世界「フロー」という言葉には、「流れに乗る」という意味がある。フロー体験は、チャレンジングな目標の達成プロセスで起きる「一瞬の体験」である。時間がたてば喜びは薄れ、モチベーションは元の状態に戻ってしまう。理想的には、こうした一瞬の体験を数多く、連続的に持つことだ。つまり、フローの持続が必要なのである。フローが持続された状態で仕事に取り組むと、偶然が偶然を呼ぶような思わぬ発見やひらめきが次々と現れて、成功の道筋が見えてくるという。それは、「成功の流れに乗って仕事をする」という状況の出現である。スポーツ選手が「ゾーンに入った」と言うのはおそらくフロー体験を指しているのであろう、と『モチベーション3・0』(前掲書)は指摘する。このようなフロー体験は、理性や論理では説明しにくい世界である。そのために、フローの存在そのものを疑う人がいるかもしれない。あるいは、スポーツの世界の出来事で、ビジネスに適用するには無理がある、と考える人もいるだろう。しかし、筆者の見るところ、一般の仕事現場でもフロー体験に近い状態は間違いなく起きている。たとえば、営業マンが新製品の販売に「はまっている」とか、製造現場の人たちが不良率削減の「虜になった」という話を筆者はよく耳にする。実際に会ってみると、見るからに生き生きしていて楽しそうである。彼らはどんな仕事でも、徹底的に取り組めば、フロー状態は必ず訪れると信じているようだ。一度でもフロー状態を経験すれば、フローがもたらす楽しさや面白さを求めて、次なるフローを取りに行くのだろう。そんな予感がする人たちである。
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