前始末の重要性
商売をしっかり回していくためには、準備が大切です。準備というのは、計画とか、段取りです。きちんと商売が回っていくようにするためには、こうした前始末をきちんとやつておくことが欠かせません。
例えば、実際に店頭に商品を並べて、それがお客様の欲しいタイミングに、欲しいものが、欲しい量そろっていて、そして最後それがちょうどよく売り切れる。これをやるには準備が欠かせません。
例えば、ある商品の商売計画がうまくできていなくて、期間中、後追い、後追いで発注。結果的にお客様が求めるタイミングで必要とされる量を提供できなくて、期中欠品が発生したとします。
この場合、たとえその商品の売上が前年以上だったとしても、きちんと商売ができなかったと反省をしなければだめです。
準備が足りなかったと反省をして、次からは、このタイミングで発注をかけて、このタイミングでチラシにのせて……などと行動計画の具体的な修正を加えていくようにします。こうやって準備力を高めていくことは、商売人として無駄なく儲けるためには、不可欠なことです。
実際に、商売をする側に準備力が足りないと、お客様に迷惑をかけることになります。お店に行ったら、自分が買いたい色やサイズがないというのは、お客様にとっては腹立たしいことです。
例えばチラシにのっているからということでお店まで来た、あるいは駐車待ちまでして店舗に入った。そういったお客様が、いざ店に入ったら、目的のものがなかった。どのような気持ちになるかは、お客様の立場に立ってみれば分かるはずです。
作っている側、売っている側は、もしかしたら「たつたワンアイテムのこと」などと思うかもしれません。
しかし、実際に起きていることは、単にその商品の販売機会をロスしたということではないということです。
お店、ひいてはフアーストリテイリングに対するお客様の信頼をロスしたということです。
この数が多いほど、あるいはこの頻度が高いほど、我々が商売人としての信頼をどれほどなくすか、想像してみて下さい。
商売は信頼です。信頼を失った会社に未来は訪れません。
準備する力、計画する力が甘いというのは、実は大変なことだと思わないといけないのです。
成功がイメージできるまで考え抜くこと
さて、ものごとの準備をするための計画を作る時、それを機械的に書いていないでしょうか。作業としての計画作りに意味はありません。
計画を作る時に、最も大切なことは成功のイメージ化です。
「こうすればこうなるんじゃないか」「この域まできたら、たぶんこういうことになっているのではないか」「ここでこれをおさえておくことがカギになるのではないか」などということを、頭の中に絵として浮かんでくるまで試行錯誤し、「こういうふうに進んでいけばうまくいっているはずだ」という、自分が成功しているイメージをビジュアル的にしっかり持つようにするのです。
こうやって成功がイメージできるところまで考え抜くことが極めて重要なプロセスになります。これが本当の計画作りであって、そうでないものは単なる作業にすぎません。
イメージをビジュアル的にしっかり持てている状態というのは、計画が通り一遍の数値や予定の羅列ではなく、物語性を帯びたストーリーになるところまで考えるということです。
ある教育学者の話によると、スポーツ選手でも、優勝する人や一定の記録を出す人は、優勝する前や記録が出る前にそのイメージが前もって湧くそうです。
経営者も同じことで、何かをやる時は、「こうすれば自分は成功するんじゃないか」というイメージが湧くまで考える。それが出てくるまで、その方法論を必死になって考える。そして出てきた方法論を具体的な計画に落とす。
こういつたことがないまま、ただやってみても成功しないのではないかと思います。
固執するものを間違えない
さて、準備することの重要性、そして、それを単なる作業的にするのではなく、こうすればうまくいくのではないかといヽユ成果イメージが湧くまで考えることの重要性を、ここまで伝えてきました。
ここから先の話は、今まで話してきたことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、これもまた非常に重要なことですので、しっかりと理解をして下さい。
「ものごとを進めていくための計画は重要だ、しかし、計画に固執してはいけない」という話です。
計画を作り準備をすることは大切です。しかし、いつたん計画を作って現実に入ってから先は、固執すべきものは、紙に書いてある計画ではない、計画の結果として目指す「成果」だということです。
必死になって計画を作ると、計画に陶酔してしまって、計画に固執してしまいがちなのですが、それを取り違えてはいけないのです。
固執すべきものは最終成果、ただそれだけなのです。
状況が変わってその最終成果を手にしようとしたら、何ページにもわたる計画を捨てなければいけないのであれば、ためらいなく捨ててしまいなさい、ということです。
計画というのは、日常の現実、あるいは競合の状態、会社の状態が違ってきたら、全部修正していかなければいけないものなのです。
たとえ話でよくする話ですが、優秀なマーチャンダイザーと、そうでないマーチャンダイザー。この違いはどこにあると思いますか。
当初計画した通りやることに意義やプライドを感じて、最後まで計画通りにやろうとするマーチャンダイザー。これがだめなマーチャンダイザーです。
当初計画した通りにいくなんていうことは、世の中、あまりないことなのです。
世の中の現実は変化を前提にすべきなのです。その前提に立脚して、自分の判断・行動を早め早めに舵取りしないといけないのです。
優秀なマーチャンダイザーというのは、変化の状況を見極めて、「当初計画はこれだけど、本質的にはこのシーズンは最終的にこういうことを達成しなければいけないので、だったら、この商品とこの数値はこういうふうに変えないといけない」というようなことをやっていくことができるマーチャンダイザーです。
ですから、本当に優秀なマーチャンダイザーというのは、シーズンが終わってみたら、当初計画したこととシーズンを終えてやったことが違ったりする。」をつかもしれないけれど、あげている成果は、当初予定した通りの成果をあげている。そういヽつ人です。
世間で言う頭のいい優秀な人ほど、計画にプライドを持ちすぎてしまって、結果、計画と心中をしてしまいますc
我々は現実を相手に商売をやっているわけですから、役人的な賢さよりも、商売人としての賢さを大切にしないといけないのです。
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