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第六項 多様性を積極的に肯定する

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人間は一人ひとり全部違う

ファーストリテイリングは、グローバル化を加速させていきます。その時、多羅け性のマネジメントはリーダーとして重要なテーマです。

しかし、グローバルだから多様性という狭い図式で考えないでほしいと思います。

そもそも多様性のマネジメントは、いいチームを作り、いい経営をするヽ?えでの普遍的なリーダーシップです。

つまり、国籍とか人種とか性別とか年齢とかいヽユ則に、もともと人間は個人個人が全部違っていて、誰ひとり同じ人はいないのです。

だからグローバルでなくたって、 一つ一つの職場には必ず多様性があるわけで、本来の意味でのこの多様性を理解して、積極的に肯定して、チームを運営しない限り、どこでどのような組織を受け持とうが、成果なんて出ないのです。

ですから、日本人百人のチームを運営する時であろうが、アメリカ人とフランス人と中国人と日本人でチームを運営する時であろうが、多様性のマネジメントはいつだつて存在するのです。

その根本は、「人間は一人ひとり違う」ということ。このことを頭の中にしっかり入れておくということです。

特に日本人は、考え方の幅が狭すぎる傾向、違いを受け止めるのではなく排除する傾向があるので、リーダーとしては気をつけてほしいと思います。

これは日本の学校教育の弊害でもあるのですが、「一つのやり方だけが正解。あとは正解とは認めません」みたいな教育がずっと続いています。教えられた正解を暗記して、その正解だけを答えないと減点になる、というような教育と試験ですね。この弊害が、日本という国全体で見た時には、あるように思えます。一つの文化になっているため、企業の中でも、そういったマネジメントをやっている会社が多く見られます。こうした環境の中で育ってくると、ある意味変に躾けられてしまうところが出てきます。

しかし、当然のことですが、企業活動に正解が一つしかないということはありません。特に、変化が激しい時代ですので、過去の正解の前提がすぐに変わっていってしまいます。

今までこういうふうにやってきたからとか、そんな理由は正解の根拠とはなりえないのです。

ですから、いろいろな人のいろいろなやり方・知恵を集めて耳を傾けてみる。それを受容する。そのうえで、本当によいと思うやり方をやつてみる、あるいは、そのやり方でやってもらう、そういった一人ずつの考え方に対する包容力を、リーダーは身につけていく必要があります。

変化の時代は特にそれが必要だということです。いいアイデアに国籍や人種や性別の違い、あるいは役職の上下はないのです。

会社も人を選ぶ権利がある

ただし、人が会社を選ぶ権利があると同時に、会社も人を選ぶ権利があります。

会社の使命感や目標や根本的な考え方、あるいは基本方針や原理原則、こうしたものに対する理解、共感、共有。一緒にチームとなって働く限りは、メンバー側にこれがあることが前提です。

それを理解しようとする姿勢がなかったり、前の会社とは違っているとか、自分の考え方とは違っているということであれば、残念ながら一緒のメンバーになってもらうことはできないと思います。

多様性の肯定といっても、会社とメンバーとの、こうした対等で健全な関係性があったヽ?えでの話だと理解して下さい。

やり方、知恵はいろいろあっていいのです。しかし、会社としての本質的で絶対的なところは揺るがせにしてはだめなのです。

ですから、リーダーは会社の使命感や目標や原理原則や基本的な考え方といったものをしつかり持って、そこで自分が正しいと判断したことに関しては絶対に曲げないようにしてもらいたいと思いますし、メンバーが理解できないようだったら、納得するまで説明してもらいたいと思います。

それでもメンバーに、こういったことを受け入れる姿勢がないのであれば、やはりそのメンバーはチームの一員としては一緒にやっていけない。リーダーがそう決断することも、チーム全体の秩序を守るためには必要なことです。

グローバル経営において

これらのことを基礎に置き、本質的で絶対的なところは揺るがないようにしながら、国や地域の習慣や法律を受容していくことが、グローバル経営においては必要になってくると思います。

その際も、ステレオタイプの先入観で判断しないようにしてもらいたいものです。

例えば、中国はこうだとか、韓国はこうだとか、アメリカはこうだとか、フランスはこうだとか。ある種の思い込み。いつたいどれくらい本当に知っていて、そう言っているのか、ということです。

中国人でもアメリカ人でも百人いたら百人違うわけです。いったい事実はどこにあるのか。それを本当に現場。現物。現実で確認するということが重要です。

その事実を確認したら、本当にその国や地域の習慣になっていて変えられない。その習慣に合わせた方が、お客様も働く人も納得がいく。そうであれば、「郷に入りては郷に従え」と言われるように、その習慣を受容するよヽフな判断をしていくということです。

ただし、安易に確認して安易に判断してはいけません。

本当は誰も望んでいないことが、妥協や思い込みで、今そうなっているにすぎないようなこともあります。

それに対しては、会社が信じていることを実行して、誰にとってもよい状態にしていくべきです。

例えば、パリでは、 一部の大型カジュアルウェアのお店では、お客様が手に取った商品が、そのまま乱雑に置かれたままの状態の中、次のお客様が買い物をされる、ということが日常風景としてありました。

ではパリの人が、そういう中で買い物をすることを望んでいるかというと、本当はいつ行ってもきれいな状態の中で買い物をしたいというのが事実でした。

そうであれば、ユニクロが信じているクリンリネスと商品整理が徹底されたお店を実行して、誰にとってもよい状態を作る。こういうことが大切なのだと思います。

結論としては、いついかなる時もマニュアル的、ステレオタイプ的に判断をするのではなく、今自分が立っている現場。現物。現実では、何をどう実行することがお客様にとって本当にいいことなのかを自問自答する。

このことがリーダーとしての本質的な思考方法で、それはグローバルであろうが、何であろうが一緒ということです。

一人ひとりの事情の違いへの心配り

多様性のマネジメントということで、最後に付け加えてもう一つ。

人は一人ひとり違うと言った時、個性や能力の違いもありますが、一人ひとり事情も」曝つということまで心配りができるようになってほしいと思います。

人間というのは仕事だけじゃないと思います。メンバーの中で、本当に元気がないなとか、困っているなと いう場合、わりと家庭問題とか健康問題とかそういうところに原因があることが多いのです。

だったら、リー ダーとしてそういう話も聞いてやって、例えば病気だったら病院の先生を紹介するとか、あるいはそういう時 はこうしたらいいですよ、といつたアドバイスをするとか、あるいは事情がよく分かったので、この期間中あ なたにはこういう便宜を与えますとか、メンバーの身になってやってあげられることを心配りしてあげるべき だと思います。

そういったことがあると、この会社はいい会社で、このリーダーはいいリーダーなので、もっと仕事を頑張 ろうとメンバーは思うようになるのではないでしようか。 個別の事情が発生した時に、リーダーが本当にメンバーの身になってやってくれるかどうかというのは、リ ーダーを評価するひとつの大きい要素だと思います。

そういうことがなくて、杓子定規に、会社の決まりだからといつたことを言っているようだと、リーダーと して信頼されないばかりか、会社としても信頼されなくなってきます。 当然ですが、誰でも、いつ自分がそういう弱い立場とか、支障のある身になるか分かりません。

だからそこの度量というか器量というか寛容さというか、そういつたものがない限り、人にとって本当にい い会社足り得ないと思います。 それをすることによって、本人を助けるということもありますが、チームカをもっと強くするということに もなるのです。

人の気持ちが分からない人間に経営はできません。多様性と言った時、こうした一人ひとりの 事情の違いまで心配りができるようになると、本当にこのリーダーについていきたいという思いが高まるもの と思います。

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