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08中期経営計画のまとめと発表

目次

▼(1)発表と部門へのブレークダウン(目標と方策)と責任体制

中期経営計画は会社の重要な計画であるため、「経営者層での共有管理者層での理解と共有一般社員層での理解と共有」という3階層に分けて捉えていく必要があります(図表5-1)。経営者層での共有は比較的容易ですが、管理者層・一般社員層への共有・浸透については、伝わりやすい工夫と仕組みが必要です。

①社内向け発表の目次「中期経営計画の基礎」01(4)(図表0-6)で紹介した10大目次は、主に社外向け発表を前提とした目次例ですので、社内向けに発表する際には、少しアレンジして図表5-2のような目次構成で活動計画等も具体的に紹介するとよいでしょう。

②発表方法中期経営計画の発表方法は、図表5-3に示すように、対象者によって発表の場と発表内容を分ける必要があります。

部長クラスや課長クラスに対しては、幹部会や部課長会などの場を通じて、全社のビジョンと戦略だけでなく、担当する事業部や部課の取り組むべき目標や課題も示す必要があります。熱心な会社では、一般社員に対しても「第〇回中期経営計画書」のようなタイトルで冊子化して配布・説明するような会社もあります。著者のこれまでの調査によれば、中期経営計画を策定し、社内発表している企業においても、思いのほか社内に計画が浸透していないようです。実行してもらうことを考えたら、作った後の社内浸透にも力を入れるべきだと考えます。③課題・方策のブレークダウン中期経営計画が、活動計画・計数計画・KPIという形でまとめ上がったら、その取り組み課題や方策を、部門や部・課にブレークダウンしていく必要があります(図表5-4)。

中期経営計画で取り組むべき課題を一般的に「テーマ」と呼んでいますが、テーマ別の責任部署や責任者を設定したり、年度の目標に落とし込んだり、課長クラスや一般社員層をテーマ別のプロジェクトメンバーにアサイン(指名)したりします。

▼(2)グループ・個人へのブレークダウンと目標管理

目標管理は、「MBO」(ManagementByObjectives)といい、ピーター・F・ドラッカーが提唱し、外資系企業から日本企業に広まりました。もともとの考え方は、社員一人ひとりにまで目標を持たせ、やる気を出させようというもので、日本では主に人事部が管掌し、半年に一度程度の頻度で自ら目標を立て、上司の承認を得て遂行し、半年経ったらレビューを行っています。会社によっては、個人別の達成度に応じてボーナスなどに差をつけるところもあります。人事部管掌という背景から、MBOは経営企画管掌の中期経営計画とは連動性が薄いケースが多く見受けられますが、経営企画と人事が連携を取り、中期経営計画の目標達成のために個人のMBOと中期経営計画の取り組み課題とを紐付けることができれば、非常にパワフルな仕組みとなります(図表5-5)。

ここで留意すべき点は、中期経営計画の取り組み課題は粒度が大きい傾向にあるため、個人に落とすにはかなりのブレークダウンが必要だということです。ある商社で中計課題とMBOの紐付けを実施したことがありますが、管理職・担当者に一緒に一堂に会してもらい、中計課題の個人目標までのブレークダウンの仕方を、ワークショップ形式できめ細かく指導する必要がありました。実際に慣れるまでは、文書1枚での展開は難しいでしょう。

▼(3)実現イメージの創出と伝達

中期経営計画の発表会を実施しても、しばらくすると忘れられてしまうことがよくあります。その原因の一つに、「内容が印象に残りにくい」ということがあります。経営企画などの立場からすると、会社にとって重要なことで、自分たちが一生懸命まとめ上げ、対外・対内的な発表会も行っているので、中計の存在は非常に重要・重大なものと思っています。ところが、それを受けとめている一般社員にとっては、「経営目標」や「戦略」といった、普段の業務とは直接的な関わりがないことが紹介されますので、半ば上の空です。ですから、すぐに忘れられてしまうのです。一般的に、物事を人の記憶に残りやすい順に挙げると「感情〉イメージ〉数字〉言葉」となります。印象に残るものにしたいと思えば、感情やイメージに訴える必要がありますが、多くの中期経営計画発表資料は、数字と言葉だけなので、かなり印象に残りにくいのです。ビジョン設定パートでもご紹介しましたが、優れた経営ビジョンの条件には「イメージ可能性」と「共感性」がありました。この2つを付与するために著者が行っているのが、「ビジョン・ストーリー」作りという方法です。例えば、プロジェクトメンバーで10年後の長期ビジョンを検討し、その描いたイメージをビジョン・ストーリーの形で記述するのです。そして、その中から2つか3つ、一般社員にも将来のイメージが湧くようなストーリーを抽出し、経営計画発表会で紹介します。マンガのストーリーの中でも、ステップ1の「大和貿易の第1回ワークショップ」で、代表的なビジョン・ストーリーが紹介される場面があったかと思います。私が中期経営計画の策定指導を行う場合は、ビジョン・ストーリーを社員の皆さんに書いてもらい、そのうちの代表作を経営計画とともに発表してもらっています。経営者はもとより、一般社員にも、「イメージが湧きやすい」と好評です。ビジョン・ストーリーは、このような発表会の場だけでなく、ビジョン・ストーリー集として冊子にしたり、代表者の朗読録音によりCDなどに焼きつけて配布する方法があります。人は、実現イメージが湧くとついつい実現したくなるものです。配布してみたらストーリー通りに物事を進めようとしたり、一風変わった例では、自分の特技である作曲ノウハウを活かして「社歌」(案)を作曲してくる人等もいました。皆さんの会社でも、ぜひ取り組んでみていただければと思います。

▼(4)バランスト・スコアカードを使ったフォロー方法

「バランスト・スコアカード」とは、管理会計の研究者であるロバート・キャプランらによって提唱された管理方法で、図表5-6に示すように①財務的視点、②顧客の視点、③社内ビジネス・プロセスの視点、④学習と成長の視点という4つの視点からなっています。

経営者の通知表というのは、財務の視点で測られる利益額や利益率ですが、大きな会社になると業務が分業で行われているため、自分たちの仕事・業務が結果としてどれだけ売上高や利益に貢献しているかということがわかりにくくなっています。このため、この4つの視点をうまく使って、「どのようにしたら売上高や利益を増やせるのか」について関係者が集まって検討します。そうすることで業務と業績の因果関係がわかり、業績を上げるためにはどのようなことに取り組まなければいけないかがわかってきます。そのことを、因果関係を表す戦略マップとその戦略の遂行度を表すKPI(重要業績評価指標)に表現し、戦略共有や経営管理を行っていくのです。KPIは、前に述べた手法でも設定可能ですが、戦略マップを作成することで業績との因果関係がより明確になり、理解度が高まります。KPIと合わせて活用してみるのもよいでしょう。

▼(5)中期経営計画の内容別浸透レベル

自社の中期経営計画がどの程度社内に浸透しているかということを把握するのに、図表5-7のようなチェックシートを活用してみると、簡単にわかります。

どの階層や部門で浸透度が低いのかが一見して確認できるため、「浸透度合いを高めるために全社的に行わなければならないことは何か」あるいは「部門別や階層別に取り組まなければならないことは何か」などがつかみやすくなります。さて、あなたの会社では、どんな結果になるでしょうか?

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