使命感の追求。これが経営者の本道です。しかし、順風満帆にその道を歩くことができればいいのですが、経営というのはそういうわけにはいきません。
特に、昨今、経営者が準備しておかなければいけないことは、突然訪れる会社の危機への対応です。
全てに誠実な仕事を心がけているだけに、常に完全であるべきですが、それでもなお商品や商売、あるいは経営に関する何らかの問題が我々に発生しないとは言い切れません。
あるいは二〇一一年三月十一日に日本で起きた東日本大震災のような災害。そうしたことが、今後世界の我々が商売をしている地域で起きないという保証もありません。
こうしたことに対して想像を避けるのではなく、想定をして、経営者として自分の行動原則を準備しておくことが、使命感を追求する健全な会社を危機から守り抜くためには必要なことだと思います。
以下、私が『柳井正の希望を持とヽこという書籍で、このことに関して記した個所を紹介しますので、参考にして下さい。
私ならば、危機に際して、次のように考え、行動すると昔から決めている。
まずは、経営者として先頭に立つ。何かが起こったら、率先して情報を収集し、できるだけ早く対応策を決断し、具体的な行動に落とし込む。そしてその決断に沿って、各現場のリーダーが権限を持って、刻々と変化する現実に対応していく態勢を整える。この一連の動きを実行できるのは、組織においてはトツプしかいない。
また、従業員や社会に向かってはすぐに第一声を準備する。準備ができ次第、なるべく早く発信する。
可能な限り早く第一声を出すことが大切なのは、企業経営者でも、政治家でも同じだろう。
その際に大事なのが、現実を直視することだ。自分たちにとって不都合で、過酷な現実であっても、それを直視し、受け止める。何をやるかを考えて実行に移す。(中略)何よりも大切なのは情報公開だろう。
発表するのにためらうような厳しい現実であっても、トップ自ら現実を説明すべきだ。ただし、その場合、
「今は厳しい状況だが、いずれはこうしていく」と付け加える。そうして情報をきちんと公開していれば、従業員や世間一般との間に信頼関係ができる。危機に際して、世の中と信頼関係を築くのもトップの役割だ。危機の時ほど、トップの真の資質が問われる。会社が順調な時は誰が経営者でも、そこそこは何とかやっていける。しかし、危機に際してはリーダーが素早く適切な判断を下さないと、致命傷になりかねない。
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