◆社長の思いを聞きたがる学生なんていない毎年新卒採用をしても、肝心の就職希望者がいなければ話になりません。多くの中小企業にとって、採用は最重要な経営課題です。実際、武蔵野では二〇一八年度、定員三〇名のところに二〇一八年度の説明会参加者数は一〇二〇人、二〇一七年度は四三三人です。なぜ、武蔵野にそれほどの就活生が集まるのか。その理由の一つが、会社説明会にあります。新宿駅一五秒のミライナタワーにセミナールームを設置した。会社説明会で、社長が話をします。ここで「社長の思い」を語る人が多いが、それは最悪です。この人は、採用はもとより、ビジネスの根本がわかっていません。ビジネスの根本は、「答えはマーケットにしかない」です。つまり、「会社説明会で何を話すべきか」の答えは、就活生が持っている。就活生が聞きたい話をしなければ会社説明会の意味はない。ひいては、会社に入りたいとも思いません。だから「就活生が聞きたい話」をするのが当然です。こんな話をすると、行動力がある社長は、すぐに、就活生に何が聞きたいかをリサーチを始めます。ここが大きな落とし穴です。就活生に「社長から、どんな話を聞きたいですか?」なんて尋ねても、本当のことを言いません。何を聞いても「こう答えた方が印象はよくなるかな?」「こんなことを言って、心象を悪くしたらマズイ」と気にするに決まっています。だから、私は新入社員が入社した直後の懇親会で「何が聞きたかったか」「どんな話がおもしろかったか」をリサーチをします。その段階なら「心象をよくして、内定を取ろう」なんて気を遣う必要がないです。そこで出てくる話をメモに取っておき、それを毎年更新していくと、就活生が「毎年変わらずに知りたいこと」がわかり、就活生のトレンドや変化に気づけます。内定承諾書を提出した学生に、「社長のかばん持ち」をさせ、社長に質問をさせるとジェネレーションギャップを知ることができます。二〇一八年入社の学生のジェネレーションは大きく変わりました。横断歩道を渡るのに手をつないで渡る。入社後の配属先を変えた。新卒三名でチームを組んでがんばる部署です。まさに、マーケットから答えを得ている。就活生が聞きたいことを会社説明会で話す。だから、就活生は興味を持って聞きます。
じつに、当たり前の話です。誰も興味を持っていない「社長の思い」を、いくら熱心に語っても無駄です。◆「答えはマーケットにしかない」姿勢を貫くビジネスにおいて「答えはマーケットにしかない」は基本中の基本です。アセスメントで良い案がでたときには、自分で勝手に判断するのではなく、お客様に「どう思うか」を必ず聞きます。お金を出すのはお客様ですから、お客様に聞くのは当然です。それを自分で考えるから、おかしなことになる。現実的には、ここで蓄積してある「お客様の声」を活用します。出版も同じで、二〇一六年に『1日36万円のかばん持ち』をダイヤモンド社から出しましたが、最初の原稿ができあがった段階で、その場にいたかばん持ちの株式会社マイプレジャー河内優一社長に原稿を渡し、添削を頼みました。添削の時点で一行もメモをしなかった。自分でも読んでいて面白くなかった。この本はダメです。普通、添削を頼まれると原稿を読んでいるうちに「これはためになる」「勉強になる」と必死でメモする本は売れます。この本は、第一稿がイマイチで、抜本的に書き直しました。編集者がどんなに自信を持っていても、出版社は本を売るのであって買うわけではないから、直すのは当然です。現在第五刷、累計四万七〇〇〇部と発売年度ベスト5でした。採用も、ビジネスもすべて同じで、答えはマーケットにしかありません。
コメント