2025年5月– date –
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一言が国を興し、一言が国を滅ぼす
――言葉の力を侮るなかれ 魯の定公(ていこう)が孔子に問うた――「たった一言で国を盛り立てるような言葉はあるか?」 孔子は、「言葉はそこまで単純なものではない」と前置きしつつも、世に伝わるある格言を引用して答えた。「君たることは難しく、臣たる... -
公(おおやけ)と私(わたくし)を混同するな
――政治は国家のものであり、一族のものではない 冉子(ぜんし/冉有)が季氏(きし)の朝廷から戻ってきたとき、孔子は「なぜこんなに遅くなったのか」とたずねた。冉子は「政(まつりごと/政治的な用事)がありました」と答える。 しかし孔子は即座に見... -
己を正せぬ者に、人は導けない
――政治の原点は、自分自身にある 孔子は、為政者にとって最も基本となる資質を「身を正すこと」だと説いた。自分自身の行いが正しければ、政治を行うことなど難しいことではない。しかし、自分を律することすらできなければ、どうして他人を導き、世を治め... -
本当に良い政治も、花開くには三十年かかる
――徳を広めるには、時と根気が要る 孔子は、たとえ天から命を受けた理想の王――つまり「王者(おうじゃ)」――が現れたとしても、その仁(じん)、すなわち人への思いやりや道徳を社会に行き渡らせるには「一世代」――すなわち三十年の時間が必要だと語った。... -
善なる政治が続けば、刑罰はいらなくなる
――徳による統治は、時間をかけて社会を変える 孔子は、古くから伝わる言葉を引き合いに出して、深い賛同の意を示した。「たとえ高度な学問や能力がなくとも、“善人”が百年にわたって政治を行えば、人を殺さなければならないような大罪――つまり重罪――をこの... -
志ある者に、機会を与えよ
――任されれば応える、覚悟と自負の言葉 孔子は、理想の政治を実現できるという確かな自負と意欲を持っていた。「もし私に政治を任せてくれる者がいれば――」一年(期月)あればすでに変化をもたらし、三年あれば成果を形にしてみせる、と語る。 これは単な... -
数より質へ、豊かさより徳へ
――民を育む真の政治とは 孔子が衛(えい)の国を訪れたとき、弟子の冉有(ぜんゆう)が馬車を御して供をした。町の様子を見た孔子は、「人が多いな」と感想を漏らす。冉有が「はい、人口は多いようですが、さらに何をすべきでしょうか」と尋ねると、孔子は... -
「ちょうどよい」と思える心が、人生を豊かにする
――満足を知る者こそ、真の豊かさを得る 孔子は、衛(えい)の公子荊(こうしけい)を評して、「善く家に居る者」――つまり、自分の暮らしを上手に整え、満ち足りて生きる人物だと賞賛した。 家を持ったばかりで財産が乏しい頃、公子荊は「まあまあ形にはな... -
血を分けた国、似た者同士の政治の行方
――出自を同じくする者は、歩みも似通う 孔子は、魯(ろ)と衛(えい)という二つの国を「兄弟のような国」と呼んだ。魯の始祖は周公旦(しゅうこうたん)、衛の始祖はその弟・康叔(こうしゅく)。ともに周王朝の名族に連なる兄弟であり、両国は共に礼を重... -
行動こそが、最も雄弁な命令である
――リーダーの徳が、人を動かす 孔子は、リーダーシップの根本は「自らの在り方」にあると説いた。為政者が身を正しく保てば、言葉を尽くさずとも人は自然と従う。逆に、自分自身の行いが正しくなければ、いくら命令を重ねても人はついてこない。 徳のない...