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欲に溺れる者、四つの災いに沈む


■ 引用原文(日本語訳)

放逸で他人の妻に近づく者は、四つの事がらに遭遇する。
すなわち、禍をまねき、臥して楽しからず、第三に非難を受け、第四に地獄に堕ちる。

――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第14節


■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)

  1. 放逸にして他人の妻(配偶者)に手を出す者は、
     自制心を失い、欲望にまかせて不倫・姦通の行為に及ぶ者は、
  2. 四つの災いに見舞われる。
     その結果、次の四つの重大な苦しみに遭う。
  3. 第一に、災難を招く。
     社会的信用の喪失、関係の破綻、暴力的報復など、さまざまな不幸を呼び込む。
  4. 第二に、眠れぬ夜を過ごす。
     罪悪感や不安、恐れにより心が乱れ、平穏な日常を失う。
  5. 第三に、世間の非難を受ける。
     恥や評判の失墜、他者からの信頼喪失という痛みを味わう。
  6. 第四に、死後に地獄に堕ちる。
     仏教的には、重い悪業として来世においても大きな苦を受けることになる。

■ 用語解説

用語解説
放逸(パーマーダ)自制を欠き、欲望や快楽に身を任せること。仏教における重大な過失の源。
他人の妻(パラダーラー)他者の配偶者。ここでは「禁を侵す行為」の象徴でもある。
禍(アパヤ)社会的・心理的な災難。失職・破産・家庭崩壊などを含む。
非難(ガルハ)世間や身内、仲間からの批判・侮蔑・軽蔑。
地獄(ナラカ)六道の中で最も苦しい境涯。悪行により死後に堕ちるとされる場所。ここでは象徴的に「精神的破滅」をも含む。

■ 全体の現代語訳(まとめ)

自制を失い、他者の伴侶に手を出す者は、四つの破滅に直面する。
すなわち、災いを招き、心が乱れ、非難され、ついには取り返しのつかない苦しみを背負う。
これは単なる戒律ではなく、自己崩壊と社会的死を警告する、生き方への重大な警鐘である。


■ 解釈と現代的意義

この節は、**「禁を破ることの代償」**を極めて具体的かつ厳粛に示しています。
倫理や信頼を踏みにじる行為は、単に当人同士の問題ではなく、自身の人生、精神、そして周囲すべてに影響を及ぼす深刻な結果をもたらします。
目先の快楽を優先して本質を見失うことの愚かさを、仏教は「四つの禍」として明確に言語化しています。


■ ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
倫理的行動企業内外での不正行為や不適切な関係は、信頼・キャリア・組織全体を破壊するリスクを孕む。
短期的利益への誘惑一時の快楽や成功を優先してコンプライアンスや道義を逸すれば、長期的には必ず代償が訪れる。
信頼の回復困難性一度失った信用や評判は、努力しても簡単には取り戻せない。自戒と慎重さが求められる。
メンタル・精神的安定不適切な行動や背徳的関係は、必ず「眠れぬ夜」をもたらし、心身の不調へつながる。

■ 心得まとめ

「一時の欲は、四つの破滅を招く。自制は最大の防御である。」

どれほど心が動いたとしても、
自分を律する力こそが、信頼と安寧を守る唯一の道である。
快楽に溺れる者は、やがて苦しみに呑み込まれ、
心ある者は、欲を断ち、徳を保って人生を導いていく。
それが「智慧ある生」の第一歩である。


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