2025年– date –
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落ち目に寄り添える者こそ、本当の仲間
一、原文の引用 「人の心を見んと思はば煩へ」と云ふことあり。日頃は心安く寄合ひ、病気または難儀の時大方にする者は腰抜なり。すべて人の不仕合せの時別けて立入り、見舞、付届仕るべきなり。恩を受け候人には、一生の内疎遠にあるまじきなり。斯様の事... -
恥を隠すは、真の思いやり
一、原文の引用 松平大和殿へ綱茂公そのほか御客夜会、御旗本老人北見久太夫殿相越され、古戦の話これあり。夜更け候てより、給仕の小姓銚子を持ち、つまづき候て、久太夫殿膝に酒を打ち懸け、無興にて赤面致し罷立ち候。余の小姓罷出で、久太夫殿を次の間... -
誤解を恐れるな、卑怯を恐れよ
一、原文と現代語訳(逐語) 原文(聞書第八より) 先年川上お経の内、紺屋町田代辺の者五六人参詣致し、途中にて酒をたべ、時を移し居り申し候。その内、久左衛門被官、宿許へ早く帰らず候て叶はざる事候故、同道人にも断り申し、日の内に罷帰り候。然る... -
最期まで、名に恥じぬ覚悟を貫け
一、原文と逐語訳 原文(聞書第九) 山本神右衛門末期の事神右衛門八十歳にて、病中「うめきさうなる気色」と申し候に付、「うめき候へば気色もよくなる様にこれあるものに候。うめき申され候様に」と申し候へば、「左様にてこれ無く候。山本神右衛門と諸... -
別れの時こそ、魂の誇りを貫け
一、原文と逐語訳 原文(聞書第四) 御気分御差詰めにて、御前様御暇乞にお出でなされ、御枕元に寄らせられ、「さてさて、日出度き御臨終にて候。御一生落度なく弓矢の御働き、国家をお固め、子孫数多お持ち、家督をもお譲り、八十におよび御成就は比類な... -
気は病をも治す ― 生命力は心から生まれる
一、原文と逐語訳 原文(聞書第十一) 病気永引き候へば、気草臥れ、大病になるものなり。斯様の病人は、気を引立て候事肝要に候。祈疇願力にて奇特などこれある時、きほひ出来申し候。常々法号真言など唱へさせ候へば、気転じ病気を忘るるものなり。軍書... -
侮辱は命に値する、誇りを守る一太刀
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第七) 出仕の節、何某右の事を申出し、なぶり候を、抜打に打捨てられ候。この事御詮議になり、「殿中にて粗忽の仕方に候間、切腹仰付けらるべき」旨申上げ候。直茂公聞召され、「人よりなぶられて、だまりて居る... -
人の誇りを折るなかれ、それは命より重い
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第十) 「侍たる者は拷間におよんで死後までの恥と存じ、無き科をも引受け申す事歴然に候。以来侍の拷問無用」と申付けられ候由。 「下々の者は、端不義をも仕るものに候。死罪には及ぶまじき」「この者以後の締り... -
無事のなかに、危機を見る者が真の備えを持つ
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第八) 佐賀表相替る儀はこれなく候へども、不意はただ今の事も相知れず候故、士ども片時も油断仕らずなどと申すものにて候…山本神右衛門は、老後見舞の人に、「世上替る事はこれなきや」と尋ね候に、「無事に御座... -
上を向け。地を見て歩く者に、未来は切り拓けぬ
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第三) 嘆かはしき事は、最早肥前の槍先に弱みが付きたると思はるるなり。其方など心得候て罷在るべく候。往来の人を見るに、大かた上瞼打下ろし、地を見て通るものばかりになりたり。気質がおとなしくなりたる故...