◆会社を動かすには、人と時間がかかる
後継者が会社を引き継ぐと「自分の思い通りに会社を動かせない」「社員が思ったように動いてくれない」と必ず思います。
しかし、それが当たり前。後継者が社長になったときは、社員全員が先代の社長に採用された人です。
その状況で、後継社長が「自分の思い通りに動け」と言ってもそもそも無理な話です。それが正しい社員です。
後継者が本当の意味で会社を思うように動かせるのは、自分が採用した社員が五〇パーセントを越えてからです。
古参の社員が定年で辞めて、自分が採用した人の割合が増えていく。その期間を過ごした後に、会社を動かせるようになる。
もっと言えば、外に出て営業を行いお客様を増加させ中途社員を採用して、当座の人員不足を解消し、新卒も増やし会社を成長させると、自分の会社になる。
この本でも社員教育が大事だと話をしました。それも「スキル向上」だけでなく、「価値観の共有」に関する教育もしっかりしなければならない、と述べました。
しかし、社長が価値観を明記して「これをしっかり読んでおけ」と渡したところで、社員は一生懸命読むでしょうか。
そんなことはあり得ません。古参の社員も中途社員も真剣には読みません。では、一番真剣に読むのは誰でしょうか。そうです。新入社員です。
新入社員は右も左もわからないから、教えたことをしっかり学びます。勉強する社員の割合が増えると会社にまとまりができ、後継社長の思いが伝わるようになっていくのです。
この状況が整うまで、「会社を思うように動かせない」「社員が思った通りに動いてくれない」は当たり前です。
◆新卒採用も「最初からうまくいく」と思ったら大間違い!
こんな話を聞くと、きっと多くの後継者が「これからは新卒採用をしっかりやっていこう」と思うでしょう。それは正しい判断です。ただ、最初からうまくいくと思ったら大間違い。
私は社長になって三〇年になり、二五年前から新卒採用を始めました。しかし、最初に採った社員は一年で全員が辞めました。
二年目に一八名採用したが、現在も残っているのはたった一名。当時、箸にも棒にも引っかからない三根正裕部長です。最初はそんなものです。
そういった失敗を経て、段々と人が辞めない会社になっていき、自分が採用した新卒社員の割合が増えていく。
そして、残った社員に対して、手間をかけてコツコツ教育していくことによって価値観が揃っていく。社長が思う方向へ会社を動かせるには、それだけの時間がかかります。
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