MENU

組織は目標から決まる

F社から講演の依頼を受け、その打ち合わせをしている最中、話題が組織の話に及んだ。F社では、以前にあるコンサルタント団体に依頼して、組織調査を実施したとのことだった。

半年間にわたって詳細な調査が行われ、何度も検討会が開かれた結果、組織変更が実施された。しかし、それでも成果は上がらなかったとのことだ。

「新しい組織は三カ月ももたなかったのでは?」と尋ねると、「いや、変更した直後から調子があまり良くなくて、結局半年後には再び組織を変えることになった」との答えが返ってきた。その理由は明白だった。

そのような調査を基に組織を決めてしまえば、企業の実際の要請に合うわけがない。現在の組織論は、企業内のさまざまな業務を分析し、似たような技能や性質を持つ仕事を一つの部門にまとめるのが望ましい、といういわゆる職能主義が基本だ。この考え方自体に問題があるうえ、具体的な運用段階ではさらに矛盾が生じる。

戯画的に言えば、ソロバンを使う仕事は経理、コンパスや計算尺を使う仕事は技術と分類するような、驚くべき幼稚さだ。まさに用具主義とでも呼ぶべき発想であり、そこには経営の視点が完全に欠落している。

組織とは、企業の目標を達成するための手段である。したがって、本来あるべき姿は、企業の目標に基づいて組織が決定されることである。

S工業は、ある自動車メーカーの専属下請けを担っていた。しかし、続く値下げ要求と賃金の上昇が重なり、業績は赤字寸前まで悪化していた。このままでは赤字転落は避けられない状況だった。

社長は以前から専属下請け状態からの脱却に頭を悩ませていた。相談を受けた私は、考えているだけでは解決にならないと指摘し、まず数字を通じてその必要性を明確にすることから始めるべきだと助言した。そこで役員会を開き、三年間の業績予測を黒板に書き出してみた。すると、予想以上に大きな赤字が生じることが明らかになった。

このように、企業は成り行きに任せていれば赤字に陥る。だからこそ、この赤字に立ち向かい、企業を黒字へと導くことが経営者の使命である。

必要な利益を確保するための条件を計画し、それを予測と比較した。その差額こそ、S社が新たに生み出さなければならない収益だ。この課題をどう解決するかについて、徹底的に議論を重ねた。最終的に結論にたどり着いたが、そこに至るまでに約二時間の会議を五回ほど繰り返す必要があった。

結論が黒板に整理され、一息ついたところで、重役たちはお茶を飲みながら黒板を眺めていた。そのとき、ある重役がぽつりと「これを実現するには、今の組織では無理だ」と口にした。すると、他の重役たちも次々に「実は俺もそう思っていた」と相づちを打ち始めたのだった。

目標が明確になった瞬間、思いがけず組織変更の必要性に気づいたのだ。新たな目標を達成するには、新しい営業活動が不可欠であることは、誰の目にも明らかだった。

目標が明確になった瞬間、思いがけず組織を見直す必要性に気づいた。新たな目標を達成するには、どうしても新たな営業活動が不可欠であり、それは誰が見ても明白な事実だった。

そして、翌日から二日間、激しい議論が繰り広げられ、その結果、新しい組織図が完成した。この会議には参加しなかった。必要性を感じなかったからだ。決まったら知らせてくれ、とだけ伝えておいた。

完成した組織図は、新たな営業活動に重点を置いた内容になっているのはもちろんのこと、新規受注品の生産待機体制まで盛り込まれていた点には感心させられた。その実現のために、社内スカウトや配置転換を駆使して必要な人員を捻出していた。ただし、いくつかの部門では減員が行われたことは言うまでもない。

新しい組織体制のもとで、新たな活動がスタートした。そして間もなくその成果が姿を現した。特定の会社に照準を定めた積極的な営業活動と、それに応じた受け入れ態勢が相手企業の心を動かし、新しい仕事の受注に成功したのだ。

「受け入れの姿勢」というのは、組織的な工夫に基づいている。一つは、生産部門の課長を一人配置転換し、新規事業の生産責任者として営業課と連携させたことだ。もう一つは、工場内に300坪のスペースを確保し、完全に待機用として活用できる状態を整えたことである。

減員された部門も、特に問題なく業務を遂行できていたことは言うまでもない。これからの企業は、組織理論や直間比率の考え方を含め、すべての取り組みを企業の目標達成に焦点を合わせる姿勢が求められる。

最近、「課制廃止」に踏み切る企業が増加しているのは、従来の組織理論である「分掌主義」が、企業の目標達成において限界を露呈してきたからだ。これにより、より柔軟で目標指向の組織体制への移行が求められている。

分掌主義のような固定的な業務分担では、変化する状況への対応が難しいだけでなく、会社全体の仕事を俯瞰すると、特定の部門が特定の時期に忙しくなる一方で、手の空いた部門が多く存在することがしばしば起こる。その結果、会社全体では人員が余っているように見えるにもかかわらず、忙しい部門では人手が足りないという状況に陥る。この非効率さが、間接部門の人員増を招く原因にもなっている。

この非効率を解消し、少人数でも機動力と柔軟性を最大限発揮するために、課制を廃止し、その時々の状況や必要性に応じてチームを編成する方法が取られようとしている。これが、いわゆる「プロジェクト主義」である。

プロジェクト主義は、単に効率的であるだけでなく、個々の能力向上にも極めて効果的だ。なぜなら、否応なくさまざまな仕事を経験する機会が得られるからだ。時代の要求に合わなくなった古い組織形態は、情け容赦なく捨て去らなければならない。そうしなければ、企業は変化の激しい環境の中で生き残ることはできない。この覚悟を持つことが、これからの企業運営には不可欠である。

組織は、企業目標を達成するための手段であり、目標が明確になって初めて最適な組織形態が見えてくる。従来の組織論は、企業内の職能や役割ごとに分担を設定し、それに応じて組織を構築する「職能主義」を採用してきたが、この手法では企業の変化に迅速に対応することが難しい。また、分掌主義に基づいた組織は、一部の部門が過度に忙しくなり、他の部門が人員余剰となる非効率を招くことが多い。これにより、間接部門が無駄に増加し、企業全体のコストが増大する原因ともなる。

企業目標から組織を設計する場合、各部門がどのように目標達成に寄与するかを基盤に組織を構成する必要がある。例えば、ある製造企業で、経営陣が目標達成のために新規事業を展開する必要性を認識したとき、自然と組織の見直しが生じ、営業活動や新規受注品の生産体制に重点を置く新組織が誕生した。結果的に、浮かせたリソースと新たなチーム編成によって、目標達成に向けた弾力的で効率的な運営が可能になった。

現代の企業では、固定された課制よりも、プロジェクト主義の導入が有効とされている。プロジェクト主義は、必要に応じて柔軟にチームを編成し、機動力と弾力性を高めることで、少数の人員で最大限の効果を発揮することができる。また、この方法は社員の能力向上にもつながり、多様な業務経験を通じてスキルの幅を広げる効果もある。

企業が変化に対応するためには、従来の組織形態や固定的な役割分担に縛られることなく、企業目標に焦点を当てた柔軟な組織づくりが求められている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次