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組織いじりばかり

L社の社長は、組織をいじるのが何よりも得意だ。一年に三、四回は組織を変える。その理由は単なる趣味ではなく、経営が思うように進まないのは組織に問題があるせいだと信じ込んでいるからだ。

自社製品を扱う独立企業でありながら、業績は極めて低迷している。その原因について、社長は次のように考えている。非能率が招くコスト高、頻発する納期遅れによる顧客の信頼喪失、品質の低さから続出するクレーム、そして、これらの問題が解決されないままであることだ。さらに、各部門間の連携が非常に悪く、部下に何を尋ねても答えがバラバラという状況も、大きな問題だと捉えている。

こうした状況の原因は、組織そのものに問題があるに違いない、と社長は考えている。そこで、自ら工場に足を運び、気に入っている係長や、自分が目をかけてきた古参社員に意見を求める。しかし、その相談相手はほぼ毎回同じ顔ぶれだ。一方で、工場長や部長、課長といった管理職は完全に蚊帳の外に置かれたままである。

こうして作られた新しい組織案が、工場長や部長に提示され、意見を求められる。しかし、工場長も部長も反対の意を示す。現行の組織に移行してからまだ三カ月も経過していないのだ。そもそも、その現行組織自体が、たった三カ月前に社長が工場長らの反対を押し切って決定したものだった。

反対意見を述べても、いったん決まった以上はその中で何とかやりくりしようと苦心している最中に、またしても新組織案が提示される。社長が気に入った人間の意見だけを聞き、自分たちの意見には耳を貸さないのはいつものことだと理解はしている。それでも、三カ月ごとに組織を変えられるようでは、もはや組織の良し悪しの問題ではなくなっている。

どんな組織にも完璧さを求めるのは無理な話だ。良し悪しはあるにせよ、せめて一年くらいは同じ組織でやらせてほしい。三カ月ごとに組織が変わるようでは、腰を据えて仕事に取り組むことなど到底できない。

これが工場長たちの偽らざる本音だ。しかし、社長が工場長らの意見を求めるのは、実際にはただの形式に過ぎない。これまで一度たりとも、その意見が採用されたことはないのだ。

工場長たちの反対など全く無視され、新しい組織への切り替えが強行される。だが、その新組織もおそらく三カ月後には廃棄される運命にある。そんな短命な組織の中で仕事をしなければならない工場長たちの苦労は計り知れない。

L社の業績不振の真因は、組織ではなく商品構成と価格政策にあった。いや、それだけではない。問題の根本は「経営姿勢」そのものにあると言っても過言ではないだろう。

L社の商品は数百種類に上ったが、実際に売れているのはせいぜい40~50種類に過ぎなかった。その上、その中でさえも類似品が多く、無駄が目立つ状態だった。

ほとんど売れない数百種類の商品は、毎月数十種類ずつ少量の注文が入るだけだった。この状況が生産活動を混乱させる原因となり、結果として三カ月分にも相当する過剰在庫を抱える事態を招いていた。

手に余るほど多種多様な商品を抱えながら、この三年間で一つとして商品を廃止していない。いや、むしろ廃止するという発想自体がなかったのだ。その上、顧客からの無い物ねだりに応じて、次々とろくに売れない商品を開発し続けた結果、品種は増える一方だった。

さらに厄介なのは、売れ筋だった主力商品が、近年、後進国で急速に生産が拡大したことだ。その結果、それらの国への輸出が減少しただけでなく、日本市場に逆輸入される動きさえ見られる状況になっている。

その結果、急騰する材料価格に直面しながらも、価格競争の激化で商品の値上げが難しいという厄介な状況に陥っている。そして、徐々に、しかも確実に悪化していく業績に対して、組織をいじること以外に打開策がないと思い込んでいるのだから、もはや救いようがないと言える。

救いようがないのはそれだけではなかった。L社にはまともな価格政策が存在していないのだ。実態を把握するためにデパートやスーパーを回ってみたところ、驚くべきことに、L社が設定した売価の4倍もの価格で販売されている事実が明らかになったのである。

L社の販売チャンネルは、極めて単純な二段階構造だ。L社 ← 問屋 ← デパートまたはスーパー、という最短距離である。この構造では、通常、小売価格の50〜60%がメーカー価格であるべきだ。しかし、実際にはそれが守られていないという深刻な問題を抱えている。

五〜六段階に及ぶ複雑な販売チャンネルであっても、メーカー価格は最終価格の30〜40%程度であるのが普通だ。それにもかかわらず、こんな当たり前の事実さえ直視しようとしない経営者に対しては、どうしても及第点を与えることはできない。

企業はお客様あっての存在であるにもかかわらず、どうやってお客様に近づき、その要求を知るかという努力は全く見られない。ただ作るだけで、販売はすべて問屋に任せきりという経営姿勢こそが、前述のような問題を引き起こしている。この経営姿勢こそ、最優先で見直され、問われなければならないのである。

L社の社長は、業績不振を組織の問題に結びつけ、頻繁に組織を変えていますが、実際の原因は商品構成と価格政策の欠如、さらに根本的な「経営姿勢」にあります。L社の商品の種類は非常に多いにもかかわらず、売れているのはごく一部で、無駄な在庫を抱え続けています。新たな商品も次々と追加されますが、ほとんどが売れないままです。また、主力商品においても価格競争が激化しており、値上げが難しい状況に陥っています。

加えて、L社は自社商品の価格政策すら確立しておらず、最終価格がメーカー価格の4倍になるという不合理が存在します。販売チャンネルを最短距離に設定しているにもかかわらず、適切な価格戦略を持っていないため、利益を確保できず、消費者に対するアプローチも欠如しています。これらの問題に真剣に取り組まず、組織再編ばかりを繰り返していては、業績向上は望めません。経営者として、まず「お客様にどう近づき、何を求められているか」を理解する努力が不可欠です。

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