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第六項 矛盾と戦う

目次

プロがする仕事の価値とは

経営は矛盾との戦いです。

まず、ユニクロの服そのものが矛盾との戦いと言えるでしょう。ユニクロの服はシンプルな方向性。反面、洋服だから夢があったり、着る人が気持ちよくなったりすることが必要。伝える側としても新しさとか情熱とかをできるだけ詰め込みたい。

内面には新しさ、情熱。しかし外面はシンプル。ある意味、真逆、矛盾です。しかし、これを実現するところにMADE FOR ALLの実現があるわけです。

先ほどの項であげた、アップルの商品は、この矛盾解決の代表商品と言えます。

服作りに関してもう一つ分かりやすい例をあげて考えてみます。いいものを作ろうと思うと、コストがかかります。しかし、コストがかかるからといつて、その分を商品価格に上乗せしたら、どうなるでしようか。

お客様は離れていきます。我々の都合を押しつけられて、喜ぶお客様は一人もいないからです。ですから、本当にお客様に喜んでいただこうと思うと、品質をあげながら、コストを下げて、価格を維持あるいはさらに安く提供する必要が出てきます。

品質をあげながらコストを下げるのですから、明らかに矛盾です。「できない」と思うのが人間です。

しかし、「できない」と言って、あきらめるのだったら、これは素人です。そんなことだったら、一般の人にだって言えますし、できます。

我々はプロです。洋服を売ってお金をいただいているわけですから、洋服のプロのはずです。プロが素人と同じだとしたら、お給料をもらう価値、存在価値はどこにあるというのでしょうか。

一流のプロのホテルマンは、決して「できない」というところから会話を始めないそうです。「分かりました。やってみましょう」。そう言ってから、お客様のご相談を解決できる方法をあれこれ工夫して、やってのけるそうです。

プロの仕事の仕方というのは、こうあるべきだと思います。矛盾と戦って、何とか解決策を見出す。そこにプロとしての付加価値が生まれるのであって、そこからお客様の笑顔が生まれるのです。

お客様の笑顔のないところに儲けはありません。矛盾が大きければ大きいほど、それを解決した時のお客様の笑顔、ひいては商売としての儲けも大きくなります。

フリースやヒートテック、あるいはg.u.の九九〇円ジーンズなどはその典型ではないでしょうか。

矛盾を解決すればチャンスが広がる

ユニクロの都心部への進出も矛盾との戦いでした。従来の郊外型店の場合、お客様はチラシを見てこられた目的買いの方が中心です。ですから、来店されたお客様の六、七割の方が実際に買っていかれます。

しかし、都心部の場合は、そうではなかったのです。目的買いというよりは、フラッと立ち寄られて、気に入ったものがあったら買っていかれる。そうした購買動機の方が中心だったのです。

最初の都心部として始めた原宿店で、来店されたお客様の三割くらいの人しか買っていかれないということが分かりました。

しかも、自分の好みのものがないかを隅から隅まで探して、いろいろな商品を手に取っては、別の売場に行かれます。その結果、大量の商品整理が発生することになります。

購買率は低いのに、商品整理は郊外店の比ではないほど発生する。これは大きな矛盾です。しかも郊外型店に比べて賃料が高いので、商品整理の負荷分だけ、そっくりそのまま人を投入して人件費を増やすことも難し本当に難しい問題です。

しかし、当時の原宿店の店長をはじめとして、それに続く何人もの都心部の店長たちが、この矛盾解決の努力をしてくれました。そのおかげがあって、都心部での商売のやり方は徐々に進歩して、次の段階の都心部大型店の銀座店やソーホーニューヨーク店につなげることができたわけです。矛盾解決なしには、次なる成長はないというわけです。

特に挑戦的なことをすると矛盾が伴うものです。そしてそこで目にする矛盾は、はじめての経験ですから、頭を抱えてしまう類のものだったりします。

そこで、「やっぱり無理だった」とか「こんなのでは商売が成り立たない」と言ってあきらめてしまうか。それとも、何とか解決する方策はないのかと、必死になって食い下がって努力をするのか。これが大きな分かれ目になるわけです。

普通の人は前者です。ということは、そこの市場には挑戦者がいないか、あるいは挑戦者がいたとしてもあきらめて撤退をしているから、空自の市場だったりするわけです。

ということは、あきらめないで粘って、その矛盾の問題解決を最後までやりきった会社が、その市場を創造することができるということです。

矛盾を解決すれば、そこにチャンスが大きく広がるということなのです。

本当の問題を発見し、本質を解決する

ここで問題解決の仕方に関して一言。商売をやっていると、このような矛盾が大なり小なり発生するものです。

その時、簡単にあきらめるのもよくないことですが、そうした問題解決を、表面的な対症療法的なことでやろうとしないことも大切です。

だいたいにして、表面的で短絡的な問題解決というものは、本当の問題解決につながらないため、同じような問題が、姿を変えて何回も出てきます。

例えば、新店の立ち上げや、売上をあげるのに苦戦をしているお店では、スタッフの苦労も多かったりします。そこでモチベーションを高めたいと思って、スタッフの給料をあげたいという気持ちにかられることがあると思います。

しかし、ただ給料をあげるだけだったら、これは表面的で短絡的な解決に終わる可能性があります。この場合は、おそらく、単純に給料をあげさえすれば売上があがるということではないように思います。

また、その場しのぎの表面的なことだったら、モチベーションが高まったとしても、非常に短期的で、何かあったらまた給料をあげてはしいという話になって出てくることが想像されます。

経営者ならば、短絡的にお金で何とかしようとするのではなく、売上につながるようなモチベーションをあげるためには、本質的にどんなことが必要なのかを必死になって考える。

  • 「もしかしたら目標や夢の強い共有ができていないかもしれない」
  • 「もしかしたらスタツフ教育が十分できていないかもしれない」
  • 「もしかしたら本音で話しきれていないかもしれない」
  • 「もしかしたら自分一人で全部決めようとしていて、スタッフを作業員としてしか見ていない、使っていないかもしれない」
  • 「もしかしたらスタッフが頑張っていても、ねぎらつたり、誉めたりしていないかもしれない」

こうしたことを自問自答して、本質的なところまで掘り下げて実行するということです。短絡的に対応するのではなく、本当の問題がどこにあるのかを発見するのが先なのです。

そして、そこを解決する。そうするとお金も活きてくる。それが本当の問題解決です。そうでないと、蠅たたきのように、いつも同じような問題にふりまわされて、時間と労力は食っているのに、成果が全然出てこない、そんなことになりかねないのです。

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