2025年5月– date –
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儀礼よりも、心から尽くすこと
立派に見せることより、誠を尽くすことが大切だ 孔子の最愛の弟子・顔淵(がんえん)が若くして世を去ったとき、父の顔路(がんろ)は孔子に願い出た。「先生の車を譲っていただけませんか。それを売って、息子のために立派な外棺を買いたいのです」 孔子... -
学を愛した者、早逝にして今はなし
真に学を好む者――その名は顔回 魯の大夫・季康子(きこうし)が孔子にたずねた。「あなたの弟子の中で、誰が最も学問を好みましたか?」 孔子は、やや寂しげにこう答えた。「顔回(がんかい)という者がいて、学を心から愛しておりました。ですが、残念な... -
言葉を慎む者は、信頼に値する
一度出た言葉は戻せない、だからこそ沈黙に徳が宿る 孔子の弟子・南容(なんよう)は、いつも詩経の一節――「白圭(はくけい)」の詩を口ずさんでいた。そこにはこう詠われている。「玉なら欠けても磨き直せるが、人の言葉は一度口にすれば、取り返しがつか... -
家族への敬いは、沈黙にあらわれる
身内を語らず、身内を貶さず――それが真の孝行 孔子は、弟子の閔子騫(びんしけん)についてこう称えた。「なんと孝行な者だろう。彼の父母や兄弟を悪く言う者は誰もいない――なぜなら、彼自身が決して身内の悪口を言わないからだ」 人はつい、家族のことで... -
理解が速すぎて、問いがいらない弟子
説明不要の理解力、それもまた師の喜び 孔子は、愛弟子・顔回(がんかい)のことを語るとき、誇らしさと少しの寂しさをにじませた。「顔回は私の学問研究を助けるようなタイプではない。なぜなら、私の話すことをすべて即座に理解してしまうからだ」 教師... -
255 心と才を備えし、孔子の十弟子たち
徳・言葉・政治・文学、それぞれの道に光を放った人々 晩年の孔子が思い出すのは、かつての苦難を共にした優れた門弟たちだった。陳と蔡の間で国難に遭い、食糧も尽きるほどの危機に見舞われた旅路――そこに随行した弟子たちの多くは、今や世を去り、官に仕... -
洗練よりも、原点にあるまごころを
形式よりも、心が宿る素朴さを選ぶ 孔子は、礼儀や音楽(礼楽)が時代とともに洗練されていく中で、古き素朴な形にこそ本質が宿ると説いた。 古代の礼楽は、粗削りながらも人のまごころがこもっていた。時代が下るにつれ、洗練された形式美が加わり、見た... -
進むにも退くにも、時を見極めて
── 焦らず、遅れず、最もふさわしい時を選ぶ ある日、孔子が門人たちと山道を歩いていたときのこと。山の橋にとまっていた一羽の雌きじが、ふと気配を感じて飛び立ち、しばらく舞ってから、安全だと判断して再び橋に降り立った。それを見て、孔子は感嘆し... -
静かな所作に、心の落ち着きが宿る
── 動作一つにも、品位と節度を込めて 孔子は、車に乗るときでさえ、礼を欠くことはなかった。乗車の際には、必ずまっすぐに立ち、両手で吊り革(綏)をしっかりと握り、落ち着いてゆっくりと乗られた。急いだり、雑な動きをすることなく、その一連の動作... -
くつろぎの中にも礼節を忘れない
── 日々の所作に、心の品格があらわれる 孔子は、どんなに私的でくつろいだ場面であっても、常に礼を忘れずに生活していた。眠るときでさえ、亡骸のように手足を伸ばして仰向けに寝る「尸(しかばね)」の姿勢は避けていた。家で過ごすときには、自然体で...