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資金運用計画は企業体質強化のため

S社の専務が語った「資金運用計画は、単なる資金運用にとどまらず、経営体質を強化するためのものだ」という言葉は実に的を射ている。この考えを裏付けるいくつかの実例を、本章で取り上げている。

資金運用を単なる資金繰りのような経理業務と捉えること自体が、根本的な誤りだ。利益が出ている限り、資金のやりくりは経理担当者の責任に過ぎないと片付けるような問題ではない。

そもそも、資金運用の方法次第で損益は大きく変動する。実際に資金運用計画を立ててみると、資金の回転がいかに重要かを痛感することになるし、資金繰表を作成してみれば、金利負担の重さが身に染みてわかる。

そして、そのどちらも経理担当者だけの力で改善できる範囲は限られている。本当に重要な部分は、社長自身の判断と行動がなければ解決しない。なぜなら、資金運用の本質は単なる数字のやりくりではなく、経営の政策そのものだからだ。資金運用の真の責任者は社長であり、その決断こそが企業の未来を左右する。

売掛金の限度をどこに設定するか、製品在庫をどれだけ抱えるか、買掛金の決済方法を現金と手形でどう配分するか、さらには設備投資額をいくらにするか。これらを総合的に決定するものこそが、資金運用計画だ。

その決定が、人々の活動の方向性を左右する。そしてさらに重要なのは、資金運用の方法次第で、たとえ利益が同じであってもバランスシートの内容が全く変わってしまうという点だ。この事実を理解すれば、その意義の深さが実感できるだろう。この認識が深まるにつれて、社長の発言には自信と重みが自然と備わってくる。

資金運用計画は、まさに社長の方針そのものであり、企業内の人々の活動目標となるべきものだ。そこで私は、経営計画書において、主要な項目ごとに資金運用計画から導き出される期末残高を目標値として明示するようにしている。これによって、全員が具体的な指針を共有し、行動に反映できるようになる。

資金運用計画を利益計画に基づいて月別に展開したものが資金繰表である。言い換えれば、資金繰表とは経営計画そのものを別の形で表現したものに過ぎない。形状が異なるだけで、その本質は同じだ。

だからこそ、資金繰計画とその実績を比較することには非常に大きな意味がある。この重要性を理解している人は驚くほど少なく、専門家や指導者の著書でも、この点に十分触れられていないことが多い。

多くの人は、資金繰表を経理部門が予測をもとに実績を参考にして作成するものだと考えている。それ自体は間違いではないし、確かにそれも資金繰表の一形態ではある。

しかし、それが経営計画と直結していなければ、単なる資金繰りの予想表に過ぎず、経理部門での運用には役立っても、経営の資料としての価値は乏しい。社長が目を通す資金繰表は、経営計画に基づいた「本物」でなければならない。

資金運用計画は単なる「資金繰り」を超え、企業の体質を強化し、経営の基盤を支える重要な柱です。S社の専務が述べたように、資金運用計画は経営体質の強化に役立てるべきものであり、その効果は企業の収益や安定性に大きな影響を与えます。ここでの重要なポイントは、資金運用計画が企業全体の運営方針に深く関わっている点です。

たとえば、売掛金の限度、在庫の量、買掛金の支払い方法、設備投資の額など、資金の動かし方に関する決定事項は、単に経理業務の範囲を超え、企業全体の方針に関わる問題です。これらの決定は、経理担当者の手に負える範囲ではなく、企業のリーダーである社長が総合的に決めるべきことです。資金の回転を適切に管理することで、損益が改善され、金利負担も軽減されるため、資金運用は経営の「体質強化」に直結する政策といえます。

さらに、資金運用計画から導き出される資金繰表は、単なる予想表ではなく、経営計画を具体化したものです。資金繰表は利益計画を基に月ごとに展開され、経営者が実績と計画を比較することで、経営の方向性や資金の流れを詳細に把握することが可能になります。この比較は、経営判断に大きな意味を持ち、資金繰表が「経営計画そのもの」であることを理解している経営者こそ、企業の未来を的確に描けるのです。

このように、資金運用計画は経営方針を具現化し、従業員の活動の指針を明確にするものです。資金運用の見直しによってバランスシートが改善され、収益性と財務健全性の向上が図られるため、資金運用計画は企業体質を強化するための重要なツールであるといえます。

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