2025年– date –
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任務を受ける心にこそ、その人の器が映る
一、原文(抄出) 吉凶に付、仰渡しなどの時、無言にて引取りたるも、当惑の体に見ゆるなり。能きほどのお請あるべき事なり。前方の覚悟が肝要なり。役など仰付けられ候節、内心に嬉しく思ひ、自慢の心などあれば、そのまま面に顕はるるものなり。数人見及... -
生きながら鬼神となれ ― 忠義を貫く者の覚悟
一、原文(抄出) 今時の奉公人を見るに、いかう低い眼の着け所なり。スリの目遣ひの様なり。大方、身のための欲得か、利発だてか、または少し魂の落着きたる様なれば、身構へをするばかりなり。我が身を主君に奉り、すみやかに死に切つて幽霊になりて、二... -
備えは日常の中にあり ― 治にいて乱を忘れず
一、原文(抄出) 「草軽作り候や。この細工成らざる者は足もたずなり」「一人一升づつの兵糧を袋に入れ、付けさせ候。向より直ちに出陣の仕組なり」「草軽はすべり候。足半よく候となり」「かねて心にかけ用意あるべき事なり。もつとも作り習ひ候はで叶は... -
慢心こそ最大の敵 ― 恵まれぬ時こそ、骨を作れ
一、原文(抄出) 「奉公人の禁物は、何事にて候はんや」と尋ね候へば、大酒・自慢・奢りなるべし。不仕合せの時は気遣いなし。ちと仕合せよき時分、この三箇条あぶなきものなり。人の上を見給へ、やがて乗気さし、自慢・奢りが付きて散々見苦しく候。それ... -
知らぬゆえの誠にこそ、真の信が宿る
一、原文(抄出) 相浦源左衛門儀、初めて御供罷登り、公儀不案内にて、二条御城へ持ち参り、お玄関前まで参り候。棒を当て申すべくと仕り候も、「申上ぐべき仔細御座候」と膝を折り、御状取出し。岡部丹波守殿「鍋島家来にて候はば、我等を見知り申し候や... -
忠義をもって縁を結べ ― 利己を捨てて道を拓く
一、原文(抄出) 御前近き出頭人には親しく仕るべき事なり。我が為にすれば追従なり。何ぞ申上げたき事ある時の階なり。もつともその人忠義の志なき人ならば無用なり。何事も皆主人の御為なり。 二、書き下し文 御前(主君のそば)近くに出仕する者には、... -
渡る前に見極めよ ― 忠義も戦略も時と場を読む
一、原文(抄出) ある出家申され候は、淵瀬も知らぬ川をうかと渡り候ては向へも届かず、用事も済まず、流れ死も仕る事に候。時代の風俗、主君の好嫌をも合点なく、無分別に奉公に乗気などさし候はば、御用にも立たず、身を亡し候事これあるべく候。御意に... -
相手の上をゆくには、別次元からの理を探せ
一、原文と逐語訳 原文: 詮議事または世間の話を聞く時も、その理もつともとばかり思ひて、そのあたりにぐどついては立越えたる理が見えず。人が黒きと云はば黒きはずではなし、白きはずなり、白き理があるべしと、その事の上に理を付けて、案じて見れば... -
勝つために折れる――口論に勝つ“静の戦術”
一、原文と逐語訳 原文: 口論の時心持の事 随分もつともと折れて見せ、向ふに言葉を尽くさせ、勝ちに乗つて過言をする時、弱みを見て取つて返し、思ふほど言ふべし。 (聞書第十一) 現代語訳(逐語): 口論のときの心がけとしては、まず「なるほ... -
淡々と読む力――判断を誤らせぬための“無私”の声
一、原文と逐語訳 原文: 羽室権右衛門目安読み候物語の事権右衛門は、公儀与力にて候を、女房、お春様ヘ乳を上げ申し候に付てお出入仕り、その後相願ひ、御家来に罷成り候。権右衛門話に、公儀御評定所にて目安の読様、節調子なしに、ぬらりと読み申し候...