、市場での競争力が急速に衰えます。限界生産者は価格競争に巻き込まれやすく、不景気などの変動に弱い傾向があります。このような状況は企業の破綻につながる可能性が高いことが強調されています。

また、ランチェスターの法則に触れ、企業規模と危険度の関係が説明されています。企業規模が半分になると、危険度は四倍になるという法則が示唆され、競争の激化が企業にとっての重要性を強調しています。

さらに、中小企業の経営者が占拠率に対して注意を払う必要があること、特に親企業との関係が影響を及ぼすことが強調されています。

最後に、占拠率が高すぎることも危険で、競争の必要性や顧客サービスの提供を忘れることが指摘されています。企業は市場地位を確保し、市場での変化に適応するための目標を設定し、適切な対策を講じる必要があると締めくくられています。

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