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第一項 お客様を喜ばせたいと腹の底から思う

全てを「お客様のために」徹する

商売の原点。それは、「お客様のために」です。

よく聞く言葉なので、「そうですね」と表面的に理解した程度で終わらないで下さい。そういう人に限って、読み終わって、仕事に戻った瞬間、この言葉を忘れ、自己都合の商売をしているものです。

「お客様のために」とは、そんな軽いスローガン的な美辞麗句としてあるのではなく、商売に関するありとあらゆることを、これに徹するという意味です。

徹するということは、最初から最後までということですから、商品を企画する時は「お客様の笑顔」を思い浮かべるところから始め、途中も「お客様の笑顔」のために一切妥協することをせず、そしてお店もまた、「お客様の笑顔」のために最高に買い物がしやすい売場を作るということです。

こうしたことが、それぞれの職場でもまた徹底されているかということです。

「会社は誰のためのものか」と聞かれたら、「お客様のため」というのが本質です。MBAの教科書では「株主のため」と書いてあるかもしれませんが、本末転倒です。また、社員あっての会社ですが、「社員のため」というのも本筋ではありません。

会社は、お客様にお支払いいただくお金で成り立っています。そのお客様に対して「わが社の株主を幸せにしたいので、うちの服を買って下さい」とか「わが社の社員の幸せのために、うちで服を買って下さい」とでも言うのでしょうか。明らかにおかしい話です。

お客様のために一途になること。それが成果を生み、結果として株主や社員も幸せになれるのではないかと思います。

商売は、毎日お客様から投票をいただいているようなものですから、お客様のためを思って活動していない企業にお客様が投票して下さるはずはないのです。

ファーストリテイリングは急成長した特別な会社のように言われますが、何か特別なことをしたわけではなく、この考え方を真剣に、 一途に実行してきたから、成長できたのだと思います。

お客様の笑顔のために大切な三つのこと

お客様を喜ばせようと思ったら、私は次の三つのことを大切にすべきだと考えます。

一つ目は、

「お客様をビックリさせようと思わなくてはいけない」ということです。

お客様が、「これは体験したことがない。すごい―」とか「ここまでやってくれるの―」などと、ある種感動を覚えるようなこと、これを自分の職務・職場にあてはめて、常に考えるようにするということです。

本当の顧客満足とは、お客様が欲しいと思っているものを、お客様が想像もしない形で提供するところにあります。

「なんだ、こんなものか」「これだったら他にもある」という程度だったら、何の印象もお客様には残りません。

「こうきたか、おぬしやるな」。こう思っていただいてはじめて、フアンになってもらえるのです。

そうなるためにも、次の二つ目が大事です。それは、「お客様の声は重要だが、その一枚上手をいこうとする」思考習慣を持つということです。

ご存じのように、経営理念の第一条は「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」です。

要望に応えようと思ったら、「お客様がいったいどういうことを考えているのか」「どんな心の状態にあるのか」といつたことを、徹底的に知ろうとする努力がなくてはいけません。

ですから、お客様の声に徹底的に耳を傾ける必要があります。直接店頭で聞く声、そしてデータから読み取れる声。お客様の声を聞こうとしなければ、要望に応えることはできません。

しかし、ここからが難しいのですが、とても重要なことがあります。それは、その声を鵜呑みにして、そのままの形で提供すると、とんでもないことになるということです。

つまり、声を形にしたのに、思ったほど支持されないという結果になりがちだということです。なぜこんなことが起きるのでしょうか。

それは、お客様はまだ見たことがないもの、体験したことがないものを求めているからです。お客様の本当の要望とはここにあるのです。

直接、明確に言つていただければいいのですが、実際にはまだ見たことがないもの、体験したことがないものですから、それを「これです」とズバッと具体的にお客様側が言うことは不可能です。

もし、「こういつたもの」と言って言語化あるいは具体物で示すことができたとしても、それは、そうやってお客様側が示せた時点で、世の中にすでに存在しているものですから、我々が形にしたところで、感動してくれることはなく、思ったほど支持されないのです。

お客様に教えていただけるのは、あくまでも問題点やニーズなのです。

それをプロである我々が、想像力と創造力を働かせて、「それは、こういうことではないでしょうか」とお客様の期待を、 一枚上手をいくような形で超えていく。ここに、お客様からした時の本当の付加価値が生まれるのです。

これは商品などの形になるアウトプットばかりでなく、接客などのサービスの場面でも同じことが言えると思います。記憶に残るような感動的なサービスというのは、やはりこちら側が期待していたものを、「ここまで私のためにやつてくれたのですか」などと、いい形で超えてきたものに出会った時です。

論理・分析的なアプローチは欠かせません。しかし、それと同時に、こうしたアートに近い感覚のアプローチも重要で、逆に言うと、それがないと、お客様の期待の一枚上手をいくような商品やサービスは作れないということです。

この感覚を身につけるためには、やはり、本当にいろいろなことを勉強して、いろいろな人と話をして、いろいろな物を実際に自分が見て、体験して、そして自問自答をするという日頃の研鑽が欠かせないと思います。

そして、何よりも、本当にお客様のことを最優先で考え、本当にお客様の笑顔を見たいという、お客様への愛情の気持ち、この気持ちを心から持っているということが大切だと思います。

三つ目は、

「提供者である自分たちが、本当にいいと思うもの、本当にいいお店だと思うものを作る」

ということです。

誤解しないでほしいのですが、これはお客様の要望を無視して、自分勝手に、自分たちの作りたいものを作るという話ではないということです。

ベースとなるのは、ここまで述べた二つのことです。その上で、

  • 「本当にそれは自分がお客様だとしたら何枚も買いたいと思うような服か」
  • 「本当にそれは友だちや家族など、自分の愛する人たちにも着てほしいと思うような服か」
  • 「本当にここは、自分がお客様だったら、毎日来たくなるような店か」
  • 「本当にここは、自分の子どもや家族に自慢できるような店か」

などと思えるものになっているかどうかということです。自分がそれくらい愛せるものを作るということです。

そうでないと、人間、本気で売りたい、買っていただきたい、来ていただきたいと思わないのではないでしょうか。

お客様は敏感です。売り手のそんな気持ちが伝わってこない商品や店なんて一発で見抜きます。だから絶対に売れません。

お客様には見抜かれる

ユニクロでこれまで売れた商品の共通点を探すと言えることは二つです。

一つは「これまでになかったもの」です。あったとしても、価格が高くて一般の人の手に届かなかったものです。届いていないのですから、これもなかったのと同じです。

もう一つは「売る側が信じて売っている商品」です。「これを買って下さい。絶対にいいものです」売る側がそう断言できる商品です。

まさしく、この項で話してきたことを兼ね備えたものが、やはり売れているのです。

お客様のために、お客様に本当に喜んでもらおうと思うと、この項で話をしたようなアプローチが欠かせないということです。そして、それが本物であれば必ずお客様に伝わる、通じるということです。

やはりお客様には確実に見抜かれるのです。

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