2025年5月– date –
-
習慣は、若き日の己をつくる
人は、幼き頃より青年期に至るまで、極めて習慣に染まりやすい。 この時期につけた癖は、やがて性格となり、人格となり、そのまま人生の基調となっていく。 怠ける癖、怒りを抑えぬ癖、虚飾に流れる癖、己を省みぬ癖――いずれも若き日のうちに芽を出し、気... -
道理にかなえば、助けは自然と集まる
人は、頼まれて動くばかりではない。道理が通っていれば、誰に言われずとも手を差し伸べたくなるものだ。 世話を焼くとは、義務や負担ではない。そこに正しさや誠意があると感じれば、人は自ずと力を貸したくなる。 反対に、どれほど口で美辞麗句を並べて... -
己を立てて、世を進めよ
人はまず、一身を立てねばならぬ。食を得、家を持ち、学び、技を磨き、自立した人間として世に処することは、生きる者の第一の務めである。 しかし、それに止まってはならぬ。己一人が富み、己一人が満足していても、世の中が荒んでおれば、その幸福は長く... -
言葉は福ともなり、禍ともなる
言葉とは、不思議なものである。ひと言が人を励まし、またひと言が人を傷つける。口から発するものにこそ、福もあり、禍もある。 余のごとき、多くを語る者は、往々にして禍を招くこともある。不用意な発言、過度の饒舌は、ときに人の信を失い、己を損なう... -
意志・知恵・情愛、三つの力を調和せよ
人は何をもって立つか。それは、意志の強さにある。どのような困難にもくじけず、自らの志を貫こうとする力。これなくして、大事は成らぬ。 しかし、意志のみでは独断に陥る。熱情が空回りし、判断を誤る。ゆえに、そこには聡明なる知恵が要る。冷静に物を... -
私を離れ、公のために道を起こせ
かつて私は、ただ金を儲けたいがために実業に入ったのではない。国家のために商工業の発達を図りたい――その一念が起こり、爰に初めて、実業界の人になろうとの決心がついた。 実業とは、商いである。商いとは、ただ物を売り買いすることではない。人と人、... -
勇気は鍛えねば育たぬ、身と心に力を養え
正義を貫くには、勇気が要る。しかしその勇気は、一朝一夕に身につくものではない。 声高に正しさを唱えるだけでは、いざというときにその言葉は空しくなる。正義とは、行う力をもってこそ意味を持つ。 その力を支えるものが、日頃の鍛錬である。 まず、肉... -
学問は地図、実地は人生の道なり
学ぶとは、道を知ることである。だが、知ることと、歩くこととは別である。 学問は、ちょうど地図のようなものだ。山がどこにあり、川がどこを流れ、道がどのように交差するかを教えてくれる。見ているだけで、あたかも全てを知ったような気になる。 しか... -
己を離れて他を見よ、視野に深さを持て
人はしばしば、己の立場に固執する。目の前にある現実を、自分の視点のみで断じ、己にとっての損得、利害、都合ばかりを計ろうとする。 しかし、物事には常に、他の立場がある。 自分が正しいと思う主張も、他者にとっては誤解となり、害となることがある... -
和して濁さず、円満にして骨を失うなかれ
人は穏やかであることが望ましい。争わず、怒らず、円満に人と交わる姿は、処世の徳として多くの称賛を集める。 だが、円満さを過ぎれば、節を失う。ただ柔らかいだけでは、風にも折れる芒のように、人としての芯と品格を保つことはできない。 和やかさと...