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重傷の身で経営計画を

三紅印刷の古川社長が名神高速道路で交通事故に遭い、救急病院に搬送されたとの連絡が入った。幸いにも、右手首の骨折と肋骨の軽いヒビで済んだとのことだ。

翌日、お見舞いに行くことにした。病院の場所がわからなかったため、まず会社を訪ねた。そこで、常務が案内役を買って出てくれることになった。その常務は小型の書類用トランクを手にしていた。話によると、このトランクには作りかけの経営計画書や関連する書類が入っており、社長の指示で病院に届ける必要があるとのことだった。

重傷を負ったうえに、事故に遭った翌日の話だというのに、胸に込み上げるものを感じずにはいられなかった。なんと見事な社長なのだろう。一瞬たりとも事業経営を忘れないというのは、まさにこういうことを指すのだろう。

病室に伺うと、思ったよりも元気そうで少し安心した。ただ、右手首は上から吊られていた。社長は、「七月一日に経営計画の発表会が控えているのに、もう一カ月余りしかない。一日もムダにはできない」と言い切った。幸いにも頭と思考には問題がないため、看病をしている奥様に口述筆記をお願いするつもりだという。

七月一日、予定通りホテルの会議室で経営計画の発表会が開かれた。私もその場に立ち会う機会を得た。右手を首から吊った状態の古川社長は、堂々とした気迫あふれる口調で経営方針を説明した。その姿を目の当たりにしながら、心の底から立派な社長だと感嘆せずにはいられなかった。同時に、こんな社長のもとで働ける社員たちは、なんて幸せなのだろうと思わずにはいられなかった。

余談になるが、経営計画発表会の後にはフルコースの晩餐会が催された。その夜、社長が指定した店では飲み放題が用意され、勘定はすべて会社持ちという太っ腹ぶりだった。豪傑ぞろいの社員たちは明け方まで飲み明かす者も多かったらしい。それでも翌日になると、誰一人として欠勤する者がいないというのだから、この会社の社員の結束力と責任感には驚かされるばかりだ。

古川社長のように、事故の直後でも事業に対する責任を優先し、経営計画の発表に備えて準備を進める姿勢は、まさに経営者としての献身と覚悟が表れたものです。社員に対する信頼と、会社の未来への強い責任感がなければ、このような行動はできないでしょう。彼の行動は、経営者が持つべき「指針」を象徴しており、会社を成功に導くための自己犠牲と決意が感じられます。

さらに、社員の士気の高さも見逃せません。晩餐会で気持ちを解放しつつも、翌日には全員が欠勤せず出勤するというのは、社員が古川社長の経営方針とリーダーシップに心から応え、共鳴している証です。古川社長の努力と信念が、社員の忠誠心や働き方にも影響を与え、会社全体が一体となっていることが伺えます。

このエピソードは、社長が会社の未来を支えると同時に、社員一人ひとりもまた会社を支えている関係性を感じさせます。

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