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S商事

S商事の経営改善のプロセスは、社長が自らの方針転換と顧客理解を深めたことで大きく前進しました。特に婚礼家具にフォーカスし、シンプルで集中的な戦略を取り入れたことで、事業の方向性が明確化し、利益の増加につながりました。以下にS商事の転機をまとめます。

改革と成功の要因

  1. 商品構成の見直し:
  • 社長が顧客からのフィードバックを受け、品種の数を減らし、婚礼家具を中心に据えた構成に戻しました。この変更によって、S商事はアイテムの過剰な多様化から脱却し、主力商品に集中する体制を築きました。
  1. 販売方針の確立と顧客訪問の重視:
  • 社長は一流店や重要顧客の訪問に力を入れ、「コンチワ、サヨナラ」方式で定期的に訪問する計画的な訪問戦略を導入しました。これにより、顧客との信頼関係が再構築され、販売力が向上しました。
  1. 販売データの活用と店舗戦略:
  • S商事は、月次の売上ベストテン表を作成し、顧客に提供することで、販売データを通じた販売支援を行いました。これが顧客からも信頼を得る戦略として成功し、店舗での販売促進に大きく貢献しました。
  1. 在庫の管理と展示場の活用:
  • 在庫の管理を徹底し、展示場を用いた販売支援を行うことで、小売店の顧客への訴求力を高めました。展示場活用が浸透した3年目以降は、顧客が直接展示場を訪れるようになり、売上が急増しました。
  1. 経営理念の再構築:
  • 婚礼家具を軸とした事業構造の明確化、商品の中級グレード化、スクラップ・アンド・ビルド戦略を通じた商品整理により、経営基盤を強化しました。

長期的な視野と忍耐の成果

S商事は、コンサルタントの指導をもとに、市場と顧客の声に耳を傾けた結果、事業体制を大幅に改善しました。社長が顧客のフィードバックに基づき自らの経営判断を下す姿勢を持つことで、会社は地域でのナンバーワンの地位を確立し、成長を続けることができました。この事例は、顧客理解と現場の情報収集が事業の成長に不可欠であることを示しています。

品種過多である。たった二十名余りの会社で、木製家具の殆んどにわたった品種構成である。これでも足りないと思い、鋼製事務用什器類を扱わなければダメだというのである。

社長の、この方針が赤字の根本原因である、というのが私の見解である。こんな零細企業で、何もかも揃えているということは、何も揃っていないということだからだ。

組織図を見せていただくと、それは中堅企業クラスの、それも悪い見本みたいである。

これは、コンサルタントの勧告をもとにして作ったものだが、コンサルタントのいうには、まず何をおいても組織を確立し、指令系統の統一と責任権限の明確化を行ない、さらに社員の能力を活用するために権限を委譲しなければならない。また、事務を近代化し、就業規則と賃金規則を完備しなければならない、ということだとのことである。

特に重要なのは、社員の能力の活用である。そのために、「販売促進委員会」を組織し、社員の自主的で自由な発想と活動を行なわせることである。

そのためには、販売促進委員会には、社長はなるべく出席しないようにしたほうがよい、というのである。事業を知らない社員に事業を任せてしまったのである。

こういうのを、「倒産直行体勢」という。お客様のことなど全く考えてはいないからだ。その上、全くの経営者不在である。販売促進委員会のやったことといえば、商品の品種をやたらと増やすことと、新規得意先の開拓であった。

何もかも間違っているのだ。私は、お手伝いの条件として、今の組織を廃止し、それ以前の姿に戻すこと、販売促進委員会を解散し、社長が陣頭指揮をすることの二つであった。

その上で、社長にお願いしたことの第一は、何をおいても社長自らのお客様訪問であった。社長になって以来の穴熊だったからだ。

第二には、商品の売上高ABC分析と、得意先売上高ABC分析である。商品の品種別売上高ABC分析の結果は、二〇品種のうち、上位一〇品種で売上高の九五%を占めていた。

下位の一〇品種は、とりあえず仕入を中止し、アイテムを検討する。上位一〇品種は、品種毎にアイテム別売上高ABC分析表を作成。下位三%は切捨てを検討する。これで、 一八〇〇アイテムあったものが、七〇〇アイテム程に減った。

次には得意先別売上高ABC分析を行なって下位二%は間答無用切捨、次いで年商三〇万円以下を六カ月以内に切捨てることと検討する、ということにした。

社長がこういうことを即決で決定したのは、私に勧められたお得意先訪間で、多くのお客様に叱られたからである。

第一に気づいたことは、セールスマンは社長が訪問してほしいと思っていた大型店、一流店には殆んど訪間を行なっておらず、三流店、三流店に多く訪問する他に、ニチャン店(じいちゃんとばあちゃんだけの店)にせっせと通っていたことが分って唖然とした。

第二には、お客様のお叱り

近代化、権限委譲の誤りを思い知らされたのである。だから、私の勧告の意味がよく分ったから即決ができたのである。

販売は得意先の計画訪間に切換えた。格付に応じた訪問回数をきめ、「コンチワ、サヨナラ」方式による訪間である。いままでジリ貧を続けていた売上げがジリジリと上り始めた。

商品のグレードは、社員にまかせていた時には裾物、つまり安物に力を入れていたのを、品種毎に最低仕入価格を二〜三割あげて中級化を一歩進めた。

気がついてみたら、前社長の時と同様の品種構成になっていた。ここで、更に商品構成の基本方針をきめた。

1 商品は箱物に限定し、足物は一切扱わない。

2 商品は婚礼家具を中核とし、品種は絞って、 一つ一つの品種のアイテムを多くする。

3 商品のグレードは中級品とし、様子をみながら長期的に一段の高級化を実現してゆく。

というものであった。これが、小型企業が市場の主導権を握り、占有率を上げるための商品戦略である。

間違った道に踏みこんで迷いに迷った末に、もとの道に戻ってきたのである。こうなると強い。S社長はこの道一途に自信をもって進んでいった。

「石の上にも二年」である。忍耐は立派に報われたのである。この頃から、私のコンサルティングは間隔が長くなっていった。

これが小企業の真骨項であり、このナンバーワン商品を核としてナンバーワンを確保しながら一つまた一つとナンバーワン商品を育ててゆくことこそ、最も効果的な市場戦略なので一凌ど

それは、毎月一回お客様におくばりする「月次品種別売上高ベストテン表」であった。

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