社員とはお客様の要求を無視する人種と知れ
しなびた青果 Tスーパーから、業績が上がらないからみてくれという。お伺いしていろいろ 様子を聞いた後に、店舗を巡回してみた。
社長のいる主力店は、社長の目が届くせいか、陳列品や陳列法にいろいろ問題
はあったが「マアこんなものだろう。悪い点が分かったら、あとでまとめて勧告 しよう」という程度だった。
次に行った店舗は、主力店の次にランクされている 店舗であったが、いきなり目についたのが、しなびたオレンジである。
アレッと 思いながら、青果売場を見てゆくと、カビの生えたきのこ、うれすぎたトマト、 二つ割りにしてポリで包んであるキャベツは中央が盛り上がっている。
古い証拠 だ。その外、ほとんどの青果が古い。
私は社長の怠慢を責めたところ、社長は意外だとばかりに「店長にまかせていますから」という返答である。むろん、この店を巡視したことなどない。
店長を 呼んで聞いてみたら「ああ、これは古くなっているのですよ」という返事が返っ てきたのにはビックリ仰天してしまった。
青果物は鮮度が生命だということを知らない店長も店長だが、ほとんど店を見 回らず、お客様にどんな品物を提供しているかも確認しない社長の大怠慢である。
これは「任せるという怠慢」である。お客様に対する社長の責任を全く果してい ないのである。
私は、社長をコテンコテンに叱りつけぎるを得なかったのである。品質が悪いのを承知で G社の新商品の試作品の検討会のことであった。開発担当者が、試作品を持っ て出席し、いろいろな説明をした。
その説明の中に、「このラチェットは、もう 少しいい材質のものを使わないと磨耗する恐れがありますが、そうするとコスト が高くなりますので」という。
何ということだ。初めから不良を承知で商品をつくろうというのである。私は、会議が終って社長室に帰ってから、G社長をサンザン叱りつけたのであ る。
ダイオードエ場の加熱コイル あるダイオードエ場に、あまり不良品ができるので、みてもらいたいというの でお伺いした。
工程を見ていくうちに、終り近くの工程で、ペレットにリード線をつけたもの を、細い硝子管の中に封じ込める作業をやっていた。
コイル状のヒーターの中に、 この硝子管を入れて加熱するのである。ひょいと見ると、そのヒーターの予備を入れる箱の中に、太さの違うヒーターが入っている。
「これは太さが違うが」と いうと、そこの作業者は「ええ、これは前のやつですよ」と事もなげである。今は使っていないのなら、取り除くのが当り前なのに、この有様である。
管理 者はいったい何をしているのだ。こんな無神経な管理者では、いつ間違って無神 経な作業者が古いヒーターを使うか分かったものではない。
そして不良が出た時 には「あの不良は前に使っていたヒーターを間違って取付けたものですから」とい つ に き ま つ て い る。
この工場には、いたるところに技術的・管理的な欠陥が発見されたのである。
一事が万事、すべて全くの無神経工場長なるが故だったのである。長年使ってい る社長にはそんな工場長の無神経さについて分かっていたはずである。
検査員とは何をする人なのか S社の同期化のお手伝いをした時である。最初に組みあげた同期化ラインは順 調だった。
引続き次の同期化ラインを組みながら、時どき最初の同期化ラインを 見回っていた。
ある時の見回りで、不良品が異常な程多いので、驚いて、そこにいた検査員に 聞いたところ「あっ、この不良ですか、それは第二工程の人が、今日はじめてな ので、そこで出る不良ですよ」という。
そのラインの責任者に知らせたかを聞い てみると「私は検査課長に夕方報告すればいいのです。製造部のことは私の責任 外ですから」という返答である。
私は唖然とした。この検査員が悪いというより、検査課長がこれでよくつとま ると思う。ラインの責任者とて同様である。
昼近くになるというのに、まだ一度 も様子を見に来てはいないのか、見に来ても節穴で見えないのか知らないが、あ きれかえった管理者達である。
しかし、究極には社長が悪いのである。
行方不明の未修理品 N社では、修理サービスが全く無責任であった。
ほとんどの場合に、お得意様 から「修理依頼品はどうしたか」という催促で、初めてそのお得意様から修理依 頼された品があることを知る始末だった。
仕方がないので、どんな品物だったか を聞いて、新品を無償提供して勘弁してもらっていたのである。その実情は次のようなものだった。
N社はスチール製の椅子を作っていた。家具店に納品の際、「これを修理して くれ」と店員から依頼を受けると、これを荷台に放りあげて帰ってくる。
運転手は、 この椅子を製造現場に持ちこみ、「どこそこからの修理依頼品だ、頼む」という。
製造部門の課長は「分かった。その辺に置いておけ」である。そのまま忘れてしまう。
作業に邪魔になると、あっちへ移し、こっちへ移す。そのうちに行方不明となってしまう。
なかには、組立で不足した部品があると、 この修理品の部品を取り外して間に合わせる作業者もいる。何もかも全くの野放 し状態だったのである。
お客様を無視して販売会議 電子式の腕時計が出始めたころ、S社からその正確さを期待して買い求めた。ところが、具合が悪くて動いたり止まったりである。
仕方がないので、買い求め た店に取替えに行った。応対に出た店員が「どこが悪いのでしょう」という質問である。
私は、「冗談いうな。どこが悪いか素人に分かるはずがない。止まったり動いたりだから取替 えてくれといっているのだ」というと、「お直しいたしましょう」ときた。
初めから具合の悪い時計は、いくら修理してもダメなことを知っている私は、 「直してくれといっているのではない。取替えてくれといっているのだ」と。
こ の頃になると店員の応対にいささか腹が立ってきた。
「一週間程かかりますが」という店員に、「馬鹿いえ、こちらは高い金を払って いるのだから、 一週間かかるのなら、その間、払った代金を返しておけ。
こちら はすぐ取替えてもらいたいのだ。
店になければメーカーの営業所に電話して届け てもらえ」ということで、強引にメーカーの営業所に電話させたところ、「会議 中だからダメ」という女子社員の返答であるとのことだ。
何ということだ、お客様の要求をはねつけていて何が会議だろうか。いよいよ むかっ腹が立ってきた。
店長を呼んでサンザンお説教したあげく、「どんなこと があっても今日中に家まで届けてくれ、二四時までに、まだ一二時間以上もあ る」と。
一二時頃のことだった。
私の家に品物をもってきたのは一六時頃であっ た。
こちらで強く要求しなければやらず、要求されればお客様だから仕方がないと ばかり、いやいやながらやる。なぜ最初から「メーカーから取り寄せて、今日中にお届けします」と言えない のだろうか。
コメント