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金利から目を放すな

S精機は、抜群の業績を誇る成長著しい中堅企業だ。この会社から学んだことは数え切れない。どれをとっても感心させられるものばかりだが、その中でも特に印象的なのが資金運用だ。資金運用計画をもとに設定された活動基準が非常に厳格に守られている。その計画で特に重点を置いているのは、資金の回転効率と金利だ。

金利については、実質金利の動向を示すグラフが作成され、常にその変化が監視されている。その徹底ぶりには驚かされるばかりだ。実質金利とは、実質借入金に対する金利を指しており、この実質借入金とは、借入金と割引手形の合計から定期預金を差し引いた金額のことを指している。

計算式にすると、以下のようになる:

実質金利 = (支払利子 + 割引料 – 受取利子) / (借入金 + 割引手形 – 定期預金)

借入金を返済したり、定期預金を増やしたりすると、高金利で借りている資金の中から低金利で預けている割合が増えるため、結果として実質金利が高くなる仕組みだ。

具体例を計算すると次のようになる。

たとえば、日歩二銭二厘(年利8%)で300万円を借り、100万円を年利5.5%で定期預金している場合、年間の実質金利は次のように計算できる:

支払利子:300万円 × 8% = 24万円
受取利子:100万円 × 5.5% = 5.5万円
実質借入金:300万円 – 100万円 = 200万円

実質金利 = (支払利子 – 受取利子) / 実質借入金
実質金利 = (24万円 – 5.5万円) / 200万円 = 0.0925

つまり、実質金利は9.25%になる。

借入金を返済して借入額が200万円になった場合、計算は次のようになる。

支払利子:200万円 × 8% = 16万円
受取利子:100万円 × 5.5% = 5.5万円
実質借入金:200万円 – 100万円 = 100万円

実質金利 = (支払利子 – 受取利子) / 実質借入金
実質金利 = (16万円 – 5.5万円) / 100万円 = 0.105

結果として、実質金利は10.5%となり、年利1割を超える。このように借入金を返済しても、低金利の預金がそのまま残っている場合、実質金利はかえって高くなる可能性があることがわかる。

したがって、重要なのは表面的な借入金利の高低ではなく、実質金利の高低を正確に把握することだ。実質金利が資金運用の真のコストを示していると言える。実質金利が10%を超える場合、それは高金利と判断し、見直しや改善が必要な状況と考えなければならない。

一般的に「年一割の利子」と言う場合、それは実質金利の標準を指していることが多い。しかし、単に借入金の表面上の利子だけを考えると、例えば日歩二銭二厘であれば年利8.3%にしかならず、日歩二銭七厘五毛でようやく年利10%となる。このように、高い利子は通常の借金の条件としては考えられないため、実質金利が重要だということがわかる。

実質金利が上昇したなら、その数字を武器にして銀行へ乗り込むのが定石だ。銀行にとって実質金利を突きつけられるほど厄介なことはない。まさに実質金利は「弁慶の泣きどころ」と言える。普段は頭を下げるばかりの銀行相手に、このときばかりは胸を張り、堂々と話し合いに臨む。これが経営者にとって、ストレスを発散する一種の健康法でもある。

要するに、新たに借り入れるか、既存の借入金の利率を下げさせるか、あるいは定期預金を解約するかの選択だ。これによって実質金利を引き下げることが可能になる。経営者たるもの、ここまで金利に敏感でなければ本気とは言えない。

もう一つの手段は手形割引だ。手形を何も言わずに銀行に放り込めば、都合よく割引されてしまう。特に月末には注意が必要だ。銀行は月末の預金残高を増やすために、こちらの事情などお構いなしに手形を割ってくるリスクが高い。

手形はどんな状況でも、必要最低限まで割引を控えるべきだ。「普段世話になっている銀行にそこまで言えない」と思うような経営者では話にならない。銀行との交渉で遠慮していては、経営の舵取りを誤るだけだ。

世話になっているからこそ、一日でも早く立派な会社に成長することが本当の恩返しだ。割引料を余計に支払うのは、筋違いのサービス精神にすぎない。この点をしっかり主張すれば、相手も反論の余地を失うはずだ。これもまた、経営者に課せられた重要な役割の一つである。

S精機の事例が示すように、金利の管理は企業経営において極めて重要であり、特に「実質金利」を常に監視することが肝心です。実質金利とは、借入金から定期預金などを差し引いた「実質的な負債」に対する金利で、単なる借入金利ではなく、資金運用全体の効率を示します。実質金利が10%を超える場合は高金利とみなされ、資金運用の見直しが必要となります。

経営者が金利に敏感になる理由は、実質金利が企業の利益に直接影響するからです。たとえば、借入金を返済しても定期預金の金利が低ければ、返済により実質金利が上昇し、逆に資金コストが上がることもあります。このため、金利管理には単に返済するだけではなく、借入利率の引き下げ交渉や、場合によっては定期預金の解約も視野に入れるなどの柔軟な対応が求められます。

また、手形の割引に対しても慎重な姿勢が必要です。月末の銀行残高調整などで、銀行側が割引を進める場合があるため、経営者は必要なタイミングまで手形を割引しないようにし、コストを抑える意識が不可欠です。世話になっている銀行には気を遣うものの、割引料でのサービス精神は間違いであり、銀行には企業としての健全な利益追求と堅実な成長をもって感謝の意を示すべきです。

このように、経営者が金利を管理することで、企業は資金効率を高め、財務体質を強化することができます。金利から目を放さない姿勢が、安定した経営を支える大きな要素となるのです。

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