2025年6月– date –
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最期まで、名に恥じぬ覚悟を貫け
一、原文と逐語訳 原文(聞書第九) 山本神右衛門末期の事神右衛門八十歳にて、病中「うめきさうなる気色」と申し候に付、「うめき候へば気色もよくなる様にこれあるものに候。うめき申され候様に」と申し候へば、「左様にてこれ無く候。山本神右衛門と諸... -
別れの時こそ、魂の誇りを貫け
一、原文と逐語訳 原文(聞書第四) 御気分御差詰めにて、御前様御暇乞にお出でなされ、御枕元に寄らせられ、「さてさて、日出度き御臨終にて候。御一生落度なく弓矢の御働き、国家をお固め、子孫数多お持ち、家督をもお譲り、八十におよび御成就は比類な... -
気は病をも治す ― 生命力は心から生まれる
一、原文と逐語訳 原文(聞書第十一) 病気永引き候へば、気草臥れ、大病になるものなり。斯様の病人は、気を引立て候事肝要に候。祈疇願力にて奇特などこれある時、きほひ出来申し候。常々法号真言など唱へさせ候へば、気転じ病気を忘るるものなり。軍書... -
侮辱は命に値する、誇りを守る一太刀
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第七) 出仕の節、何某右の事を申出し、なぶり候を、抜打に打捨てられ候。この事御詮議になり、「殿中にて粗忽の仕方に候間、切腹仰付けらるべき」旨申上げ候。直茂公聞召され、「人よりなぶられて、だまりて居る... -
人の誇りを折るなかれ、それは命より重い
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第十) 「侍たる者は拷間におよんで死後までの恥と存じ、無き科をも引受け申す事歴然に候。以来侍の拷問無用」と申付けられ候由。 「下々の者は、端不義をも仕るものに候。死罪には及ぶまじき」「この者以後の締り... -
無事のなかに、危機を見る者が真の備えを持つ
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第八) 佐賀表相替る儀はこれなく候へども、不意はただ今の事も相知れず候故、士ども片時も油断仕らずなどと申すものにて候…山本神右衛門は、老後見舞の人に、「世上替る事はこれなきや」と尋ね候に、「無事に御座... -
上を向け。地を見て歩く者に、未来は切り拓けぬ
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第三) 嘆かはしき事は、最早肥前の槍先に弱みが付きたると思はるるなり。其方など心得候て罷在るべく候。往来の人を見るに、大かた上瞼打下ろし、地を見て通るものばかりになりたり。気質がおとなしくなりたる故... -
立ち上がる者が、先頭を行く
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第十一) 人は立ち上る所なければ物にならず。人より頭を踏まれ、ぐづぐづとして一生を果すは回惜しき事なり。誠に夢の間なるに、はつきりとして死にたきことぞかし。ここに眼の付く者稀なり。…「彼も人なり、鬼神... -
礼に背かず、権威に媚びず、己の実をもって貫け
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第七) 「権左衛門、成るまじき」と御申し候へば、「さらば一槍仕るべし」と申し、竹刀おつ取り、山城殿を、馬より、さかさまに突落し申し候。…「正月初に、馬上武者の首二つ取りたり。気味よし気味よし」と申して... -
窮鳥を守る覚悟に、武士の一分が宿る
一、原文と現代語訳(逐語) 原文抄(聞書第八) この度の駆込者の儀は、鍋島の家に懸り申す事に候。助右衛門を人と存じ、相頼み候を、我が身難儀に及び候とて差出し候ては、侍の一分立ち申さず候。某一命に替へ申す覚悟にて候。大炊頭様御意と候ても、こ...