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第一項 信頼関係を作る ―それが始まりであり、全てであるということ―

目次

経営はチームで行うもの

経営者一人がいくら有能だろうと、はりきろうと、 一人でできることには限りがあります。

例えば、毎日毎日いらっしゃるお客様に対して、 一人で全部品出しをして、接客して、商品整理をして、レジを打ってということができるでしょうか。

店頭に並ぶ数々の商品を、 一人で企画してデザインして、パターン作製をして、縫製をして、梱包して……。

そんなことができるでしょうか。

その間に、同時に世界中の工場の開拓をしてパートナー関係を結んでなどということができるでしようか。

私は優秀だ、他の人とは出来が違う、と思っている人でも、こうやって書き出してみると、 一人でできることなど、本当にたいしたことないということが分かるのではないでしょうか。

やはり経営はチームでやるものなのです。チームを作り、チームを動かす。この力を磨かない限り、経営者は何もできないのに等しいのです。

たとえ個人がイノベーターとしての能力を持っていても、儲ける能力を持っていても、やろうとしていることをチームの力を使って実現できるリーダーとしての能力を持っていない限り、たいした成果を残すことはできないのです。

利己的なリーダーはチーム作りに失敗する

では、チームを作っていくためには、どんなことが必要なのでしょうか。分かりやすくするために、リーダーとしてうまくいかない人の話をまずします。

リーダーとしてうまくいかない人は、自分だけが勝とうとする人です。リーダーというのは、チームを勝利に導く人です。

よろしいですか、非常に大切なところです。リーダーは自分だけを勝利に導く人ではないのです。

リーダーとは、日標を共有し、チームのメンバーに達成感、成長実感、あるいは自己実現といった勝利の美酒を、たっぷり味わわせてあげる、そんな気持ちでチームの輪の中に入って、チームの先頭に立って、メンバーに向き合っていくことができる人なのです。そして、そのことによって自分も一緒に達成感、成長実感、自己実現を味わえる人なのです。

シンプルな、しかしこの重要な定義を、リーダーをやる限り絶対に忘れないようにしてほしいのです。

リーダーが言うこと、行うことが利己のためだったとしたら、メンバーにすぐに見透かされます。誰も本気になってリーダーの言っていることを実現しようとは思いません。

こういう人は、メンバーを自分の目的達成の道具のように扱ってしまいます。道具なので、大事なことは任せようとせず、自分で全部成果を出そうとします。

また、指示をすれば道具であるメンバーが自分の言うことを黙って聞いて、自動的に動いてくれるものだと思い込んでしまっています。

こうやってリーダーシップをはきちがえてしまうと、メンバーの感情はしらけきってしまいます。

「成功しようが失敗しようが、どっちでもいい。私たちには何の思い入れもない。一人で頑張って下さい。責任は私たちにはないですから」

内心ではこんな気持ちになって、メンバーが働くことになります。彼らの仕事は、心が全くこもっていない「作業」になることでしょう。お客様に関心を持つこともなくなるでしよう。

これはチームではありません。チームとは単なる人の集まりではなく、リーダーとメンバー、メンバーとメンバーとが強く結束して、共有する一つの目標に向かっている状態を言うのですから。

いくら人が集まっていても、チームになっていない状態では、これもまた、たいしたことは何一つできません。逆に、成果が出るどころか、かえってコストだけがかかって、遅かれ早かれ組織がだめになってしまいます。

信頼こそ全て

ではチームを作るために、リーダーが最も大切にしなくてはいけないことは何でしょうか。初めの一歩であり、それでいて最後までこれが重要だというものです。

それは信頼です。

リーダーであるあなたが、メンバーから信頼を得られていない限り、あなたがどんなに立派なことを考えていようが、あるいはどんなに立派な経歴があろうが、メンバーは、あなたの言うことを心から受け入れて、一緒になってやっていこう、この人についていこうという気持ちにはならないのです。

叱ったとしても、「また怒っているよ」と思うだけで、その場から解放されるために、日では「分かりました」と一一一甲つかもしれませんが、本当にそれを受け入れて、直そうとはしないのではないでしょうか。

あるいは、誉めたとしても、たいしてうれしくもなく、「ご機嫌でも取ろうとしているのかな」くらいにしか感じないのではないでしょうか。やはり人間同士の信頼関係がないと、何も通じなくなってしまうのです。

信頼関係の基本のキ

では、メンバーとの間で信頼関係を作るためには、どうしたらいいのでしょうか。

リーダーが有能であること、メンバーから見て専門性に優れているということも大切なことかもしれません。

しかし、「あの人は優秀だけれどついていけない」ということは、いろいろな組織でよく起きることです。

有能であることも大切な要素の一つではあるけれど、リーダーシップというのは人間が人間に対してやることだから、もつと何か、人間的に根源的なところが重要になってくるようです。

実は、ことは単純ではなく、この章全部がそのためにあると言ってもいいくらいのことです。

しかし、その中でも、私は、人が人から信頼を得るうえで、絶対に欠かせない基本のキがあると考えます。つまり、これがなかったら、それ以外のことを何をどうやろうが、薄っぺらで、本物には見えなくなってしまうものがあると考えます。それは、あなたが言行一致で首尾一貫した人間であるかどうかということです。

言行一致

約束をしたのであれば、その約束を守る。夢を語って聞かせたならば、あなた自身がその夢を誰よりも真剣に追いかけている。

「あたり前のことを、徹底的にやっていきましょう」と言うのであれば、あなたがそれを、身をもって実践する。

「メンバー同士がもっと協力してやっていきましょう」と言うのであれば、あなた自身がメンバーに全力で向き合っている姿を示す。

「最高基準を目指す」と言うのであれば、あなた自身がそうでなければいけないし、「常識を超えよう」と言うのであれば、あなた自身がそういう姿勢で仕事にのぞみ、部下の常識を超えたアイデアを喜んで受け入れる。

そうでなければ、誰があなたのことを信じるでしようか。

あなたが言っていることと、あなたがやつていることが一致していなければ、あなたに対する信頼のシの字も生まれてこないのです。

誤解しないようにしてほしいのですが、能力的なスーパーマンになれと言っているのとは全く違います。あなた以上にアイデアが優れたメンバーはたくさんいるでしょうし、あなたができないことを容易にできてしまうメンバーもいることでしょう。それを全部上回る能力を持っていないとだめですよ、ということを言っているのではありません。

そうではなく、「あなたは、あなた自身が言ったこと、約束したこと、あるいはあなた自身が言っていることの最大の実践者ですか」ということです。

メンバーというのは、あなたの言葉を信じるのではなく、言葉を言った後の、あなたの背中に信頼性を見出すものなのです。

首尾一貫

そして、もう一つ。あなた自身の首尾一貫性。

あなたが信念にしていること、大切にしている価値観、追っかけているもの、こういったものが、ぶれない、変わらない。

これも誤解してはならないのですが、目標を達成するための具体的な方法論や取り組まなくてはいけないことは、変化に応じてどんどん変えるべきです。

しかし、最終的な目標、あるいは大切にしている信念や価値観、それはずっと一緒。そこには普遍性がある。

言行一致と首尾一貫。人間としてのこうした姿勢。これは言い換えれば、その人の「人としての誠実さ」のようなところに通じるのではないかと思います。

信頼関係を構築できなければ、チームは作れません。そのためのリーダーとしての基本のキは、こんなところにあるのだと思います。メンバーはそれをあなたの日常の行動の中に見出しているということを忘れないようにしてほしいと思います。

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