――「理想」「現実」「対外説明用」を分けて考える経営の実践知
部門別の利益計画を立てた後は、「全社としてどのような目標を掲げて進んでいくか」を明確にする必要があります。
このとき、目標を1つに絞る必要はありません。むしろ、目的に応じて複数の目標パターンを持っておくことで、より柔軟で実行力のある経営が可能になります。
本記事では、経営目標を3つのパターンに分けて考える方法をご紹介します。
目次
1. 目標設定は3パターン持つべき理由
経営目標とは、「達成したい数字」であると同時に、「行動の基準」となる数字です。しかし、実際の経営では以下のような複数の視点が混在します。
- 社内で掲げる理想の姿(引っ張るための数字)
- リスクを見越した現実的な下限目標
- 外部説明に使う説明可能な目標値
これらを1つの数字にまとめてしまうと、現場の混乱や信頼性の欠如、過度なプレッシャーにつながることがあります。そこで役立つのが、3パターンの目標設計です。
2. 3つの目標設定パターン
① 願望収支(チャレンジ目標)
- 定義:理想的に到達したいと願う「希望利益額」から逆算した目標
- 特徴:経営者としての本音や野心を反映。各部門にとっては高い挑戦になる。
- 用途:内部向けの長期ビジョン/戦略共有/幹部の牽引指標
- 例:今年は前年比130%、経常利益5,000万円を目指す
これは、「達成したい未来」を引き寄せるための数字です。根拠が多少あいまいでも、「どこに向かって走るか」を明確にするために必要な指標です。
経営者は必ずこの目標にフィックスして行動していかなくてはなりません。そして従業員にもしっかりと伝えるようにしましょう、
②達成最低目標(50%達成ライン?)
- 定義:願望収支の50%程度をベースに設定する“実行可能な現実ライン”
- 特徴:外部環境や内部リソースの制約を織り込んだ保守的シナリオ
- 用途:実行フェーズの基礎ライン/キャッシュフロー管理/ボーナス原資判断など
- 例:前年比105%、経常利益2,500万円を達成できれば及第点
このラインは、「最悪でもここまでは確保する」**という下限の目安です。これを超えることで事業継続性や資金繰りの安定が確保できます。
③ 外部提出用カチカチ予測(昨対ベース)
- 定義:対外向けに説明しやすい、堅実で実績重視の目標値(いわば「安全牌」)
- 特徴:前年比数%増程度の範囲で、対外的に納得感のある数字
- 用途:銀行・金融機関・補助金申請・親会社などへの資料提出時
- 例:昨年比102%、経常利益2,000万円
あくまで“説明用”として設定するこの目標は、「無理がない印象」を与えることで信頼性を確保することを目的とします。なお、経営状態が良好である場合は、②をそのまま提出しても問題ないケースも多いです。
経営状態が悪い場合は、楽観的な数字を出すと、足元見えていないと見られがちなので、注意しましょう。
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