▼(7)現状分析先行型かビジョン先行型か
将来像や目標を設定する方法に、「現状分析先行型アプローチ」と「ビジョン先行型アプローチ」の2つの方法があります(図表0-10)。
現状分析先行型アプローチは「フォーキャスティング型アプローチ」ともいいますが、最初に現状を分析し、その問題点や課題を抽出し、解決策を検討した上で、解決策を実行したらどこまでたどり着けるかという将来像や目標を設定します。
この発想方法は誰でもできる発想方法なので、理解はしやすいのですが、目標が低くなったり、夢のない将来像となりやすいという難点があります。
一方、ビジョン先行型アプローチは「バックキャスティング型アプローチ」ともいいますが、最初に望ましい将来像や目標を検討・設定するところに大きな違いがあります。
最初に目標設定した上で現状に戻り、そのギャップを分析し、どうしたらそのギャップを埋められるかを検討します。
この発想方法の特徴は、ありたい姿先行で高い目標設定や大きな夢が描けるということが挙げられますが、単なる願望や実現方法の見つからない目標の場合は、夢物語に終わってしまう可能性があります。
世の中の9割以上の人はフォーキャスティング型の発想に頼り、バックキャスティング型の発想をしません。
むしろ高い目標を設定することを躊躇します。目標を達成できずに残念な思いをしたり、上司から叱られりすることを嫌うからです。
また、高い目標設定を行うと、その分仕事は大変になります。大抵の人は大変な思いをしたくないので、低い目標設定に甘んじようとします。
こうした人のメンタリティーを挙げれば「失敗したくない」「楽をしたい」「叱られたくない」「断られたくない」「責任を取りたくない」といったものとなります。
一方、バックキャスティング型で成功してきた企業や経営者を見ると、トップ自身がバックキャスティング型で発想し、大多数であるフォーキャスティング型の人たちや組織を引っ張ってきていることが少なくありません。
とはいえ、先に見たように、世の中が変化する中で自社に改革や変革が求められる場合は、このバックキャスティング型で発想する必要があります。
改善で済む場合には、みんなができるフォーキャスティング型発想を使って計画を立案し、進めていくことで問題ないのですが、改革や変革を断行しなければいけない場合には、難しい問題に直面することになります。
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