MBOSは理想論?第2章から第4章まで、チャレンジ目標のPlan→Do→Seeを意欲的、かつ自律的に展開するための具体的な方法や留意点を述べてきた。それは筆者の体験をベースにしたMBOSであり、一般的に行われている、いわゆる目標管理とは趣を異にするものである。そのため、「本当にこんなことができるのだろうか?」という疑心暗鬼を持っている読者もいるのではなかろうか。実はその昔、筆者もそうだった。1991年の始め頃、あるディスカッションの席上で、筆者は生意気にも「MBOSは理想論なのでは?」と発言した。人と仕事をうまく結びつけるためにはチャレンジ目標が必要であり、目標設定や達成活動に際してはセルフ・コントロールの力を最大限に引き出すこと。それがMBOSのコンセプトであり、その文言は以前から知っていた。しかし、セルフ・コントロールの開発がどうしても腑に落ちない。人間が潜在的に持っている意欲や自律性を引き出して、苦しさの伴うチャレンジ目標を粘り強く追いかけること。理想としてはもっともだが、本当にそんなことはできるのか。あまりにも、綺麗ごと過ぎるのではないか。世の中には、限りなく他律的な生き方をしている人もいるようだ。自分自身にしても、威勢よくチャレンジテーマを掲げたものの、達成の苦しさゆえに挫折して、易きに流れた過去がある。やはり、セルフ・コントロールは鉄人のみが持つ力。そんな思いにとらわれて、「MBOSは理想論……」と口走ったのだ。
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