■第一の目的はキレイにすることではない
私は、数多くの中小企業の経営を見てきていますが、挨拶、掃除等の社員教育をしっかりやっている会社が業績がよいかというとそんなことはありません。
環境整備をしっかりやるから業績がよくなるのではありません。
業績のよい会社に環境整備に力を入れている会社が多いのは事実ですが、業績がよくても環境整備のよくない会社はいっぱいあります。
業績は教育ではなくて、第1章でお伝えしたように事業の商品、サービスが時代の変化に対応しているかにかかっているのです。
ではなぜ環境整備に力を入れているかというと、利益を得るためではなく、組織として「よい社風をつくる」ことが目的であり、そして個人としては「気づく人間になる」ことを目的にしているからです。
整理、整頓、清掃、清潔、躾や挨拶、朝礼を徹底的にやると、間違いなく、社風がよくなるし、気配りができる人間になります。これが環境整備の目的です。
■目的は実は業績アップではない
古田土会計が高収益型の事業構造を実現したのは、挨拶、掃除、朝礼という社員教育に力を入れてきたからではありません。環境整備の目的は実は業績アップではありません。というよりもこれでは社員は協力しません。このことだけ考えたらマイナス面のほうが圧倒的に大きいのです。
古田土会計は今まで朝礼、掃除、障がい者雇用の取り組みが多くのマスコミに取り上げられ、評価されてきました。
古田土会計のことを「挨拶、掃除、朝礼の3つの文化」や障がい者雇用でご存じの方も多いかもしれませんが、実はこのこと自体、業績にはさほど関係ありません。
これまでテレビ東京の「たけしのニッポンのミカタ!」、フジテレビの「めざましテレビ」に取材していただいたほか、平成28年6月6日にはテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」の「会社の鑑」というコーナーでも紹介されました。
またここ5年間で経済産業省の「おもてなし経営企業30選」「新ダイバーシティ34選」にも選ばれています。それは本当に嬉しいことではあります。このことで知名度は広がったのは間違いないです。
ただ、次ページに記載しているように、今までいただいたさまざまな賞は、「社員全員の取り組み」が評価されてのことです。
「業績」によって受賞したのは中小企業庁の「がんばる中小企業300社」のみです。
■「社員を幸せにする」という会社本来の使命感のため
古田土会計が新ダイバーシティに応募したときに審査員に質問されたことがあります。
「障がい者を雇用すると社員がやさしくなるのではないですか」と。
「違います。我が社はよい社風で一人ひとりが優しいから、障がい者の方が安心して働けるのです」と著者は答えました。
古田土会計には、重度の知的障がい者1人、精神障がい者3人、身体障がい者1名の5名の障がい者が働いてくれています。
障がい者の人たちが同じフロアで机を並べて仕事をしている会社はめずらしいということで、県庁やハローワークの方々が見学に来られています。
平成28年11月に東京都より障がい者雇用のモデル企業の依頼を受け、今後、ますます多くの方々がご来社になると思われます。
また障がい者の方々の仕事は、社員の創意と工夫により付加価値の上がる仕事を創ってくれました。障がい者雇用でいただける助成金は一切もらっていません。
そんな必要はまったくなく、彼らは、古田土会計が提供するサービスの価値の向上に貢献してくれています。
それはよい社風ができあがっているからです。それは環境整備によって醸成された社内文化です。私はこのことを誇りに思っています。
繰り返しになりますが、業績は社長の戦略と全社員の戦術で決まります。
古田土会計の場合、環境整備に力を入れるのは「社員を幸せにする」という会社本来の使命感のためなのです。
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