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第二章 国政には諫め役も同席

この章では、唐の太宗が、健全な政治の実現には君主と臣下の調和が不可欠であること、またそのために「諫め役(かんやく)」の存在が重要であると認識していた姿が描かれています。太宗の謙虚な姿勢と、それに応える忠臣たちの誠実な言動が、理想的な政治体制の一例として示されています。


君主と臣下の関係:魚と水のように

太宗は、「正しい君主でも邪な臣下を用いては政治を行えず、正しい臣下でも暴君に仕えては世は治まらない」と語ります。この言葉は、政治においていかに「上下の調和」が重要かを象徴しています。そしてその理想形は、「魚と水」のような相互依存の関係であるとしています。自らを「愚か」と表現しつつも、忠臣たちに助けられて天下泰平を実現しようとする太宗の謙虚な姿勢がうかがえます。


王珪の進言と歴史的教訓

これに応えたのが諫議大夫・王珪です。王珪は『書経』の一節を引用し、「曲がった木も墨縄(大工の定規)に従えば正され、愚かな君主も諫言に従えば聖人となれる」と述べます。さらに、古代の聖王には七人の諫臣がいたことを挙げ、彼らが命を懸けて主君を正したことを例に出します。この忠言の精神こそ、王珪が身を置く朝廷の理想であり、太宗の度量の大きさを証明するものでもありました。


制度化された「諫官」の同席

王珪の発言に感銘を受けた太宗は、その場で制度改革を行います。宰相が宮中に参内し、国政を決裁する際には、必ず諫官(左右散騎常侍など)も随行させ、政務に参与させるよう詔を発したのです。これにより、諫官は政治の中枢に直接関与できる立場となり、君主の判断に対して即座に意見を述べられる体制が整えられました。

太宗自身もまた、その忠告には「虚心坦懐」に耳を傾けることを明言し、実際にその言葉どおり、諫官の意見を積極的に受け入れていったとされています。


結語:諫言が成す安定国家

この章は、トップのリーダーがいかに忠言を求め、それを受け入れるかが国家の安定と繁栄を左右するという思想を強調しています。太宗と王珪のやりとりは、忠義と信頼に基づく健全な政治の姿を示しており、現代の組織運営やガバナンスにおいても非常に示唆に富んでいます。

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